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発達課題・障害のある子の子育てと仕事の両立の困難さについて

1 子どもに障害があると増す「子育てと仕事の両立の難しさ」

 大変久しぶりの投稿になります。
 前回は、支援級か普通級か娘(軽度知的〜境界域知能+ASD傾向の指摘あり)の進学問題についてまとめましたが、4月の小学校進学後のフォローが予想以上に大変で、なかなか記事作成の時間がとれませんでした…。
 小学校進学後のことは、いまだ深い悩みと模索の渦中にあり、もう少し自分の中で整理できたらまとめたいと思います。

 今回は現在も続く悩みである「発達課題・障害のある子どもの子育てと仕事との両立」をテーマに、私の経験から感じたことをまとめます。

 我が家は、夫婦ともフルタイムの共働きで、どちらも職場出勤が基本の仕事をしています。
 
 私は娘が0歳児から保育園を利用し、仕事と育児の両立の大変さを実感していたつもりでした。しかし、娘の発達課題を認識してからの両立がそれ以前よりはるかに大変になった経験から、発達課題のある子の子育てと仕事の両立は、通常の定型発達の子を想定した育児と仕事の両立に、さらにやるべきことが多数加わり、こなさなければならないマルチタスク状態のレベルが上がることを理解しました。

 しかも、定型発達の子の場合、年齢が上がるに連れて相応に成長し、自立に向けた力を獲得していくのが一般的ですが、発達課題を抱えた子は、学齢期になっても親の手を離れるわけではなく、むしろ社会への適応に向けた手探りのフォローが続きます。

 具体的に、発達課題を抱えた子どもの子育てに必要となるタスクには以下のようなものがあります。

① 療育の送迎・付き添い

 発達課題のある子は、その特性に応じた発達支援を行う「療育」の早期開始が必要とされています。

 未就学児の場合、自治体の児童発達支援センターや民間の児童発達支援事業所などが療育の実施機関となりますが、これらの機関で実施される療育プログラムの多くは、平日・日中の時間帯になります。

 一部の民間事業所で土曜日枠等を実施しているところもありますが、希望者が多く、空き枠が無いことが少なくありません。

 また、療育は多数回の実施や個別療育と集団療育のセット等を勧められ、少なくとも週に1~2回は通うことが多いと思われます。
 その上、保護者が療育の内容を家庭で応用することに意味があるとされ、自治体や療育機関によっては、保護者の付き添いを求められます。

 そのため、子どもの発達課題や障害に応じて必要な療育を受けさせようとする場合、仕事と保育園等への送迎に、週1,2回以上のペースで平日日中の療育の付き添いや送迎が加わります

 週数回、平日日中の療育付き添いや送迎のために休暇を利用すれば、それだけでも有給休暇や子の看護休暇など、職場に制度で保障された休暇がある場合でも、あっという間に休暇上限を超えます。
 そもそも職場環境、仕事の状況等を踏まえると、それだけ頻繁に仕事を抜けること自体が難しい場合も少なくないでしょう。

 この療育の送迎・付き添いだけでも、フルタイムの仕事と両立させることは非常に厳しくなるものであり、フレキシブルな働き方や仕事の負荷をコントロールできる職場環境、親族などの支援や第三者サービスを利用して「送迎」の手配をつけられるなどの条件をクリアできないと、子どもにとって必要な療育を十分利用することが難しくなると思います。

 ちなみに、私の居住自治体の児童発達支援センターは、療育を担当する作業療法士(OT)などが週1,2回しか勤務しない非常勤職員のため、子どもの担当者が勤務する平日の特定曜日の9時~15時の1回50分の枠しかありませんでした
 しかし、保育園からは、集団保育の効果や給食、午睡など子どものペースを考慮し、午前11時までの登園を求められました。
 また、仮に保育園に預けられても11時〜14時などの枠では、職場との往復時間を含め長時間職場に不在となり、保育園の給食や午睡時間にも重なり、このような時間帯の療育は、保育園利用や仕事に与える支障が大きく、事実上利用が困難でした。
 保育園・幼稚園との併用者や仕事がある保護者は類似の課題があるため、同センターの療育は、午前早めの枠や午後遅めの枠に希望者が集中し予約がとりづらく、とても利用しづらいものでした。

