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【読書記録】「覇権なき時代の世界地図」 北岡伸一 新潮選書

 著者は、国際協力機構(JICA)特別顧問。JICA理事長、国連大使を歴任し、これまでに118か国を訪れたという。(p238)
 本書は、JICAの視点から、主に新興国、発展途上国の情勢や日本との関わり、日本が果たすべき役割について書かれている。

 東南アジア・太平洋、南アジア・中東・インド洋、アフリカ、南米、ヨーロッパの地域別に章立てし、いくつかの国が紹介されている。なかには政情が不安定であったり、治安が悪かったりする国もある。だか、そこに住む人びとの活気や情熱、おおらかさが文面から伝わってくる。親日国として紹介されている国もいくつかある。その土台には、人と人との交流の積み重ねがあったのだろう。

 昨今、グローバルサウスが注目されているが、その「多くは小さく、貧しい国々である。」(p271)それらの国に対して、欧米流の上から目線の押し付けでなく、相手の立場に立って一緒に考える姿勢がJICAの伝統」であるという。米国をはじめ西側諸国の影響力が低下する中で、「伝統的に自己の価値を押し付けることを好まない」(p277)日本流のアプローチの仕方、「文化の中核を維持しながら近代化を実現した」(p240)日本の近代史など、日本が伝えるもの、果たす役割は大きい。

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