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「ゼルダの伝説 TotK」とは、めっちゃ楽しい「あつ森」である


 『ゼルダの伝説 ティアーズ オブ ザ キングダム』(以下「TotK」)が、とてつもなく面白いです。

 50年を超えるテレビゲームの歴史の中で発売された全ゲームの中で、これはトップクラスの面白さです。これこそ歴代世界一だ、と考える人も少なくないでしょう。マジでめちゃくちゃ面白いです。

 ――と、そんな評判を目にしても、「なんか難しそう」「きっと上手い人向けのゲームだし」と、これは自分がプレイするゲームではないな、と敬遠している人もいるのでしょうね。

 ああ。もったいないなぁ。

 ぜんぜん違うんですよ。いざプレイするとわかるんだけど、このゲーム、ものすごーく初心者向けです。

 なぜなら、プレイヤーがやっていることは、基本的には『あつまれ どうぶつの森』と同じだからです。世界をふらふらと歩いていると、「なんか面白そう」「なんか気になる」と感じるものがみつかる。そっちに歩いていくと、なんか面白そうな場所に到達する。「ここでは、何すればいいんだろ?」「こんなことすれば、いいのかな?」と、いろいろと試したくなる。――と、「TotK」にハマっているプレイヤーは、基本的には、そんな行動をくり返しているだけなんですよ。

 だから、みんなクリアするまでに100時間とか200時間とか、膨大な時間がかかっちゃうんです。「あつ森」って、1日に20~30分ずつプレイしているだけで、いつしか合計で100時間、200時間と費やしてたりするでしょ? それとまったく同じなんですね。




 まあ、「あつ森」とは違って、いちおうストーリーはあります。

 ハイラル王国の危機を救うため、魔王ガノンドロフを倒すぜ! というのがメインストーリーです。なのでゲーム開始直後から、そのストーリーを決着させるため直線的にプレイすることも可能です。最速だと1~2時間でラスボスを倒し、クリアすることが可能みたいです。世の中には、とんでもなく凄腕の化け物プレイヤーがいるのですね。

 とはいえ、99.99%のプレイヤーは、そんなことはしません。

 もうすぐ魔王ガノンドロフが復活しそうであり、それを食い止めるため、愛しいゼルダ姫が「わたしを探して……」と懇願しているというのに、そういう本筋のストーリーはそっちのけにして、みんなハイラル王国を好き勝手に冒険しはじめます。目的地を無視して、ひたすら寄り道を楽しみ始めるんです。

 だって、このゲームの寄り道、めっちゃ楽しいんだもん。

 それが「あつ森」とのふたつめの違いです。ハイラル王国は、めちゃくちゃ広いです。そこには草原があって、雪山があって、熱帯雨林があって、火山地帯があって、砂漠があります。歩いているだけでどんどん景色が変わっていきます。移動するだけでも、すごく楽しいのです。

 世界には、いろいろな「仕掛け」が山ほど用意されています。パズルみたいなものですね。「なんだこれ?」「何すればいいんだ?」「あ、こうすればいいのか!」と、これらの仕掛けをひとつずつ解いていくのが、めっちゃ楽しいのです。大小合わせて、そういった仕掛けが1000個くらいあります。とてつもない量があるのです。

 これらを楽しみながら寄り道をしていると、自然とハート(体力に相当します)が増えていく、というオマケつきです。主人公リンクはどんどん強くなります。強くなれば、より厳しい環境下でも冒険できるようになり、さらに寄り道が楽しくなっていく――と、そういう仕組みになっているのですね。

 つまり「TotK」にハマっている人は、広いハイラル王国で、延々と寄り道を楽しんでいるわけです。こっちの村で困りごとをしている人を助けて、あっちの村で悩んでいる人を助けて……と、いつの間にか100時間、200時間を費やしているのです。「あつ森」と同じように、この世界で自由に生きることを、ひたすら堪能しているのですね。
 

 

 

 なので『TotK』は、初心者でも楽しめるゲームなのです。

 本筋のストーリーを真剣に追いかけてこそ楽しい! というゲームであったならば、強い敵とも戦わなくちゃいけないし、いろいろな困難を突破しなくちゃいけないし、それなりにゲームの腕が必要となりますが、寄り道を楽しむゲームとなると話は違ってきます。寄り道するのに、テクニックなんざ必要ないですからね。

 ただ、テクニックは必要ないけれど、初心者プレイヤーの場合、ひとつの「心構え」が必要となります。今回は、その心構えを、特別サービスとしてお教えしちゃいますね。

 「心の中の、池乃めだか師匠を目覚めさせよ!」

 はい。これが最大にして最強の「心構え」です。何を言っているのか意味がわからないかもしれませんが、これ、めっちゃ大事なポイントです。この意味が理解できた瞬間、このゲームは、初心者が楽しめる、めちゃくちゃ難易度が低いゲームに早変わりいたします。





 具体的に説明しましょう。

 ハイラルの大地で、敵と遭遇したとします。

 戦いに挑んでも、どうにも勝てないとします。ボコボコにやられてしまったとします。

 世の中の大半のゲームの場合、ここでは「とにかく頑張る」のが正解となります。絶対に倒してやる! と決意を固め、目の前の敵を倒すため、何度も何度も戦いに挑むべきです。そうやって実力を磨いていくことが、ゲームを楽しむための最善手だからです。

