人気のファラフェルサンドの店で、「個性的」とは何かを考える
「渋谷・神泉にオフィスがあるなら、絶対食べに行くべきだよ」
そう言って勧められたお店が、オフィスから徒歩5分くらいの場所にありました。昼前後に予定が詰まっていなかった暑い日、ふらっと一人で行ってみました。
そこはここ数年ブームになっているファラフェル(潰したひよこ豆などに香辛料を混ぜて揚げたイスラエルの料理)サンドイッチのお店。大通りに面しているお店はガラス張りで、広くない店内には若い男性グループ、落ち着いた大人の男女の姿が。
ドアを開けると、ヒゲの若い男性が一人カウンターにいて、「ここで食べますか?じゃあ座っててください。順番にオーダー聞くので」と一言。本を読んでいて私は気になりませんでしたが、オーダーするのに15分ほど待ったかもしれません。
ぼろぼろになったメニューには、セットと単品ファラフェルサンドがあります。どう違うのか聞くと「セットはスープがつくけど、熱いスープなんです。今日は暑いから、そんなにおすすめしません」と拍子抜けする返事。
再び待って、文字どおり手から手へと渡されたファラフェルサンドは、まるで花束のように生野菜やファラフェル、揚げ野菜がくるまれています。
美味しかったのはもちろんですが、くすっと笑ってしまう、心に残るお店だったなあと食べ終えて思いました。それは少し前にロブスターマガジンで『The Age of Average』(同質化する時代)という本についてのコラムを読んでいたから。増えつつあるおしゃれなカフェは内装もスマートでサービスも心地良いけれど、どこか既視感がある。
「個性的でありなさい」と言われることがあります。ファラフェルサンドのお店は、他と差別化しようと思ったり、個性的であることを狙ったりしたわけではないでしょう。ただ自分がつくりたいお店をつくったらこうなった。個性的であることについて、考えさせられた午後でした。
(2023.8.31)