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ラスアス300周の軌跡

『The Last of Us(ラスアス)』を初めてプレイした瞬間、私は言葉にできない衝撃を受けた。死にゲーやホラーならではのスリル、心を揺さぶるストーリーや魅力的なキャラクター、シンプルで直感的なUI、そして脳に快感を与える音楽――それらすべてが見事に調和し、没入感を引き出していた。すべてが私の心を捉え、まるで自分のために作られたゲームのように感じた。

 イージーモードをクリアした後、次はグラウンドモードに挑戦し、3周を終えた頃には「ラスアスっぽいゲームは他にないだろうか?」と探し始めていた。しかし、どれをやっても心を満たすことができなかった。

 その時、ふと思った。
「ラスアスっぽいゲームを求めるのではなく、ラスアスそのものを徹底的にやり込めばいいのか」
 その考えが芽生えた日から、まるで新しい自分が目を覚ましたかのように感じた。私はゲームの中にどんどん引き込まれていき、気づけばその世界に深く沈み込んでいた。

 グラウンドモードを15周以上クリアした頃、YouTubeで偶然見つけたラスアスのスピードラン動画に目を奪われた。それは、世界1位のプレイヤーがグラウンドを2時間50分以内にクリアするという、驚異的なプレイだった。そのプレイに感動し、私は「スピードラン」に強く興味を持つようになった。
 もっと緊張感を持ってプレイしたい、限界に挑戦したい、自己満足でもいいからもっともっと上手くなりたい――その思いが私を突き動かした。

 スピードランの練習に没頭する日々が始まった。ある日、スピードランドットコムというサイトで、ある日本人プレイヤーがグラウンドを2時間59分台でクリアした記録を見た。その瞬間、私も3時間を切りたくなった。競争心が湧き、そのプレイヤーを超えたいという気持ちが膨らんだ。そして、私は「日本1位」という大きな目標を掲げた。

 毎日、練習と検証を重ね、本番にも挑み続けた。それを7か月間ほど続け、ついに「2時間58分台」という記録を達成した。喜びと興奮が込み上げ、ゲームクリア後にタイマーを止め、その結果を見た瞬間、涙がこぼれそうになった。生配信中だったので、それをリスナーに見せたくなくて、必死にこらえた。

 私は紛れもなく日本で一番ラスアスを熟知し、上手くなった。厳密には記録していないが、おそらく300周以上はクリアしたと思う。ゲームにここまでのめり込んだのは、これが初めてだった。この経験を通じて学んだのは、作品を愛し、深く没頭すること、単なるコンテンツ消費に終わらせないこと。そして「好き」に正直に向き合うことの大切さだった。忍耐力、努力、計画性、人生における取捨選択、などなど――とにかくいろいろと学んだ。

 しかし、その目標を達成した瞬間、急にやるべきことがなくなった自分に気づいた。ラスアス一色だった日常が、突然色あせてしまった。ジョエルやエリーの影は消えないのに、彼らが私の中から消え去ったかのような虚無感に襲われた。
 そんな私は今、新しい目標を探しているところ。まだ明確な目標は見つかっていないが、それを考えながら、ひたすら小説やエッセイを書いている。

 

 Okay.


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野澤祐二
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