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朝日地球会議に登壇

朝日新聞が主催する国際シンポジウムである朝日地球会議に、DeNA会長兼経団連副会長の南場さんとYOUTRUSTの岩崎社長と共に【日本経済に真の新陳代謝を】をテーマに登壇しました。

大変僭越ながら南場さんからお声がけいただき、起業家の立場として日々の経営で感じていることや、資金調達に関することなどお話しをさせていただきました。

最初の15分は南場さんから日本が急速に新陳代謝を起こさなければいけないということを多くのデータを使ってその危機的状況の共有と、その打開策について解説してくださいました。

いくつか下記にピックアップしますが、是非とも南場さんの最初の15分の動画は多くの方に見ていただきたい内容です。

↓当日のアーカイブhttps://digital.asahi.com/articles/ASPBP4D1SPBHUKJH009.html?iref=pc_ss_date_article

↓朝刊 2021年11月8日

20211108朝日新聞様紙面②


南場さん資料のサマリー

■2020年 スタートアップの資金調達額 米国17兆円 日本0.45兆円
スタートアップをめぐる負の循環
 ①起業する人が出てこない
 ②成功するスタートアップが少ない
  スタートアップに人が流れてこない・・人材の流動性が低い
 ③小さいIPO(新規株式公開)
  ベンチャーキャピタル(VC)の質、額、深いデスバレーに付き合う大きいVCがない
 ④世界で通用する大きな成功を収めるスタートアップがない
スタートアップ振興のVISION
 スタートアップの数、成功レベルを共に10倍にする
 世界で大勝する企業
 →資金 深いデスバレーを支えるリスクマネー
  世界で勝つ目線 
 →起業家の数
  ①リスク指向(教育・文化・ロールモデル)
  ②起業をless risky にする
   ・規制緩和・スタートアップ経営に関する諸制度の改革
   ・失敗しても再挑戦or元のレールに戻れる社会
   ・人材の流れを大きく変える

未上場企業の2020年の資金調達額
米国 
1位 Waymo 3,000mm (3,300億円) ※1ドル=110円換算
2位 Space X 1,901mm
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10位. Samsara 700mm(770億円)

日本
1位 Mobility technologies 166億円
2位 プレイコージャパン 100億円


10位 アンドパッド 50億円

リーダーシップ人材の流動化 
 ●改革の方向性
  ・新卒一括採用の早期撤廃
  ・寄り道歓迎、寄り道プレミアム
  中途採用のメインストリーム化 
   ・経営メンバーの半分以上は中途採用に 
   ・スタートアップとの往来歓迎

起業家を増やす教育改革
 ・中・高等教育における起業家教育
 ・初等教育改革
  パッションの共有力
  間違えない達人より尖った強み
  様子の違う人とのコラボする力

  →教育のOSを変える

■世界の勝者が生まれにくい
 ・小さすぎる上場 
  四半期決算による大きな投資が出来ないこと

これらの改革を一斉にギアを上げてスタートアップを10倍の数、レベルを10倍にしないといけない!

というのが南場さんの一貫した主張です。

南場さんのお話しを聞いて共感と危機感しか湧きません。

個人的には教育については大改革が必要であると思っていますが、今回は起業家の立場ですので資金調達環境やグローバル展開の観点でコメントをさせていただきました。

日本の資金調達環境と世界との差

私が特に伝えたかったことは、日本の資金調達環境と世界との差です。

数字の比較は南場さんの資料にある通りですが、やはり国として新産業を育てるというリスクテイクの捉え方が米国とは違うようです。

ZENKIGENはこれまで2回の資金調達を行い10億円以上調達をしています。これとてこの短期間での資金調達としては5年前、10年前と比較すると相当に調達のしやすい環境になっている結果と言えます。

その理由として世界的な金余りというのもあると思いますが、エンジェル投資家やシード、シリーズAという初期ステージのスタートアップに出資するベンチャーキャピタルが増えたことがその原因と言えると思います。

しかしながら初期ステージを抜けたミドルステージに入ると日本は俄然苦しくなります。ミドルステージの会社に対する投資をするベンチャーキャピタルが極端に少なくなります。少し専門的になりますが、このステージでも投資するベンチャーキャピタルはもちろんありますが、リードインベスターと言われる「その投資案件をリードし、最も出資額も多く、コミットし、どの投資家よりもそのスタートアップの成功を信じる」投資家が極端に減ります。

南場さんの資料にもありましたが、このミドルステージからレイターステージにかけて「深いデスバレー」と言われる先行投資により赤字がひたすらに膨らんでいくステージに投資するベンチャーキャピタルが日本は極端に少ないです。