 また、小学校入学後は、受給者証があれば、放課後等デイサービス等の利用に移動支援事業という送迎サービスを利用できる可能性があります。

 しかし、私の居住している自治体の移動支援事業所は、小学生の療育等の送迎サービスは、需要数に対する事業所やヘルパーさんの人員が不足し、新規受付をしばらく停止している事業者も多く、空きが無い状況で、区からもらった近隣区の事業所一覧まで広げて探しても、そもそも受けてくれる事業者が見つからず、移動支援事業を利用できない状況です。

 いわゆるファミサポ(ファミリーサポートセンター)もあくまでも有償ボランティアの位置づけで、人手が常に充足しておらず、私の経験上対応できる方がすぐに見つかるものではありませんでした。

 そのため、進学後も療育等の送迎問題は解消していません。

② 医療機関の受診等の付き添い

 発達課題や障害があると、定期的な診察、発達検査やそれに基づく診断等のため、医療機関の受診等の付き添いが必要になる場合があります。

 娘の場合も、年に数回は診察、発達検査、検査フィードバック、医師の指示によるST指導などで医療機関に同行していますが、平日の枠のみのため、仕事の中抜けや早退等が必要になります。

 なお、私の経験では、そもそも発達課題や障害に関する十分な専門的知見をもった医療機関自体が需要数に対して数が全く足りておらず、ある程度この分野で有名な医療機関は予約自体もなかなかとれず、平日の枠しか無いことがほとんどでした。

③ 子どもの所属や関係機関(保育園、学校、教育委員会、療育機関等)との連絡調整、面談等の対応

 子どもに発達の課題や障害があると、保育園や学校生活などさまざまな場面で、子どもの特性に起因する悩みや課題が出てきます。
 そのため、必要の都度、子どもが通う保育園、療育機関、学校などと相談、情報共有、支援方針の策定などのために、連絡調整や面談等を行う場面が多く生じます。
 娘の場合も、発達課題に起因して例えば以下のような対応を行いました。


【保育園生活から小学校入学準備まで】
〇娘の発達課題・状況等について共有するための保育園との面談
〇療育機関との個別支援計画作成等のための面談
〇就学相談等のための教育委員会との面談
〇支援級含めた進学先検討のための複数の学校見学
〇進学先決定後、娘の状況の説明や進学後のフォローに向けた学校側との協議のための面談
〇入学式前に発達課題がある子どもたちを対象にした学校見学、入学式リハーサル等への参加(見通し等を持てるよう学校の配慮によるもの)


【小学校進学後】
〇個別支援計画作成のための担任等との面談
〇学校での様子やフォロー対応のあり方等の相談・共有のための個別面談
〇娘がクラスメイトから発達課題に起因するいじめ等を受けたことへの対応(学校・教育委員会等との対応協議、保護者会での説明等)
〇学校での様子を把握するための授業見学
〇スクールカウンセラーとの面談
〇放課後等デイサービス等支援機関の見学、面談
〇民間療育機関へのメール、オンラインでの相談


 こうした子どもに関わる関係機関との連絡調整や面談などの対応は時間と労力がかかるだけではなく、親として子どもの課題や現状を受け止めつつ、周囲に子どもの状況を理解してもらい、必要によっては配慮や支援をお願いする働きかけをするエネルギーも必要です。
 その過程で、周囲の無理解に傷付いたり、葛藤したり、精神的に消耗することもあり
ます。
 
