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最近考えているライブエンターテインメントのこれからの姿を包み隠さず話します(P)

書こう書こうと思いながら、書いては止まって、書いては消して。
これが私の今一番の関心ごとです。

新しい形って・・・

先日、緊急事態宣言が明けたことでライブハウスが営業再開したという夕方のニュースを見ました。
観客は隣前後と距離を取った席にマスクをして着席し、発声の代わりに鳴り物(デンデン太鼓とか←可愛い)を持って、ステージと客席との間には透明のビニールカーテンが張られ。
終演後のお客さんのインタビューでは
「新しい形だなと思いました」
というコメントが流れ。

もちろん、今できる精一杯のことを考えた上で行われたわけだろうから否定する気は毛頭ないし、同じライブに携わる者としてどんな形であれ活動が再開したことは喜ぶべきことだし、まだ社会的不安が拭い去れない中でもアーティストを応援しようと駆け付けたファンの方たちの心意気には頭が下がる思いです。

でも、これは新しい形ではない。
古い形で無理矢理現状に合わせているだけだ。
このままでは遠からず破綻する。

そんな危機感を覚えたので、自分の頭を整理することも兼ねて書いていこうと思います。

表現形式の話をしたいのではない

まず、一番初めに、ここで考えたいのは表現形式の話ではないことを先に断っておきます。
マスクして着席だとか、発声出来ないとか、ビニールカーテンの有無だとか、そういう話は一旦横に置いておきます。
表現の形式は状況によって変容していくものだし、きっとそれを逆手に取った表現をする人がすぐに出てきます。
また、その善し悪しを決めるのは観客の感性の部分にもなるので、私がどうこう言っても仕方ない。

では、ここでは何を考えるか。
「お金」のことです。

客席のソーシャルディスタンス

公文協からソーシャルディスタンスを取った配席をというガイドラインが出されたのは五月の半ば。
「表現上困難な場合を除き原則としてマスク着用を求めるとともに、出演者間で十分な間隔をとるようにしてください」
という一文に、私の周りもざわつきました。

(令和2年5月25日付 改訂版)

この出演者のマスク着用の話も表現方法の部分になるので、この場では割愛。
今考えるのはむしろ、こちらの話が近いかと。

これは衝撃的でした。
400→60って・・・

もちろん、劇場によって元々の配席環境も違うしどれだけの距離を確保するかなどの判断にもよるので、すべての劇場・ホールが同様になるとは言い切れませんが。

先日、STAR☆JACKS事務所のご近所さんであるインディペンデントシアターからも今後のガイドラインが発表され、配席に関しても発表されてました。

さすが相内P、対応が早いなと感心したものですが、客席図を見て唸ってしまいました。
うーむ、今後どうやって公演していったらいいんだ・・・

客席単価という話

公演を企画する際に、「客席単価」という考え方があります。
例えば、総キャパシティ200人の劇場で、1日借りて10万円とします。
1日2ステージ行うとすると、1日の総キャパシティは400人。
つまり、1席あたりのお値段は100,000÷400=250円ということになります。
それが客席単価。
その公演のチケット代が3000円だとしたら、内訳として250円は劇場費に充てられているということになります。
これは超単純な計算で、実際には劇場は公演日以外のリハーサル日にも料金がかかるのでその分を上乗せしなければいけなかったり、劇場レンタル費以外にも管理人件費やら機材費やらが加わりますが、ここでは計算を単純にする為に割愛します。
また、これはあくまでも毎ステージ完売御礼の場合で、満席ではないとするとその際のチケット代の中の劇場費の割合は上がります。
というか、満席にならない想定での予算組みが必要になるわけですが、どこにラインを引くかは様々かと思いますので、今は一旦満席想定で考えます。

さて、客席のソーシャルディスタンスを取りましょうとなった際には、当然ながら総キャパシティ数は減ります。
上記のがらまんホールほどの距離を取らなかったとしても、最低1mの幅を空けるとすると、客席数は半分以下になることは間違いありません。
(座面の幅が1mもあるような椅子の劇場は無いと思いますので)
ざっくり四割になったと想定すると、200だった総キャパシティは80になります。2ステージ合計で160。
つまり、客席単価は625円。beforeコロナの2.5倍になります。

善し悪しの話ではなく、事実としてこの点はまず書いておきます。

誰が負担するのかという話

SNSでこんなニュースを目にしました。

5000円の値上げか・・・うん・・・前述のことを考えると、気持ちは分からんでもないけれど・・・うーん・・・

劇場は総キャパシティが小さくなったとはいえ、そう簡単にそれに合わせてディスカウントするわけにはいきません。
そこで暮らしを立てている人がいるから。
客席数が減ったとはいえ、同じ施設なのでかかる経費は同じだから。

