『怪物の木こり』に感じる亀梨和也の可能性
このところ妙に忙しく、noteに書く暇がなかったが、勿論観ております『怪物の木こり』。以下、うっすらと本編の核心に触れるかも知れないので、映画未見の人は読まないでね。
亀梨くんの前の主演作『事故物件 怖い間取り』(2020年)は、自分が期待していたものと少々違っていたので「んん~…」という作品だった。それは別に出演者に起因することでなく、映画の作り方の話で。ただこの違和感については、ここ10年ほどの邦画ホラーがずっと抱えている問題なので、それについてはまたいつか別の機会に。
今回の『怪物の木こり』は、バイオレンス描写が得意な三池崇史監督と聞き、かなり前からシネコンで流れてた予告編からも期待が高まっていた。
斧で頭部を粉砕し、脳を持ち去る猟奇連続殺人。この辺の展開は飯田譲二監督作の『アナザヘヴン』(2000年)を彷彿とさせた。あれは脳を持ち去った犯人の正体が最後に明かされて観客ドヒャー!! ……なんだけど。
本作は予告の時点から「サイコパス対殺人鬼」との宣伝ですが、本編を最後まで観れば、本当にこのコピーで正しかったのかなという気も…。嘘ではないけど正確でもないっていう。映画序盤は殺人に躊躇しない真正サイコパスの二宮が、実は途中から…という種明かしだし。
――で、この映画の目玉である木こりの怪物の顔は非常に気持ち悪く、よく出来ている。人間は両目が同じ方向を見ている、つまり視線がどこかに定まっていることで感情と知性を感じさせるものなのだが、木こりの左右の眼球が違う方向に向いている。何を考えているのか全く分からない顔。いかにも作り物のマスクというより、生理的嫌悪感を抱かせる不気味な顔に造型しているわけです。この木こりの顔を含め、犠牲者の有様など特殊メイクを担当しているのが百武朋さん。過去には『東京喰種 トーキョーグール』(2017年)や、清水崇監督の『犬鳴村』(2020年)を始めとする”恐怖の村シリーズ”、近年では、やはり清水監督の『ミンナのウタ』(2023年)、『ゴールデンカムイ』(2024年)などに参加している。
本作で二宮を演じた亀梨くんは非常に良い。正直、ジャニーズ所属という看板なしでも俳優としてイケる人なのでは、と兼ねてから思っているのだ。俳優としての可能性がどんどん広がっているのを本作でも感じる。映画ファンを自称する人の中にも、残念ながら「ジャニタレ(ジャニーズ事務所の男性)が出ているから観ない」と、自ら作品を遮断してしまう人が少なからずいて、常々勿体ないと感じる。最初から見ないリストに入れた映画は、そうそう自分の意志で鑑賞することはない。それ故に、こうした傑作に触れる機会を自ら逃しているのだ。
『怪物の木こり』は三池崇史の監督作として、ここ数年のベストと思うが、亀梨和也の主演映画という括りでも上位に来るのではなかろうか。作中に出てくる絵本で語られている、”人を喰う怪物は友だちが欲しかった”という寓話が結実するオチも効いている。
ちなみに彼の映画で一番好きな主演作は『ジョーカー・ゲーム』(2015年)である。『俺俺』(2013年)みたいなシュールコメディや、『PとJK』(2017年)に代表される少女漫画原作の毒のないラブストーリーも悪くないが、個人的に亀梨くんは、こうしたピカレスク・ヒーローの方が役にハマる気がする。悪い役ね。
『怪物の木こり』のラストは、角川映画『蘇える金狼』(1979年)を連想しましたね。主人公は彼女を本当に愛していたのに、ああいう行動を取ってしまう。悪を演じ続けた自業自得とはいえ、切ない。
切ないといえば旧ジャニーズ事務所のゴタゴタである。仕事が激減すると思ったのか、所属タレントがどんどん同社を離れている。亀梨くんはどうなるんでしょうね。旧ジャニーズのアイドル活動、歌手活動にはさほど興味がない自分(実際、ほとんどKAT-TUNのバラエティや歌番組は観ていない)だが、実は役者としての亀梨くんにはずっと注目している。俳優としての伸びしろが大きく、今後も色々な監督と組んで欲しいと思う。頑張れ。