あの都市伝説の映画化 『THIS MAN』
この男、見たら死ぬ――
6月7日公開の映画『THIS MAN』を試写で拝見。2000人以上の人が夢で見たという、眉毛が繋がった額の広い不気味な男性。”THIS MAN”のネットミームで世界的に知られている男を独自解釈で描いたもの。フジテレビの『世にも奇妙な物語’17 春の特別編』にて、『夢男』のタイトルでドラマ化されたので観た人もいるかもしれない、アレです。
不可解な連続変死事件が起きるが、その被害者たちは精神科の受診歴があり、いずれも不気味な男の姿を夢で見たという共通点があった。事件を調査する刑事(津田寛治)は、モンタージュで作成された男の顔を手掛かりに謎に迫ろうとする。津田寛治演じる井沢刑事が、インド料理店のランチでラッシーを飲むシーンで、同僚(校條拳太朗)から「それ、甘いやつですよね?」と聞かれて「歯が溶けるぐらい甘いぞ~」と返すやりとりが面白い。専門店の辛いカレーと一緒に飲むには良いけど、確かに甘いよね、ラッシー……
良き夫と暮らしている八坂華の周辺でも、友人や職場の上司が”あの男”を夢で見たと言い出し、いずれも変死を遂げる。やがて”あの男”のモンタージュはテレビ放送に乗って、多くの人の目に触れることに……。
主人公夫婦に出口亜梨沙と木ノ本嶺浩。出口亜梨沙は東映の『スーパー戦闘 純烈ジャー』(’21)で観ていたが、今回は落ち着いた感じの既婚女性役で、しっとりとした演技。華の夫・義男役の木ノ本嶺浩も、やはり東映の『仮面ライダーW』(’10)のテレビシリーズとその劇場版が印象深い。”あの男”を夢に見てしまったことで夫婦の平穏な家庭は、一転して大変なことになる。
映画後半は思いもよらない意外な展開を迎えるが、こうしたスリラー映画のネタを割るのは野暮なので、観た人のお楽しみ。特殊メイクと特殊造型は、田島敬子とアトリエ・アールアのスタッフが手がけており、ピンポイントで効果を挙げている。
2000年代半ばに(主に海外中心に)起こった”THIS MAN”の目撃情報や都市伝説は、実は巧妙に仕組まれたフィクションでした、というオチがある。が、これを題材に日本独自の新解釈で、この男の起源に迫ったシナリオの着眼点は割と面白い。華の妹役に、『爆上戦隊ブンブンジャー』でブンピンク・志布戸未来を演じている鈴木美羽、華の友人・山本咲役に茜屋日海夏など、その筋のファンなら「おっ」というキャストも出演。茜屋日海夏は、テレビアニメ『終末のイゼッタ』(’16)のイゼッタ役が個人的に大好きだったので非常に良かった。
『THIS MAN』 2024年6月7日公開
■出演:出口亜梨沙 木ノ本嶺浩
鈴木美羽 小原徳子 茜屋日海夏 校條拳太朗 / 般若 アキラ100% 中山功太
津田寛治 渡辺哲
■監督・脚本・編集:天野友二朗
■配給:アルバトロス・フィルム
■企画制作:Union Inc.
88分 PG12
©2024 Union Inc