12月27日

おととい。まりちゃんの家へ。

まりちゃんがピタパンを焼いておいてくれるというので、それぞれ中に挟むものを用意しようということになり、まりちゃんはファラフェル(大好物、わたしの)を、わたしはじゃがいもとレンズ豆をクミンで炒めたのといつもの甘いかぼちゃのマッシュ(レーズンとスパイス)、それからデザートに卵のプリンを。

オーブンがあればケーキでも焼いていくのになぁクリスマスだし、と思いながらオーブンがなくても作れるデザート、そしてかや(2歳のまりちゃんの娘)も食べられるもの、と思ってプリンにした。プリン、本当に久しぶりに作ったけど、なんて害のない優しいおやつなんだろう(卵と豆乳と甜菜糖だけ)と思った。兵庫でカフェをやっているななみちゃんという知り合いがいつかインスタに載せていたレシピをずっと試してみたいと思っいたので参考にしながら。昔ながらのちょっと固めのプリン、優しい味だった。

この間富山のいるふで買ってきた佐野洋子さんの絵本を家に飾っていたのだけど、かやのクリスマスプレゼントに持っていった。まりちゃんは「絵本が一番嬉しい」と言ってくれた。早速一緒に読んだ。

道すがらトマトと葡萄を買っていったのだけど、それらはかやの二大好物らしく、ピタパンそっちのけでそれらばかりを食べていた。かやに会うのは1年半ぶりくらいだっただろうか、すっかり言葉が増えていた。言葉が明瞭で話すのがとても上手だった。相変わらず髪は猫っ毛のくるくるで八の字眉でとても可愛かった。ぐずったりすることもなく始終ご機嫌でいい子だった。

まりちゃんが自分で焙煎したコーヒー(まりちゃんは不定期で間借りのコーヒー屋さんをしている)を淹れてくれて、食後にプリンと一緒に。とてもとてもおいしかった。ゆっくり色んな話をした。

今年の夏前に引っ越しをしたまりちゃんの新居はとても良いところで、古いマンションの外壁にはアイビーの蔦が這っていて、部屋が沢山あり広々としていて、優しい日がさしていて、ベランダはちょっとしたテラスと呼べるくらい幅がありそして日当たりが良く、キッチンの棚にはレトロな可愛い扉が付いていた。なんてまりちゃんにぴったりの家だろうと思った。まりちゃんの暮らしにわたしはずっと憧れの気持ちを抱いている。お鍋やスパイスや、レシピ本、古い電気オーブン。まりちゃんのキッチン。

少し陽が傾き西陽が差し始めて、リネンのカーテン越しに部屋に入ってくる光がとても綺麗でわたしがそれを口にすると「そうやな、それがあるから家に帰ってきてもあんまり寂しいと思わんのかも」とまりちゃんは言った。

まりちゃんの家の近くにはバスが通っているけれど本数が少ないしぐるっと回らなくてはいけないので、「散歩せえへん?」とまりちゃんが提案してくれ、かやをベビーカーに乗せ、少し離れた駅まで小一時間かけて歩いた。国立駅を越えて、大学通りをずっとまっすぐ。紅葉らしい紅葉を今年初めてみたような気がした。

まりちゃんがわたしにくれる特別で不思議な安心感について、それはなにかと言えば、わたしが縛られたくないと望みながらもなかなか断ち切れないでいるあれこれの面倒な価値観とはまったく切り離された世界でまりちゃんは生きている、だからだ、と帰りひとり乗り込んだ電車の中で思った。まりちゃんはとても弱くてとても強い。とても健やか。とても“正しい”在り方をしていると思う。だからまりちゃんが好きだ。

かやの写真をたくさん撮り、早速フィルムを現像に出した。かやの写真集を作りたいと思うほどかやは本当に可愛い。うまく映っているといいのだけど。

そうしてきのうは仕事終わりに友人宅へ。地元の親友。ワインやらおつまみやらをテーブルにすっかりセットして待っていてくれた。彼女はよく喋るので大抵いつもわたしは聞き役なのだけど、きのうはわたしの母の話などを聞いてもらい、わたしはまたぼろぼろと泣き、彼女も泣き、そうして夜遅くに他で飲んでいたもう一人の親友が電車を乗り継ぎはるばるやってきて、さらに飲み、話し、そのうちパジャマに着替えて3人並んで化粧を落として少し眠って、朝になって帰ってきたのだった。

母と話すべきだと彼女に強く言われた。それしか解決方法はないと。わたしもそんな気がしてはいるし、話せたらいいなぁとは思うけれど。どうかな。

わたしは自分の苦しいとか悲しいとか辛いとかをほとんどひとに話すことなく生きてきて、長年の親友の彼女に対してさえそうだった。だからきのうは話してくれて嬉しいと言ってくれて、わたしがだけどそうして話すことが出来たのはきっとここでこうして自分についてなるべくありのまま書く訓練をしているからだろうと思った。だから良かったなぁそれだけでも、と思ったのだった。

島の友達が送ってくれたお菓子は瞬く間に減っていて、だけど驚くべきことにシュトーレンは一気に食べることなく、少しずつ食べることに成功している。意外と大きいものの方が少しずつ食べられるのかも知れない。だとしたら大きな発見。

そうしておとといもきのうも、とても元気をもらったのに身体から抜けない正体不明の徒労感脱力感。とにかくあと何日か生きれば今年が終わるのだ、となにかに縋るような気持ちで思うけれど、年が明けたからといって別に何が変わるわけでもなく、しかも年明けはけっこうバタバタしそうでゆっくり出来そうもなく、なんかそんな感じなのだった。

あさってダイニングテーブルが届く。椅子がないままにテーブルだけが届く。でもそれでも嬉しい。椅子はまぁぼちぼち探す。揃っていない、バラバラの椅子を何脚か並べたい。2つは背もたれが付いていてひとつはスツールがいい。だけどそれよりオーブンを早く買いたい。昔ながらのレトロな電気オーブンに心惹かれていて中古で探すのもいいなぁと思ったりもしているけれど、来年はイベントでの出店とか通販とかわからないけれど何らかの形でまたお菓子屋さんもやりたいなぁなどと考えており、がんがん駆使しそして今後長く使うことを考えれば新しいちょっといいやつを買うべきなのではうんぬんぐるぐる

早く心を決めてスコーンをがんがん焼きたい。

今朝家に帰って何日かぶりにふとポストを覗いてみればさよこさんからカードが届いていた。消印は23日だったからちゃんとクリスマスに届くように送ってくれたのに。まりちゃんが焙煎したコーヒーを淹れて、島の友達のスコーン、あとリンゴとヨーグルトを朝食にして、さよこさんからの手紙を読んだ。返事をゆっくり書きたいけれどなんだかそのエネルギーさえ湧いてこないのだった。

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