女優だった私が過食嘔吐していた頃のおはなし。【平成サブカル女子の自伝②】
43才の私は今、夫と一緒にひまわり荘の前にいる。
下北沢南口から歩いて15分の所にある、古い木造アパート。私は20才から3年間、ここに住んでいた。昭和フォークソングの世界から出てきたみたいなこのおんぼろアパートが、私は大好きだった。築50年になるひまわり荘は老朽化が激しく、今はもう誰も住んでいないようだ。
「自分が住んでいた部屋を見たい」という衝動を抑えきれず、夫を置いて2階に上る。靴音がかんかんと響く、錆びた鉄の階段。手すりを掴んだ手を嗅ぐと、懐かしい鉄くさい匂いがした