投球動作で肩が痛い
野球少年なお客さん(=Pくん)が半年ぶりに来られました。少年とはいえ子ども時代から施術させてもらっているお客さんなので施術歴はそこそこ長く、ひと通りの整体は済んでいます。なので既にいったん〈卒業〉には至っていて、現在は〈困ったことがあったら来てね〉のペースで来てもらっています。
〈困ったこと〉がなければ来る必要はないわけですから、半年ぶりなのは構いません。構うのは、「来週試合なんですがボールを投げると肩が痛いです、何とかして」という来方です。来週、とは言いながら1週間先ではなく正味5日。確認すると、来院できるのはその日を含めてあと1日。しかもその日は試合の前日(…)。それで肩の痛みを、って……大丈夫かいな。
実は半年前の来院も主訴は肩の痛みで、そのときは、その数か月前にした転倒が原因だった可能性が高い。その証拠に、施術後に症状はなくなっています。ところが今回もまた肩の痛みが出た、ということは前の施術が不十分だったということか……? 考えながらPくんの話を聞いていると、今度の痛み方は少し、前回のと異なる印象を受けます。前回は投げた後に痛くなり、今回は投げている最中が痛いというのです。……う—む、前の原因とは別の原因による痛み、な感じがするな。
新しいケガの報告がPくんから無いので、記録をさかのぼりながらこれまでにした施術の〈取り残し〉の可能性を考えていると、数年前にした左手首の捻挫(?)が気になりました。左手首の捻挫で右肩痛、うん、ありそうだ。納得しながら「私は左手首が気になるかなあ」と言いかけると、あ、そういえばとPくんが去年の夏に左手首にデッドボールを受けたことを思い出してくれました。あ、じゃあそれで確定ですね、たぶん左手首ですわ。筋力検査をするとそちらの結果もそのとおりだったので、左手首に焦点を絞って施術を始めました。
初めてのお客さんではこうは行きませんが、ひと通り施術の済んだお客さんであれば、コンパクトな施術を組み立てるのはそれほど難しくありません。カギになるのはやっぱり〈問診〉です。問診で状況がつかめれば、作業はまず迷いません。あとは〈どこまで施術すれば十分な結果が出せるか〉が問題ですが、これはトータルの施術時間とお試し動作のくりかえしがモノを言います。
身体はとっても賢いので、どれだけ誠心誠意施術しようとも処置が見当外れなら、改善はしません。だから少ない時間で結果を出すためには、そもそも施術場所を間違えないことが不可欠です。うろうろ迷っている暇はない。というわけで、えいっと集中して1時間が終了。次回までに必ず必ずお試し動作をしてきてね! しつこいほど念を押して、その日は終了。
試合前日、2回目の施術に来られたのでお試し動作の結果を訊くと、「まだ痛い。同じ感じで痛かった」とPくん。ここで改めて迷うのは、前回の続きをするか・違う道を探すか、です。前回の手応えと筋力検査の結果から、Pくんには前回の続きをすることにしました。続きといっても左手首そのままではなく、腕から肩の付け根、背中にまで及びました。範囲が広がっているのはそこそこ良い感触です。
1時間施術して、たぶんこれで良いだろう、区切りをつけて終わりにしました。「試合に出て痛くなったらまた近い内にもう一度来て! 一応しっかり考えて左手首に施術したけれど、間違えてたらごめん! 痛かったらごめん!」あらかじめ謝りつつお願いして別れましたが、1週間近く経っても連絡がありませんので、まあきっと、しのげたのでしょう。やれやれ。
ところで施術中にPくんから、「ショートアームについてどう思うか?」と訊かれました。ショートアームって何?と、そこから知らない私が訊くと、いま注目されている投げ方だという。「えー、私は山口高志さん・佐々木朗希さんの、あの投げ方が良いと思うけどなー」ショートアームを知りもせんのにしつこくそんなことを言っていると「一度、YouTubeで見てみてください」、言われました。
で、見てみました。が、肝心のPくんが来られる気配がないので、ここに感想を書いておきます。
Pくんの指示通り、YouTubeのショートアーム解説講座みたいなのをいくつか見てみましたが、最初に立つ向きを少し前向きに変えたほうが投げやすいのでないかなあと思いました。ゆったり投げるロングアームと違って上半身の動きが小さいですから、肩の開きが小さくなった分、下半身の回転角度も減らしたほうが上下で合うんでないかな、と。右手で投げるのであれば、キャッチャーの方角を真北とすると、真東向いて立つのでなく、東北東とか北東気味を向いて投球動作を始めてみる、とか。
でもそうすると手投げになるとか、バッターから手の動きが見られてダメとかそんな事情があるのでしょうか。根本的に野球をわかっていませんので、見当外れな感想だったらごめんなさい。
……とはいえ、まあ、でも、整体屋的には何投げをするかより、自分が投げやすいように・無理せず・ケガせず投げるのがいちばん良いと思います。ほんと、ケガが無いのがいちばんですよ。ケガすると確実に、動きの自由度が減りますから。はあ。