「ラ・マル しまなみ」に乗ってみた。その3
ほろ酔い以上泥酔未満でホームに佇み、岡山行き上りの「ラ・マル しまなみ」を待ちながら
「イヤー、尾道いい街だなぁ。今度来るときは泊まりがけがイイな」
なんて思っておりました。
午後になっても良い天気は続いており、時折吹く風は春のそれに似た心地よさで、ワインをボトル1本呑んでしまった私を癒してくれます。
尾道の潮風を感じていると、出発時刻の15分ほど前、白い213系が入線してきました。
勝手知ったる車内に乗り込み、手荷物を降ろしてもう一度ホームへ降りてみることに。
そこには、先程までは居なかった10人位の欧州系と思しき外国の方が、これまた外国人のガイドらしき方を取り囲んでいました。
どうやらガイドらしき方が、この列車のグリーン車指定席のチケットを皆に渡している様子。
そして、指定券を手にして車内に乗り込む者がいれば、思い思いのアングルで白い213系にカメラを向ける者ありと、旅の始まりを楽しんでいます。
ガイドらしき外国人と目が合った私は
「ハロぅ」
とほぼ日本語の挨拶をすると、そのガイドらしき方が私の方へやってきました。
「#$%$&**!」
なに言ってるかわかんない!
どうしよう!!
話しかけたのは私!
逃げる訳にもいかず、知っている限りの英単語を並べて喋ってみるも通じている感じは無く‥
「そうだ!iPhone に翻訳してもらお!」
と、iPhoneに
「こんにちは、尾道へは旅行ですか?」
と話しかけ、チャントした英単語が並んだ画面のiPhoneをそのガイドらしき方に渡すと慣れた手つきでフリック入力をして
「私はさっき居たあの人達の日本での旅行をガイドしています」
「あなたもこの列車に乗るのですか?」
と画面に表示されたiPhoneを私に返してくれました。
「イエス!」
これは通じました。
するとガイドさん
「頑張ってコミニュケーションをとってくれる貴方、とても嬉しいです。私は日本語が分かるので、どうぞiPhoneを仕舞ってください」
‥喋れるんかいっ!
と心の中でツッコミを入れてると
「日本語が分からない振りで、チョットいたずらしました」
かなりユニークな人のようで、一気に打ち解けました。
出発時刻になり車内へ入ると先の一団と席が近く、カルチャーショックを楽しみながら岡山までの旅を楽しむことに。
山陽本線を東へ進む車中、ガイドさんを通訳として一団との間に入ってもらい、会話を楽しみます。
このガイドさん千葉在住のトルコ出身の方で、日本の文化を紹介する鉄道旅行を中心としたツアーを企画し、海外の方に向けて発信するツアー会社の社長兼ガイドとのこと。
今回のツアーは成田に到着した一団をE259系「N'EX」に乗せ東京駅へ。
東京から岡山へはN700A「のぞみ」で来て1泊。
岡山から新尾道まで700系「こだま」に乗ってきて、この「ラ・マル しまなみ」で岡山へ、そして今や唯一の定期運行となった寝台特急「サンライズ瀬戸・出雲」で東京へ。
かなりの量の鉄分です。お見事!
そしてその一団、ベルギー、オランダ、ドイツからやって来た5組のご夫婦で、かなりの鉄道好き(特に夫)でこのツアーに参加したとの事。
中でもドイツからやって来たご夫婦の旦那さん、長年鉄道エンジニアとして働いていた生粋の鉄道マンで、日本の鉄道にとても興味があるらしくこのツアーに申し込んだそうです。
なるほど、ドイツからやってきた恰幅のいいその男性は、先程から鉄オタのアリーナ席「運転席後ろ」から全面展望を堪能しています。
ヨーロッパの鉄道の事を通訳してもらって教わり、とても有意義な時間はアッという間に過ぎてしまいました。
岡山駅でそれぞれの方と別れの挨拶を交わし、トルコ出身のガイドさんにお礼を言って握手を交わし
「Have nice trip!」(これは通じました!)
と声をかけ手を大きく振るとみなさん、一様に笑顔で手を振りかえしてくれます。
こうしてカルチャーショックありの私の「ラ・マル しまなみ」の有意義な旅は終わりました。