キャッシュレスのニュージーランド・クレーマーの日本
とあるパン屋に入った。ビーフパイが目当てだった。
ニュージーランドで「パイ」は、お手軽ランチの定番だ。
パン屋には、ビーフパイやらチキンカレーパイやらベーコンエックパイなど、たくさんの種類が売られていて、普通のパンやサンドイッチよりも人気がある。
袋に入ったパイをひとつ買って外でガブリつく、というのがニュージーランド流だ。
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初めて入るパン屋だったが、店の中は盛況だった。
壁にはパイアワード受賞の賞状が何枚も飾られていて、どーやら人気店らしい。
レジには10人以上が並んでいた。
期待できそうじゃん。。と思いながら、僕は列の最後尾に着いた。
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商品は、お客の列に沿って陳列されていて、並びながら取り出せる形式だった。
しかし一向に列が進まない。
前方を見るとレジは一つ。
そのせいかもしれないが、それにしても一歩も動いてない気がする。
レジは若いインド人の女の子。先頭の客と何か話してるようにも見える。
何をまごついてんだろう。
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並び始めてから数分後、そのレジ係の彼女が大声で言った。
「すいませんー、エフトポスが故障で、現金のみですー!」
あーっ・・というため息や、現金のみかー・・といった声とともに、並んでいたお客は一斉に離れていった。
ニュージーランドでは「エフトポス」と言うデビットカードシステムがある。エフトポスで払ったお金は、自身の銀行口座から直接引き落とされる。
導入されたのはだいぶ古く、僕が日本から来た13年前にはすでにキャッシュレス社会だった。
当時の僕は「都会の国」から「田舎の国」に渡ってきたつもりだったので、それにたいそう驚いた。
日本は最近になってキャッシュレスと言い始めてるが、それも遅すぎて驚いている。
このためニュージーランドでは現金を持ち歩かない人が多い。
エフトポスの故障で、お客の数は一気に1/3になった。
そこまで減るか・・と改めて思ったけど。
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ところで、こんなとき、日本のコンビニだったら、店員に悪態をついたり、怒鳴ったりする人がいそうに思う。そういう人を見ると気分が悪くなる。
日本で会社員をしていた時のことをふと思い出した。
あるプロジェクトで僕の下についた外注のエンジニアがいた。
彼は僕の一回りくらい年上で、いつもニコニコしてて誰にも逆らわない穏やかな人だった。
しかし、ある日にマクドナルドに一緒に行ったとき、些細なことで、とんでもない大声でレジ係に罵声を浴びせるシーンを目撃してしまった。あれには引いた。
海外では「日本人は礼儀正しい」と思われているが、もしあんなのをニュージーランド人が見たら、たまげてひっくり返るだろう。
この国では、くだらないクレームをいう人はほとんどいない。
ふつうのパン屋で過剰なサービスなんて誰も期待していない。
そのくらいでちょうどいい。
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僕もエフドポス払いの方がいいけど、幸いキャッシュも持ち歩いている。
列の人数がガラッと減ったので、すぐに僕の支払いの番ががきた。
その瞬間
「エフトポス直りましたー!!」
と。
別のスタッフが機械と悪戦苦闘していたが、うまくいったらしい。
僕は、すんなりエフトトポスで支払いを行って、パイを片手に店を出た。
朝からツイてる日だ。