親指の赤ほくろ〈上〉 湿潤療法編
※※後半、いささかビロウな話になります。お食事中のかたはご注意ください。※※
左手親指に赤いほくろのような腫物ができました。ネットで調べてみると、老人性血管腫、というらしい。老人性。いよいよそんなものができるお年頃になったのね、私も。しみじみ思いつつも、できた場所が微妙にジャマなところなので、つい出来心で、えいッとむしってしまいました。
当然のように出血して、しかも皮膚が厚くて・よく動くところなので傷がふさがる気配がない。さぁて、困ったな……結構ホントに困りました。
とりあえず廉価版のキズパワーパッド「クイックパッド」を貼ってみましたが、なんせ親指の腹側な上に腫物の上でもあるので摩擦が多く、材質的に頑丈さの低いパッドはすぐに裂けてきます。それでもしばらくは貼って数時間で貼りかえる、みたいなことを続けていましたが、やたらに不経済ですし、貼りたてのパッドは粘着力が強く、べりべり剥がすたびに修復中の組織もごっそりむしってしまうようで、治してんだか・傷めてんだか、少々怖い。
というわけでむかし聞きかじった、〈元祖 湿潤療法〉的な仕方に挑戦しました。
手順は以下の通り。
①傷が隠れるくらいのサランラップを用意して、ワセリンを片面に塗る。
②ガーゼを適当な大きさにカットして、4つ折りにする。
③スギ薬局で見つけた「やわらか防水フィルム」なる5cm幅のシールを適当な長さに切って、粘着面のちょうど真ん中あたりに②のガーゼを貼る。
④①のワセリン付きラップを、ワセリンが傷を覆うように当て、③の「やわらか防水フィルム」をそのラップを覆うように貼り付ける。ガーゼに対して多少ラップが大きすぎても問題なし。「やわらか防水フィルム」がラップごと覆っていれば良しとする。
↑こんな感じでしてみました。
これがなかなか具合が良いのです。まめまめ貼り替えても組織は剥がれないし、傷が洗えて好都合。ラップの完全密閉により酸欠になった周囲の皮膚をうにうに揉むこともできますし、私自身が整体屋なのでそのまま施術することも可能。そしてそのあと、膿んでいないかの確認をしっかりする、と。
膿んでいないかの確認は、目視と匂いでチェックしていました。目視は、黄色か白の固まりが増殖していないかを、まじまじ見る。匂いは、血液特有のムッとする生臭さに軽くオエッとなりながらも、それ以外の異臭がしないかを確認していました。
貼り替えるたびに、嗅いで・オエッ、を繰り返していると、うーむ、この感じは何だか脳か神経だかにダイレクトに来る感じがあるなあ……うんざりしつつ、連想が働きました。
少し昔の推理小説にちょいちょい登場する〈気付け薬〉はアンモニアで、これは脳に直接作用するから意識回復に効くのだ、みたいな話を聞いた記憶があります。
また、籠城している武士は、敵に向かって肥えというか要はうんこを投げつけることがあったそうで、これは、その匂いが戦闘意欲をそぐから、と聞いた記憶があります。なんか交感神経を抑制する作用でもあるのでしょうか??
だとすると、〈気付け薬〉に倣って、〈便臭スプレー〉を商品化すれば効果的なアンガーマネジメントになるんじゃないかしら、と思いつきました。まんまあの臭い、となるとちょっとあれかもしれませんが、表面的な香りはラベンダーだけど成分は便、とか、そんなのでも効果があるのなら人前で使っても害は少なそうだし、鼻にちょっとシュッとするだけで怒りが収まるなら簡単です。便臭なだけで便じゃないし、ラベンダーの香りなら便成分なだけで便臭ですらない。誰が誰に使うか、は考える余地がありそうですが(怒られている人が怒っている人に使ったら余計にこじれそう、とか)、つい爆発してしまう自分の怒りをなだめるため、なら問題なくアリでしょう。
私が知らないだけで、もう商品化されていたりするのでしょうか? 消臭力の横とかに並んでいるのを見つけたら、ちょっとニヤッとしそうです。