 しかしながら、まだまだ社会には、発達課題を抱えている人たちへの理解が十分に無く、福祉や教育行政においても当事者にとって必要なサービスや施策が不十分である現実もあります。
 その中で、子どもを支えるため、こうした対応をせざるをえない場合が多いことも、発達課題がある子の親にかかるタスクの1つだと思います。

④ 家庭での社会生活フォローの対応

 何より、発達課題や障害のある子は、その特性ゆえに、定型発達の子が普通に習得できることを習得するのに何倍もの時間と労力を必要とすることが少なくありません。それだけ努力をしてもいわゆる社会の「普通」レベルには届かないことも多いです。

 それでも、わずかでも出来ることを増やし、学校など社会生活に少しでも適応できるよう、多くの保護者が悩みながら、試行錯誤を重ね努力をしているのが現状だと思います。

 娘の場合も、3歳頃からこれまで保育園や学校などでの生活に少しでも適応できるよう、療育の他に発達障害児向けの習い事なども利用し、学習面や運動面のサポートを繰り返してきました。

 学習のフォローも、知的理解や手の巧緻性などに課題があり、インプットもアウトプットも時間がかかる娘への効果的な学習の仕方を試行錯誤しながら長期間かけて基本を繰り返しています。

 新しい人や場所への不安感も強く、行事やイベントなどの前には、事前に一緒に下見をしたり、担当者の人に会って安心させるなど見通しをもって臨めるよう対応することも数多くありました。

 また、娘の場合、味覚、聴覚、触覚など感覚の過敏さもあり、年齢が小さい時は衣類や靴なども受け入れられないものが多く、偏食もあり、衣類や食事で許容できるものを増やす試行錯誤も必要でした。
 
 特に大変なのは、トイレの機種による着座時の機械音や、自動洗浄音など予測不能な音が生じることが苦手で、トイレへの恐怖感、不安感が非常に強いことです。
 そのことで、イベントへの参加や外出に消極的になることもあるほど本人にとっては重大なことで、「たかが音」という普通の感覚で安全性をいくら説明し、経験させても解決するものではありません。そのため、小学校1年生の現在も、外出先のトイレの個室に私が付き添い、音などで半ばパニックになる時は落ち着かせるなどの対応が必要です。

 進学時も、小学校や学童にお願いし、事前にトイレの下見を一緒に行い、安心できるトイレであることを経験させ、1人でトイレに行けるよう準備をするなどの対応が必要でした。

 これらはあくまでも一例で、こうした定型発達児であれば不要な手間と労力が日常生活の中で常にかかってくるのが現状です。

2 複雑なスケジュール調整の大変さ

 両立において私が最も大変に感じるのは、仕事をしながら、療育等の送迎、変則的な学校面談等に対応するための複雑なスケジュール調整です。
 付き添い等が出来ない時の家族や第三者サービス等への依頼や日程調整の連絡、仕事上のトラブルや急な会議対応等による日時の再調整なども頻繁にあり、連日、手帳とにらめっこをしながら職場、療育先、家族、第三者サービス等との予定調整のためのメールや電話対応に追われます。
 これらの複雑なスケジュール調整は、仕事と育児の両立の困難さに直面するストレスも頻繁にかかり、頭が痛くなります。

 また、現在は職場でのポストが変わり多少フレキシブルな働き方が許容されていますが、それ以前は、療育付き添い等により毎年、年度末近くに法定の休暇数が無くなる危機を迎え、子どもの対応用に残休暇数を確保するため、自分が体調不良でも無理をして仕事に出ざるをえませんでした。

3 体力的、精神的な負荷と葛藤

 現在は、職場の理解もあり、リモート端末を付与され、自宅等でも一部業務が可能になりましたが、療育等で不在にする分、夜中や休日に仕事をしなければならないことも少なくありません。

