自走性と個の往還、一考察
2023年4月9日(日)、4月13日(木)
プロジェクトなづき 稽古
今井歴矢さん演じる「錦」の演出案として新たな方法を採用しました。ジャズダンスの踊り手としての身体性と今井さんの持つ少年性、高揚感あふれるエキセントリックさに注目した演出です。いい塩梅で溶け合えば、とても魅力的なキャラクターとなるに違いありません。「秀人」と錦の場面において今井さんの身体性と 役柄が効果的に発揮され、秀人の台詞が自然と聞こえるようになりました。
次に川津演じる「美咲」と田口和さん扮する「信之」の場面を抜き出して稽古しました。予てよりこのシーンで見極めたい点がありました。 伸枝さんが川津の代役を買って出てくれました。伸枝さん演じる美咲と田口さんのやり取りを見ていてはっきりとわかったことがありました。どんなに魅力的な台詞であっても、作品にとって余分と判断すれば、果敢にとり去るという作業が大変重要です。詩歌、小説、また音楽の中ではじめに浮かんできた一行、旋律が作品を生むきっかけになっていても作品としてまとめる時には、当初重要であっても削らなければ、作品が成長しない場合もあるのです。またいろいろ試してみて、語らないという点も重要だと感じました。伸枝さんとバトンタッチして信之と対峙してみて、言葉を用いないことで直接的に感じせしめるもののいかに多くあることか。重要な視点です。この場面のラストで美咲がとる行動も、おそらく作品を印象づけるシーンとなるでしょう。
今回の公演では、演出助手として常に有効な提案、助言をしてくださる田口さんをはじめ、みんなに助けられています。自らの公演を控えて本日欠席にも関わらず、ゴーレム佐藤さんが稽古前に訪れて、野外芝居に長く携わってきた知見から今回の吾野宿公演をいかにお客様に楽しんでいただくか、いかに公演の世界へ引きずり込んでいくのか、それを実現する仕掛けについて具体的なアドバイスをくださいました。これによって舞台作品であると同時にテーマパーク、見世物小屋のような様相もでるかと思います。
劇中音楽担当の今井さんは第三章『むこう側』の音楽に対し川津に意見を求めてくれました。川津は幼い頃から音楽ではある程度トレーニングを重ねてきたこともあって、ある種の音楽のイメージ、キーワードを設定すると何パターンか頭の中で仮想的に音を鳴らすことができたりします。なづき創立期からのメンバーである今井さんの面白いところが音楽と作品等で同期してアウトプットできればいいなと常々思っていました。任せますとお伝えしていましたが、川津に意見を求めてくれたのは嬉しかったですし、 伝えた案について今井さんが乗り気であったことも大変喜ばしいことでした。強力なマンパワーに囲まれていることを再認識する日々です。
4月13日(木)
前回の稽古をお休みした方もいらしたので、作・演出上変更となった部分の伝達からスタート。その後丁寧に通し読みを行いました。一章から三章までの通し稽古がなかなかできない中で新たな演出案を交えた通し読みは重要な意味をもちます。
今回は第二章『件』の冒頭を抜き稽古しました。舞台の作り方、設定が大幅に変わることもあり、メンバー間で何度も吾野宿の間取りを確認しながら立ち位置を検討。「罐助」と「錦」のシーンは錦扮する今井さんの役どころの奥行きが増したので山田さんの役どころも相乗効果でよりチャーミングになってきました。川津演じる美咲の所作について田口さんからダメ出しがはいりました。即興で作った動きやセリフに対して、曰く、ドジ過ぎる、女将らしくないと。 即興では自分の気質が反映します。深刻さを演じるのも好きですが、注意していないとふわふわとした生き物のような両極端にも振れてしまいます。反省しました。今回田口さんがシーンに適したトーンを提案してくれるのでとても勉強になります。
稽古後「座敷童」の新たなシーンを加えたいとの申し出もありました。座敷童という役どころを生かしきれていないなと思っていたので、すぐさま場面の素案を提示できました。伸枝さんも隣で気に入ってくれそうな様子です。次回のその稽古が楽しみです。今回の稽古で上野憲治さん扮する「秀人」との場面もどのような方向で深めていったらよいのか気づきを得たので、次回の稽古ではいろいろと発展させていきたいです。