目的と目標とは
私の初めての就職先は美容室だった。
正式にいうと学生の時からアシスタントとして現場には入っていたし、なんなら正社員として働いたのはこれが最初で最期である。
さらに言えば正社員ほどの手当ては受けていなかったので、条件だけいうとアルバイトよりも良くなかったが、一応社員として働いたと認識している。
個人美容室でアシスタント2人(本当は3人だったが私が正式に働く前にやめた)、スタイリスト2人、レセプション1人の5人で回していた店であった。
美容室には良くあることだが、就業環境はお世辞にも良いものとは言えなかったと思うが、私はこの一年が私の基盤を作ってくれた大切な一年で、
オーナーをはじめ先輩方にはとても感謝している。
その時一人のスタイリストさんに教えてもらったことがある。
「目標とは目的を達成するためにある。だから目的がブレなければ目標を変えていいし、目的が達成できるのならば目標が達成できなくても良い」
この時例にあげたのはスケート選手の浅田真央選手のことだった。彼女は金メダルは取れなかったが、彼女の目的は世界に感動を与えること。
だから目標の金メダルは取れなくとも、世間に感動を十分に与えたから彼女は目的を達成していると話してくれた。
多分このスタイリストさんもテレビか何かで得た情報だったと思うが、
私はこの話を今でも、生涯忘れないだろう。
話しは変わって、本業の最終現場はアーティストさんのヘアメイクだった。
さらにナチュラルメイクではなく特殊メイク寄りの内容で、昔舞台メイクを勉強していたこともあり、最後に特殊メイクをさせてもらえてとても楽しかった。
またクライアントは私がまだ仕事を始めて間もない頃から、現場を教えてくださっていた方だった。もう8年近くのお付き合いになる。
私の一回り以上違うくらい大人な方なのに、
私の話をいつも親身に聞いてくださって、仕事だけでなくプライベートのことも相談に乗ってくださっていた方だった。
本当にお世話になった方で、最後の仕事がこのクライアント様との仕事でとても嬉しかった。移動中にも話したが終わりにメールをくれた。
そこにはこう書いてあった。
「まずは旅行を楽しんでほしい。そして人生を思いっきり楽しんで欲しい。帰国後の予定も決まっているとさっき教えてくれたけど、その予定が変わるくらいの経験をしてほしい。」
暖かいメッセージに涙が出た。今まで心のどこかで、美容をやめてはいけない、続けなければいけないという考えがどこかにあって、
もちろん辞めるつもりはなかったので帰国後は美容室就職の予定だったし、なんなら今でも辞めるつもりはない(先延ばしにするだけの予定でいる)
しかしなぜか勝手に「続けなければ」と思っていたし、美容以外の可能性を自ら封じなければと思っていたし、
更には今回のこの選択は間違えだったのではないかとどこかで思っていたことにもその時気がついた。
自分で自分の気持ちを見て見ぬ振りをしていたのだ。
もちろん苦に感じていたわけでは本当にないし、おそらく私は美容の仕事を続けると思う。そのくらいこの仕事が好きなのだ。
それに他のクライアント様からも、また戻ってきたら連絡して欲しいとお声をかけてくださったり、わざわざ直接連絡を下さった方もいて本当に本当に嬉しかったし、すごく感謝もした。
しかし上記に書いたような感情があったことも事実なのである。彼は私の可能性は無限だと、自らストッパーをかけないように教えてくれた。
この一言でどれだけの肩の荷が下りたか。本当に伝えきれないくらいの感謝の気持ちでいっぱいだ。
この恩は返しきれない、返せないほどだけどその分私はたくさん経験したいし、悩んでいる人がもしいたとしたら伝えたい。
この時私の人生の目的がしっかり決まった気がした。
「最後に楽しかったと言って笑って死ぬこと」
その為の目標は
「人生を楽しむこと、自分を愛して大切にすること、感謝の気持ちを忘れないこと」
最初に目的と目標の話しを先輩から聞いた時は仕事の目的と考えてわからないなーと思っていたし、正直20代はそんなことはあまり考えず無我夢中で走ってきた。
とはいえ、明日死んでも後悔の無いように選択しようとだけは思ってきた。
おそらく粗方目的は今でも変わっていないが、選択の幅が広がり目標が変わったのかもしれない。
そして今まで自由に、なるべく悔いのないように選択できたのは紛れもなく周囲のおかげだ。
親、親戚、先輩、クライアントの方々も。私は本当にいい環境に恵まれ、そして素敵な大人に囲まれて生きてきたと思う。
今回本業休職の決断を下した時に本当にそのことを強く実感した。
また今回の選択を理解してくれたことにも感謝は尽きない。
この先正直どうなるか自分にもわからない。しかし目的は見失わずにその時の自分の最善を選択していきたい。後悔の無いように。
そしてどの選択にも目的と目標を立てて進めていきたいものだ。
NOZOMI
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