また、総キャパシティが減ったからといって、キャストやスタッフのギャランティをそう簡単に下げるわけにもいきません。
彼ら彼女らだって生活がかかってるわけですから。

じゃあ、その負担はすべて観に来て下さるお客様にお願いするべきかというと、それも断じて違うと思うのです。
劇場に足を運ぶ人たちが無尽蔵にお金があるわけではないこと、限られた予算の中で楽しんで下さってることは、誰が考えたって分かります。
そして、我々と同じようにコロナ禍で大変な想いをしている可能性も、想像に難くはありません。

だからと言って、チケットのお値段据え置きで、劇場費もキャスト・スタッフのギャランティも据え置きで、主催者が赤字を被るしかないという状況は、どう考えても長続きしないことは目に見えてるわけで。

冒頭に書いたライブについて、

でも、これは新しい形ではない。
古い形で無理矢理現状に合わせているだけだ。
このままでは遠からず破綻する。

という所感は、このようなところから来ています。

今は、メディアの注目や行政のテコ入れがあるからまだいい。
でも、遠からずそれは無くなります。
ならばどう生きていくのか。
数日前にこんなツイートをしました。

まさに上記のようなことを考えていたわけです。

誰か一人(一か所)が負荷を背負う、それではいけない。
みんながハッピーになるシステムを探さなくては、長続きしません。

今後はライブ配信の併存がスタンダードになるだろうという話

上記のようなことを考えた際に、演劇公演(のみならずライブエンターテイメント全般)のライブ配信というのは今後進むことは間違いないでしょう。
事実、STAR☆JACKS・Cheeky☆Queensでも今後は取り入れることを決めていますし、最近関係者との話の中でも同様のことが話題に上がります。
まだまだ細かい部分は検討中・手探りの部分も多いですが。

いわゆる通常の客席チケットと、ライブ配信チケットの併存。

ライブ配信チケットが出来れば、理論上客席は一気に無限大になります。(配信するサーバの性能という限界はありますが)
つまり、客席単価も下がります。
また、今まで遠方で足を運べなかった方、お仕事やご家庭の事情で足を運べなかった方への観劇機会になり得る。
遠方から高い費用と時間をかけて足を運んで下さってる方々への選択肢にもなり得る。

ポジティブな面をどれだけ伸ばせるかということがカギになる気がしています。

ライブ配信を客席観劇の代替案にしたら失敗する

ライブ配信については、勿論、好き嫌いはあるでしょう。
ライブはその場で生で体験するのが醍醐味、ということは当事者だから百も承知です。
けれどそれでは立ち行かないのであれば、新たな形を模索するのは必然。
今までの形をすべて否定するのではなく、併存、つまり選択肢を広げるということが今求める道なのだろうと思っています。

ただ、とりあえず映像で流せばいいというわけでもありません。
客席観劇の代替と捉えると、どう考えても満足度が下がることは間違いありません。
ならば客席観劇とは違う、一個のジャンルとして、満足して頂ける形を創ってゆく必要があります。

選択肢を広げるというのは、作品を観る場所を増やすという意味だけではなく、新しい「楽しみ方」自体の提案なのだということを忘れてはいけないと思っています。

もしかしたらチャンスかもしれない

というか、そもそも演劇は採算性の低いメディアだったのだから、ライブ配信などはもっと早くに取り入れても良かったのかもしれません。
コロナに襲われるまでそれに気づかなかったのは、私自身、考えが凝り固まっていたと反省すべき点だと思ってます。

今後様々な団体がそれに取り組み、トライ&エラーを繰り返しながら、新しい形が作られていくことでしょう。

現時点ではライブ配信が一番有力な手法と思われますが、もしかしたらもっと他にも楽しみ方はあるのかもしれません。
演劇VRとか出来たら面白いんじゃないかな。
(製作費はめっちゃかかりそうだけど、誰か作って~笑)

状況は決して甘くありません。
けれど、絶望はしてなかったりもします。
今までなかなか自発的には変えられなかったこと、因習的に継続してきたことを見直して変えてゆくチャンスかもしれません。
このチャンスは逃すべきではない。

昨日講師の仕事の際に若い子たちにもそんな話をしました。

こんな時代に生まれてしまったことを恨んでも仕方ない。
いや、もしかしたら若い子たちはそんなことは思ってなくて、これを当たり前のこととして、苦も無くしなやかに乗り越えていくのかもしれません。

その礎を築くのがおじさんの役割なのだとしたら、迷いつつも挑戦するしかないのだなと思う次第です。

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浜口望海(STAR☆JACKS/Cheeky☆Queensプロデューサー)
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