投資契約書もベンチャーキャピタルのリスクが極力減るような内容になっていたりと、最もリスクを取るはずのベンチャーキャピタルが銀行や既存金融機関と同じようにリスク回避に必死だったりする場合もあります。よく日本の会社は減点主義だと言われますが、ベンチャーキャピタルも例外ではなくなんとか投資先を倒産させないように延命を図り、起業家の再起のチャンスを奪ってしまうケースもあります。

海外では、100社投資してそのうちの数社が大当たりすることで倒産した会社も含めて莫大なリターンを狙います。その結果、可能性溢れる起業家に次のチャンスを与えているということも起業家が次から次へと生まれる原因になっているのではないかと思います。

少し専門的になってしまいましたが、要は日本では初期のよちよち歩きをやっと抜けた後の資金集めが困難を極め成長スピードが著しく遅くなるか、もしくは次の資金が集まらずに大量の倒産が生まれ、深いデスバレーを越すスタートアップが少ないのではないかと思います。

私もスタートアップの経営者の宿命として今後も資金調達を繰り返す訳ですが、まさに「深いデスバレー」を超えられるかが常に問われています。

また南場さんも仰っている通り小さすぎる上場が日本では多く、四半期決算開示などにより大胆な投資が出来ずに上場後に成長が緩やかになってしまうということが多々あります。これは上記の通り深いデスバレーに出資するベンチャーキャピタルが少ないために上場を選択するのが現実的ということもありますが、一方で本気でグロースさせ、更にはグローバルに本気で挑戦しようという起業家が少ないのではないかと思います。

グローバルに進出しなければいけない理由

私は20年以上ITの世界にいますが、この20年で米国と中国に圧倒的な差をつけられてしまい、特にグローバルに挑戦している会社が圧倒的に少ないのではないかと思います。パッと思い浮かべるだけでもメルカリやスマートニュースなど限られるのではないか。
幸か不幸か日本は3位とは言え経済大国ゆえ国内だけでビジネスが成立する上、日本語の壁に守られているため、わざわざ熾烈なグローバルに戦いを挑むことはない、ということなのかも知れません。

しかし停滞している日本の中においてもITは数少ない成長産業です。この成長産業を国内だけでビジネスをしていたらどうなるか?

2100年には日本の人口は今の半分の6000万人になると予測されています。人口動態だけは未来予測の中でもほぼ外しません。
あらゆるものがコモディティ化し、3Dプリンターの性能が年々上がっていく未来においてモノづくりニッポンの優位はなくなります。最大の産業である自動車もEVが広がるとこれまで蓄積して来た強みは通用しなくなります。だからこそITやAIの産業が奮闘してどんどん世界を市場にしないといけないと思うのです。

このまま自動車産業が衰退し、ITが世界に進出しなければ人口が半分になり、経済も半分になるでしょう。アジアが今後圧倒的な成長をしてくるのでますます日本は貧しい国になってしまいます。もちろん経済だけが豊かさではありませんが、経済ですら保てなければ安全保障の観点からも食料とエネルギーの多くを輸入に頼る日本はどうなってしまうのか。

こう考えると、戦後の焼け野原から奇跡の復活を遂げる原動力となったホンダやトヨタ、パナソニックなどの先人の方が作った豊かな日本を我々が食い潰しただけの世代になるのではないか我々世代までが良い思いをして、次世代には貧しく他国の脅威に怯えるような生き方を選択させるようになってしまうのではないか。

責任世代として、またIT業界の起業家としてグローバルに挑戦して、先人から引き継いだこの日本と地球を少しでも磨いて次世代に引き渡す責任があると思っています。ゆえに私の人生のテーマでありZENKIGENのフィロソフィーは「For Our Next Generations」なのです。

イスラエルや韓国は国が小さいために最初からグローバル展開前提で起業し、実際世界に通用するスタートアップも生まれています。南場さんが指摘された改革は待ったなしで全てやるべきだと思います。そうすることで今後生まれてくる起業家が最初から世界を目指し、その中からホンダやソニーのような会社がまたいくつも生まれるのではいか。そんな可能性を信じたいと思いますし、私自身も人生を懸けてZENKIGENを日本発のグローバルカンパニーにしたいと思います。


このパネル登壇で発言しても、国や有識者の方に声高に叫んでもZENKIGENの資金調達が短期的に良くなることはありませんし、そんなことは全く期待していません。ZENKIGENのことは自分で何一つ言い訳せずにやり切ります。しかしながらスタートアップの起業家の立場としてこのような場で現状をリアルに伝える場があれば、(僭越ながら)今後も後進の起業家が歩きやすい道を作るために発言していこうと思います。


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