 でも、「TotK」は違います。

 勝てないんだったら、逃げちゃえばいいんです。はい。ここで心の中にいる池乃めだか師匠を目覚めさせましょう。ボコボコにされたときは、「今回は、このくらいにしといたる」と心の中で叫ぶのです。そして、とっとと離脱するのです。これが最善手なのですね。

 だってさ、なかなか勝てない相手に挑み続けてもツライだけじゃないですか。痛いだけじゃないですか。ゲームは楽しむためにプレイするものなんだから、楽しくないことをする必要なんか、どこにもないのです。池乃めだか師匠を見習って、すぱっと逃げ出しちゃいましょう。

 これは敵との戦いに限った話ではありません。「解けない謎」があったり、「何をすればいいのがわからず困惑した」ときなども、そんなものは後回しにして、別の寄り道を楽しんじゃえばいいのです。この世界は広いです。悩み続けて時間を浪費するのは、もったいないですからね。


 


 そういうの、なんか嫌だな。どうしても魔物に勝ちたい。目の前の困難に打ち勝ちたい。――と思っている方もいるでしょう。だったら、頭を使いましょう。

 魔物の攻撃が届かない遠距離から、爆弾(のような火力の強いアイテム)を投げつけるのが基本でしょうか。電撃(を発生させるアイテム)で痺れさせてから攻撃してもいいし、大地に火を放って焼き殺してもいい。馬に乗って突進して魔物を蹴散らしてもいいですね。

 めちゃくちゃ遠くから、弓矢でチクチクと攻撃するのも楽しいです。「遠くから矢を当てられる技術なんかないよ!」という方もご安心ください。なんと今回、自動で敵をホーミングしてくれるアイテムも用意されています。どれほどゲームが下手であっても、これなら弓矢は100発100中となります。安心ですね。

 さらに今回は、さまざまなマシンを自由自在に作ることもできます。SNSで検索してみてください。戦車や爆撃機、果てにはレーザーを撃ちまくる人型ロボットにいたるまで、凶悪なマシンを作っている人の動画がたくさんみつかるかと思います。

 こういうマシンさえ作れてしまえば、あとはマシンを魔物の群れに突進させるだけでOK。気持ちいいくらい豪快に魔物を殲滅してくれます。まあ、そういったマシンを作れるようになるのは、それなりにゲームを進めてからになるんですけどね。(ゲームの最序盤では、凶悪なマシンを作るのに必要なアイテムは、なかなか手に入らない)




 いかがでしょうか。「TorK」が、めちゃくちゃ初心者向けのゲームであることが、ご理解いただけたでしょうか。

 世界の平和を取り戻そう! というタイプのゲームは「魔物を倒さなくちゃいけない」から「初心者にとって難しい」わけですが、「TotK」は、あらゆる魔物を無視していいのです。どうしても倒したかったら、あの手この手でいろいろと対応できるのです。まったく難しくないんですよ。

 その結果、初心者であっても、広大なハイラル王国をふらふらと移動して、ひたすら寄り道を楽しめるようになっているのですね。それが「TotK」というゲームの凄いところです。

 しかも、前述したように、ただ寄り道をしているだけで、リンクはどんどん強くなります。ゲーム開始時のハート(体力に相当します)の数は3ですが、これが5、10、20、30……と、がんがん増えていきます。

 ここまでくれば、いつしか池乃めだか師匠を目覚めさせる必要はなくなります。初心者でも魔物と戦えます。テクニックなんかなくても大丈夫ですよ。4~5発のダメージを食らっても死ななくなってるんですから、魔物の群れに突っ込んでいって、剣を振り回しているだけでもどうにかなります。(まあ、それだけじゃ倒せないヤツも、一部にはいますけど)

 このくらい強くなれば、もうラスボスの魔王・ガノンドロフとも戦うことだって可能です。初心者でも、ちゃんとハイラル王国に平和を取り戻すことができちゃうのです。




 ただし。

 おそらく、そこまで強くなったとしても、あなたは「まだまだ寄り道したいところがあるしなぁ……」と、魔王ガノンドロフのところには向かわず、きっとハイラル王国をふらふらと歩き続けるんだろうなぁ、と予言しておきましょう。

 なぜなら「TotK」というのは、そういうゲームだからです。

 強くなるまでゲームにハマってしまったあなたは、おそらく、今後も100時間、200時間……と延々と「TotK」を堪能し続けてしまう、立派なゼルダ沼の住人になっているはずです。

 シリーズ初代からのゼルダファンのひとりとして、そんなあなたを心からか歓迎したいと思います。ようこそ、こちらの世界へ! ひたすらハイラル王国を冒険しながら、追加DLCの登場を心待ちにし続ける仲間の増加を、わたしたちは心から歓迎いたします。




(補足)
ゲーム初心者にとっての最難関は、ゲーム冒頭の「始まりの空島」でしょうか。ここは基礎を学ぶための、いわばチュートリアルにあたる部分なのですが、初心者にとっては、けっこう難しく感じるはずです。ここだけは「とにかく頑張るしかないんだよ! だから頑張れ!」と声援を送っておきますね。ここさえ突破できれば、初心者でも楽しめる、とてつもなく楽しい世界が、あなたを待ってます。


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