2022年 気象大学校受験記③

前回に引き続き、今回も気象大学校の受験記を書いていく。なお、受験から数ヶ月経ってから執筆していており、当時の記憶が薄れている。その分文章の詳しさが減じてしまっている点、ご容赦願いたい。

二日目

基礎能力試験

9時40分から着席し、20分待機したのちに10時から試験が始まった。
この試験は、前半では読解力や処理能力が試され、後半では知識が試される。
さらに内訳を細かく述べると
<読解>現代文4問、漢文1問、英文2問
<処理>論理パズル4問、数的処理8問、図表2問
<知識>物理、化学、生物、地学で各1問、世界史2問、日本史2問、地理2問、漢字1問、ことわざ1問、英文法2問、現代社会5問
であった。
私はこれらの問題を前にし、まず現代社会の知識問題を解き、その後読解問題、残りの知識問題、処理問題(という言い方は聞いたことないが、ここではそう呼ぶことにする)という順で解いた。

知識問題は暗記していれば一発で答えられる。したがって直前まで詰め込んだ現代社会の知識を真っ先にアウトプットすることにした。結果、この戦略が功を奏し、現代社会の知識問題は完答できた。特に哲学者にまつわる問題などを目にしたときには、某ゼミの漫画よろしく、見たことがある!と即座に解答できた。詰め込んだ努力が報われた瞬間であった。

次に、読解問題を解いた。これに関しては過去問を通じてミスしたことがほとんどなく、本番でも順調に終えられた。なお年によっては漢文ではなく古文が出ていたりもするので、両方の基本的な文法、単語の知識を習得しておきたい。

それから、残りの知識問題を解いた。地学の知識は皆無と言って良かったが、運良くこの年は緯度・経度の問題であり、数学(はたまた算数レベルか)の比の問題として解くことができた。他の理科の問題も解答できた。

そして処理問題に挑んだ。しかし結局論理パズルや数的処理の一部はわからず運に任せるほかなかった。私は立体図形の展開図に関する問題が致命的に苦手であり、中学校の単元テストで47点を記録するほどであったが、残念ながら一題出てしまい半分運任せで解く羽目になった。

でも書いた通り、この試験は最も時間制限の厳しいといって良いものである。過去問演習を通じて自分なりの時間配分を決めることが肝心である。例えば私は処理問題に多くの時間を費やした。一方で、理数系は得意だが文系科目は苦手という人ならば、読解問題に時間を割くべきであろう。

記述式

数学

お昼休憩を50分挟み、12時20分までに着席完了。例によって20分ほど待たされてから試験が始まった。解答用紙は6枚あり、裏表白紙であった。サイズはそこまで大きくなく、自由帳のような感じでつづられていた。なおこれは物理と英語でも同様であった。どれも大問3つ構成であるためおよそ2枚ずつ使うことになるだろう。なお、表で書ききれない場合は「裏に続く」と書いて裏を使うよう注意事項に記載されていた。

早速問題を見る。すると第一問が漸化式と整数の融合問題であり、2003年の東大の類題と言えるものであった。最後の小問は2022乗の整数部分の一の位の数を求めさせており、東大の最後の小問と全く同趣旨であった。そのため方針は即座に思い浮かび、あとは解答を書いていくだけであった。35分ほどかけただろうか。完答を狙いにいった。

次いで第二問を解いた。マクローリン展開を背景とした数Ⅲの問題である。この手の問題では微分を利用することが定石である。実際、(2)では微分を要求されている。問題なのは(3)以降で、発想力を要する。(3)は実数の存在証明であった。その時、数学の神が舞い降りた。平均値の定理を使うことを思いついたのだ。実際、その方針は正しく証明に成功した。(4)はeが無理数であることを示すもので、流石によくわからずとりあえず有理数と仮定し背理法で示す旨だけ記載しておいた。部分点を狙う姿勢である。

最後に第三問を解いた。楕円と接線、交点について誘導に従いベクトルで解くものであった。しかし、(2)の(ⅱ)で詰まった。「分子分母が高々一次式の既約分数」で解答するよう指示があったものの、どうしても一次式に直せなかったのだ。
続く(ⅲ)はcosの値を(ⅱ)で求めた文字を元に記す問題。ベクトルとcosの両者を紐づけるのは内積であり、内積計算だけ記して撤退した。試験は見直しを少しすると終了した。

