足首の痛みと靭帯の不具合
山道を歩いてから足首が痛い、裸足で室内を歩いているときは痛くないけれど靴を履いて外を歩くと痛い、と、お客さん(=Pさん)が来られました。以前から来てくださっているお客さんで、そろそろ整体卒業かしら?なかたです。
靴の有る・無し、室内・室外を歩行したときで痛みが変わる、というのはよくある話です。理由としては、靴の重さが足首の負担になるから痛い、室外だと自然に歩幅が大きくなるから痛い、など、いろいろ考えられます。
Pさんの場合は、山道で具体的に足をくじいたとか何かを踏んだといった心当たりはないそうなので、アカラサマな〈ケガ〉の可能性は考えなくて良いでしょう。
で、まずは1回目の施術。腰から背中といった上半身のアンバランスを改善したところで時間切れ。様子を見て、ダメそうなら早めにもう一度来てください、とお願いしました。
で、その数日後に再来院されました。施術直後の室内では良さそうだったけど、靴を履いて外に出るとやっぱりダメでした、とのことでした。じゃやっぱり靭帯への施術も必要だったのだな、と納得して追加の作業にかかりました。お話を聞く限り、やはり靭帯そのものに傷がある事態は考えにくいので、不具合というか誤作動を起こしている靭帯を調整する作業をしていきます。
〈靭帯と筋肉は協力して働くもの〉と私は理解しています。骨と骨の良い位置を支えておくのは筋肉の仕事ですが、どうかするとその支えが弛くなる。弛くなって、危険なレベルまで骨同士の間隔が広がりかけると、すかさず靭帯が信号を出して筋肉の収縮を促す。そうして関節の位置は保たれる、というわけです。
このとき靭帯は、靭帯自身の伸ばされ刺激に反応しています。
安全域でたるんでいた靭帯がパッと危険域まで引き伸ばされて、びっくりして慌てて信号を出す、というのは分かりやすい。難しいのは、安全域のような・危険域のような、微妙な伸ばされ具合が持続した場合です。信号を出す適切なタイミングを逃す上に、靭帯自身の、伸びてんだか・たるんでんだかの現状把握もおかしくなって、ちょっと独特な靱帯系の痛みが生じてくる。おそらくはこれがPさんの足首に起こっていることで、そうであれば、靭帯の長さ感覚をリセットする必要があります。
施術の作業自体は、単純です。ただ、いろいろ手数が掛かります。
まずは、靭帯に負担をかけた元凶である筋肉のアンバランスを調整して→それから靭帯をリセットして→その上で全体の出来具合を確認して→施術のし残しを探す――といった段取りを踏むことになります。作業自体は軽微なのに、ちゃんと立て直すのに2~3回以上の来院が必要になるという厄介な施術です。
Pさんにそんな説明をしていると、「この不具合は病院でも見つかるものですか?」と訊かれました。うーむ……どうなんでしょう? 靭帯の神経ですからね……。レントゲンにはもちろん写りませんし、エコーとかMRIなら分かるのかなあ……??
私がむかし勉強した、些かマニアックというか専門度の高いカイロプラクティックの教科書には載っていました。でも、お医者さんのほうの事情は私には分かりません。
まあでも、もし仮に対処法がないのであれば、「調べた限り、骨折とかはないです、とりあえず湿布でも貼っておいて様子を見ましょう」で帰らせてくれればありがたい、と思います。おっかないのは、いろいろ検査をするうちに〈今回の症状とは全然関係のない何かしらの異変・病変〉が見つかって、たぶんこれだ、手術しかない!みたいな事態になることで、ときどきお客さんから「怖くなって逃げてきました」と聞きます。そんなの、私だって怖いです。でもその流れで手術に踏み切った人のこともときどき聞くので、それもそれで怖いです……。