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We are,We are little zombies

夢なんてない、目的もない。
ただ生きているなんてゾンビのようだ。
でもそれもいいじゃないか。

8.31に公式HP上で無料公開されていた長久允監督『ウィーアーリトルゾンビーズ』を見た。(現在は劇場上映中)
両親を失い、悲しいはずなのに泣けない。
そんな4人の少年少女がバンドを結成し、こころを取り戻していく青春ムービー。

夢中になれるもの見つける。
世間から認められる、成功する。
ハッピー、ハッピー。
とは、いかない。

夢を叶える映画ではなく、生きることをもがく映画だった。

映画からは2つのMVが出ている。
1つは劇中でバンドが社会現象化するきっかけとなった曲『WE ARE LITTLE ZOMBIES』

生きてるか 死んでるか 分からない
僕らには 何もない! ない! ない! ない!
WE ARE, WE ARE LITTLE ZOMBIES!!!!!!!!

感情を失い、未来も希望もない姿が"ゾンビ"と例えられる。
次第に夢も目的もない大人の姿にも"ゾンビ"の姿が投影されていく。
そんなアダルトゾンビの隙間を駆け抜け、今今今今を生きる逃避行をする少年少女。

この映画に揺さぶられたのはここからだった。
主人公の一人ヒカリは、側から見ると「ゴミミタイナ」自分の人生を振り返り絶望しかける。
しかし、仲間たちは「絶望とかダッサ」と吐き捨て、「ゴミミタイナ人生」と決めつける他者に対して勝手に決めつけるな歯向かう。
そして、「上手くいく保証はないけどね」と思いながらもう一度人生を歩き始める。

「映画的ではない普通の人生を歩く、それもいいね」と締めくくり流れるEDは『ZOMBIES BUT ALIVE』

ねえ どうしてゾンビが ゆっくり歩くか 知ってるかい?
そりゃ そっちの方が 全然 断然 面白いからさ
そうさ 全ては ユーモアととともにある!

WE ARE ZOMBIES BUT ALIVE 
目的なんかは 後で決めるぜ
WE ARE ZOMBIES BUT ALIVE
生きてるか 死んでるかは どーでもいーぜ!

"夢のないゾンビ"だって生きている。
それでも良くない?と歌われるエンディング。

8.31の無料公開は、9月の新学期を控え絶望の淵にあるかもしれない子供達に向けてだった。
長い休みを終えて新学期を迎える9.1は子供の自殺者数が最も多いとされる。
長久監督は「絶望感から逃げていい。」という想いを伝えたくて今回の無料公開を行った。

「大人ってすぐ夢とか押し付けるよね」
と劇中でも言われたように、それが子供の生きづらさにつながることはある。
夢や目的があって生きることは理想的だけど、そうじゃない人生も否定されてはいけない。

懐の深いメッセージ性が突き刺さった。
一見ポップでエッジの効いサブカル映画に見えなくもないが中身は思春期の心に寄り添うジュブナイル映画だった。

最初から最後までフルスロットルの勢いで進む物語に引き込まれるし。
一度聞いたら耳に残るテーマソングやBGMも魅力的だし、
主演者は佐々木蔵之介や池松壮亮をはじめとする豪華俳優陣も見所だし、
イクコ役の中島セナからは目が離せないし、
ミュージシャンやクリエイターが随所に仕込まれているのも見逃せないし、
ポップでエッジの聞いた画面もどれも魅力的。

要するにぶっ刺さりました。
もう『WE ARE LITTLE ZOMBIES』のMVでドラムのイシくんが中華鍋を体くねらせながら叩いてるの見るだけで胸が熱くなりますもん。

自分はいい歳していまだに"ゾンビ"だなと感じる。
"ゾンビ"じゃない大人を目指しつつ、自分の人生に絶望せずに生きていこう。


ちなみに"ただ生きるゾンビ"は監督の前作にあたる短編『そうして私たちはプールに金魚を、』とつながるテーマ。
短編の主人公も"人生"を象徴する存在として本作にサブリミナル的に2回出てきた。
こちらはいまでも全編無料公開されているので是非。(参考記事

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のざらし
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