ここで悲惨な事実が発覚する。第一問の(1)で求めた数値が違っていたのだ。試験中は完答したとばかり思っていたのだが、大量失点を意識し絶望した。ただ、その後の小問において「数学的帰納法で示す」などと方針を示していた。そこでの部分点に期待するほかなかった。

物理

記述試験の二つ目は物理である。
第一問は力学であり、前半は円運動と慣性力、後半はさらに単振子の問題となっていた。力学の応用問題を詰め合わせた問題構成である。小問が8つもある長い問題であった。時間の都合上、全問を解答することはやめ見直しも入れた。

続く第二問は、例年ならば熱力学が出題される。断熱変化で考える雲のモデルがテーマとなる問題が出ていたこともあり、気象大学校にふさわしい出題だった。
しかし今年度は波動であった。問題のレベルは易しめ。後半は正弦波の合成であったが和積の公式が与えられていて、それに従えば概ね完答できる大問であった。実際、うねりを求める小問を除き全て埋められた。
だが、過去問の傾向から、熱力学に絞って勉強し波動の勉強を怠った受験生にとっては厳しい問題であっただろう。そこで差がついた可能性も考えられる。

最後の第三問は電磁気であり、コイル、抵抗、コンデンサーの含まれる回路系の問題だった。これは電磁気の中でも最後に学ぶ交流回路の問題であり、現役生の場合、受験する10月末までに学習しきれていない可能性もある。幸い、私の高校はすでに電磁気を終わらせており私自身も演習を積み重ねていたので対応できた。
この分野は微分積分を使わないと位相のずれを暗記する(あるいは性質から判断する)必要が生じるが、私は微分積分を用いた。慣れたら知識が定着するため用いずとも瞬時に判断できるだろうが、その領域には達していなかった。

今年度の物理について注目すべきことは、先に述べたように波動が出題されたことと、例年出題される計算メインの大問が出題されなかったことの二つである。計算ミスが多く、また波動の勉強もしていた私にとっては有利であった。かなりの高得点が期待できた。

英語

最後の科目は英語である。英語はなかなか出題傾向を見いだしづらい。
今年は色に関する自然科学的な長文が一題、アメリカの道に関する人文科学的な長文が一題、和文英訳が一題出された。

一つ目の色に関する長文問題は、全問英語で解答するものだった。5問あったが、そのうち(4)(5)は思考力が試されていた。本文では3色を混ぜ合わせてできる色の総数が8色であるということが記されていた。この2問は、そこからさらに、本文中の記述から考えられる理論に基づき、5色ならば何色生み出せるか、さらにその理由を60字以内で述べるというものであった。なかなか面食らう問題であった。
さて、その理論について、使う色の組み合わせで生成する色が定まるというものであると私は読み取った。0色、単色、2色、3色、4色、5色の組み合わせを考えれば良いと思い、コンビネーションを使い説明した。

二つ目の長文問題は日本語で答えるものであり、内容説明問題が2問、和訳が1問、指示語の対象を指摘する問題が1問あった。こちらはそこまで思考力を問うているわけではなく、本文中の記述を抜き出し訳せば答えられるものであった。

和文英訳問題は全部で5問あり、傍線部を訳すものであった。英文のテーマは気候変動であり、気象の要素がここで入ってきた。和文和訳(例えば「転ばぬ先の杖」を英訳しようと思った時、まずことわざ自体を英語で書ける日本語に直す作業が要る。そういった作業を指す語)は必要なく、単語や文法が素直に問われていると感じた。

英語に関しては全問解答できた。しかし、第一問の思考力の要る問題や和文英訳など、正解に確信の持てない問題が多く、点数はいまいち予想しがたかった。

以上が二日目の試験である。
その後12月中旬に第一次試験の合格発表、ならびに第二次試験が行われた。
一次に合格し、二次を受験したので、次回は二次について書いていこうと思う。
ここまで読んでくださり誠にありがとうございました。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?