待望の実写化 Netflix映画『シティーハンター』
4月のある日、Netflixさんとのお仕事で記事を書く運びで、独占配信映画『シティーハンター』を試写で観ることになった。自分自身、映画ファンであり、漫画&アニメのサブカル方面も好きだったので、今までそれなりの本数の漫画・アニメの実写作品は観てきたつもりだ。
2004年から2005年にかけては、『CASSHERN』(松竹 04年4月)、『キューティーハニー』(ワーナー 04年5月)、『NIN×NIN 忍者ハットリくん THE MOVIE』(東宝 04年8月)、『デビルマン』(東映 04年10月)、『鉄人28号』(松竹 05年3月)と、大手映画会社が競うように人気アニメの実写化に参入した。中には私も取材に行った映画もある。その後は藤原竜也、松山ケンイチ、小栗旬、山﨑賢人が、このジャンルで重宝され、現在に至るまで多くの作品が世に送り出されている。
邦画界を2024年現在まで俯瞰しても、漫画もしくはアニメのネームバリューを利用して、安易な企画が通っただけに感じられる映画も多々あった。個々の作品の感想を述べる場ではないが、ああ、随分頑張ったなぁ、面白かったと感じられるものから、かなり落胆しつつ劇場を後にした作品まで色々である。
――と、そんな気分の中で臨んだ『シティーハンター』の試写ではあったが、結論から言うと非常に満足できる仕上がりだった。冴羽獠を演じる鈴木亮平の取り組み方に”本気度”を感じたからだ。
既存のアニメを原作とした映画は、往々にして監督が「(元ネタの作品を)観たことがない」というケースがある。または、余計なバイアスを受けないように敢えて観ないまま演出したとコメントすることも。それもまぁ、プロですねと言いようもあるが、ファンとしては原作に愛情を持った人が取り組んでくれるのが一番良いに決まっている。そこへ行くと鈴木亮平は何年も前から『シティーハンター』の実写版をやりたいと話していたほど原作愛好家で、今回の映画にも様々なアイデア出しをしたという。この人の主演作は東映の『HK 変態仮面』(2013年)を公開時に観ていたので、その肉体美と共に、演じる役に合わせて身体を作りこむ役者という知識はあって、安心はしていた。
アクション映画でリボルバー拳銃のスナップロード(※手首を外側に振る動きで弾倉を装填するアレです)をよくやるが、実際はバレルと弾倉の位置がズレたり、拳銃にダメージを与えるため奨励されない。それも分かった上で、映像の見栄え重視で鈴木が見せる(魅せる)スナップロードのアクションが、まぁ格好いいこと。
人探しから殺しまで請け負う街のスイーパー(始末屋)冴羽獠の相棒・槇村秀幸役に安藤政信。槇村の最期は近年公開の映画『劇場版シティーハンター天使の涙』で描かれたが、Netflix映画では元・刑事の勘を働かせ、アクションも用意されている。
冴羽獠とは付かず離れずの関係で、警察の手が及ばない汚れ仕事を彼に任せる野上冴子役に木村文乃。あまりに若すぎたり童顔の女優だと、警視庁にこんな女がいるかよ、という現実味のなさで観客がシラけてしまう所を、なかなかの貫禄と切れ者ぶりを発揮してキャリアを感じさせる。やさぐれた同僚役の杉本哲太との捜査課活動も、観ていて面白い。
初めて見たのが、確か深夜枠のテレビドラマ『キューティーハニー THE LIVE』(2007年)だったと思う水崎綾女は、伝説のキャバクラ嬢の波乱に満ちた人生を描いた『ユダ』(2013年)を観た時にも感じたが、顔の雰囲気からしてゴージャス感があり、作品が華やぐ印象の女優だ。本作では若い子たちが憧れる大手コスメ会社の女社長を演じており、期待を裏切らないゴージャスキャラ。勿論、単なる添え物には終わらない人物であるが観てのお楽しみ。
原作漫画、アニメで冴羽獠とコンビを組んでいる槇村香には森田望智。今回の映画は、香がいかにして獠の良きバディになって行くかを描く"はじまりの物語”なので、作中での比重が大きい。個人的には映画後半で、亡き兄に対する想いを獠にぶつけて泣く辺りにグッと来た。『シティーハンター』は、獠が惚れるにせよ騙されるにせよ、まず美女ありきのおハナシなので、綺麗どころの女優が多いに越したことはないし、その点ではもうバッチリなのだ。
4月23日に東京・新宿で行なわれた試写会は、プレミアの様子を配信で見ていた。どれぐらいの人数の招待があったのか知らないが、Netflixさんから随分手厚い持て成しがあったようで、観に行けた皆さんが羨ましい。登壇者もブルーカーペット沿道の大勢のファンにサービスするなど、理想的な催しだったと思う。
鈴木亮平がサプライズゲストの小室哲哉に向かって、続編の主題歌を希望する一幕があり、ぜひ第2作を! は本作を観た多くのファンが願ってることだろう。幾つか感想を拾い読みした限りでは、原作漫画もアニメも見たことがない人が映画を楽しんだようで、『シティーハンター』の予備知識がなくても分かるよう、エピソード0として作られた意味は充分あったはずだ。ちなみに新宿が舞台となる『シティーハンター』の世界を再現するため、新宿観光振興協会、歌舞伎町商店街振興組合、新宿駅前商店街振興組合、西新宿一丁目商店街振興組合、歌舞伎町タウン・マネージメント、新宿署など地元の全面協力による大規模なロケーションを敢行している。ドローンを使った夜の街の空撮もお見事。ぶっちゃけ、Web配信だけで終わらせるには勿体ない作品だよねぇ。反響次第では続編イケるかも?
■原作/北条司『シティーハンター』
■監督/佐藤祐市
■脚本/三嶋龍朗
■出演/鈴木亮平 森田望智 安藤政信 華村あすか 水崎綾女 片山萌美 阿見201 杉本哲太 迫田孝也/木村文乃 橋爪功
■アクション監督/谷本峰
■特殊メイクデザイン、造型デザイン/藤原カクセイ
■VFX/デジタル・フロンティア
■VFXプロデューサー/豊嶋勇作、鈴木伸広
■エンディングテーマ/TM NETWORK「Get Wild Continual」
■制作/ホリプロ
■製作/Netflix
■制作協力:オフィス・シロウズ
■原作協力:コアミックス
Netflixにて独占配信中
©北条司/コアミックス 1985