 また、小学校に上がってからは、毎日、娘の学習や学校生活フォローのためのタスクが加わり、保育園時代より、睡眠時間を削る日が増えています。

 療育送迎や学校等の面談等のある日は、忙しい仕事を無理やり切り上げ、分刻みで移動し、移動先で職場からの緊急電話に対応することもあります。

 子どもの発達課題に起因する様々な悩み、葛藤、不安、もっと子どもに寄り添いたい気持ちと、仕事を頻繁に抜けることへの後ろめたさ、ジレンマなどを常に抱えながら、それでも前に進むしかないと試行錯誤を重ねています。しかし、子育て、仕事と様々な課題が全て自分にかかってくることで心身ともキャパオーバーと感じることもあります。
 
 特に小学校入学後は、かつてない厳しさで、自分の心身を整え、子育てに専念するために、一度退職するか、パートタイムやリモート中心業務などへの転職などを本気で悩みました。

4 発達課題・障害のある子の子育てほど経済的負担も大きい

 結局、私は、時々退職や転職が頭をよぎるものの、今の仕事を続けています。

 その理由として、もともと、私自身の仕事や自立の意義を重視する価値観もありますが、娘の子育てにとっても、現在の仕事を通じて得た様々な知見や人とのつながりがプラスになっていると感じていることもあります。

 それに加えて、実際上の大きな理由として、発達課題や障害を抱えた子どもの子育てほど、お金がかかると実感している事情もあります。

 娘の場合も、知的障害がある子向けの学習塾や体操教室、民間の療育機関等を利用してきましたが、発達課題・障害がある子向けの指導は、基本的に個別指導となり、集団指導でも必要な配慮を行うためにスタッフ数が多く、専門的な知見を有するスタッフが対応することもあるため、料金が通常相場より相当高額になります

 また、例えば、先に述べた療育等への送迎サービスのように公的なサービスとして使えるものが充足している現状に無ければ、自助努力として、民間サービス等を利用せざるを得ません。

 本来は、受給者証で利用できる療育や自治体の児童発達支援センターの相談支援サービスにおいて、民間サービスと同程度以上に効果的なサービスが提供されれば、このような負担を負わなくて済みますし、家庭の経済力等に関わらず、どの子も平等に必要な支援を受けられます。

 しかし、特に、小学校入学後実感することですが、娘のような境界域知能の子にとっては、普通級、支援級ともに、その子にあった個別最適な学びの機会や学習サポート体制が、公教育の中では十分に保障されておらず、放課後等デイサービスや自治体の療育でも学習支援プラグラムの選択肢はほぼありません。

 このように公的サービスや支援メニューの乏しさを感じていることも、私が自助努力の中で民間サービスを利用せざるを得ないと感じている理由の大きな部分です。

 そのような現実の中で娘に出来る限りの教育的支援を家庭で実施するには、私の場合は、就労して収入を得ることが必要です。

 こうした事情から、何とか頑張って今の仕事を続けなければと思う面もあります。

5 最後に…

 発達課題や障害を抱えた子の子育てと仕事の両立というテーマにおいて、子どもの障害の状況、保護者側の仕事や家庭の状況など様々であり、個々の大変さもそれぞれに全く違うと思います。
 私自身の状況も、もっと大変な状況にある人もたくさんいらっしゃるでしょうし、そもそも、仕事を続けること自体が困難な方が多数だと思います。
 私も、家族の状況、経済状況、職場の状況、娘の状況など何か一つピースが崩れればすぐに立ち行かなくなるバランスの中にいます。

 しかし、その大変さを比較することに意味があるものではなく、発達課題や障害のある子どもを子育てすることがどれだけ高いマルチタスク状態として保護者側の負担になっているか、それをサポートする制度や社会側の理解がどれだけ不十分な状況か、多くの人にとって就労との両立が非常に困難となっている状況、そうした実情を社会の人にも知ってもらい、行政や企業等にも施策を検討してもらうことが必要だと感じています。

 そのような意味で、今回のテーマを書きました。
 相変わらず、長文となり申し訳ありません。

 少し古いですが、最後に、同じような方がたくさんいらっしゃる現状について、参考となる記事も添付させていただきます。