なぜ、バレエを踊るのか
ふと考えてみると、
バレエを始めて20年以上経つ。
途中数年のブランクはあったものの、
学生時代も社会人になってからも、
私の生活はバレエと共にある。
小さい頃から習っていると言っても、
私はプロのバレエダンサーではないし、
それが叶う身体の条件は持ち合わせていない。
ではなぜ、バレエを踊るのか。
習い事としてはじめたばかりの頃は、
ただ、踊ることが楽しいだけだった。
中学生くらいになると、
踊ることは自分の居場所だと感じていた。
バレエをやめていた高校時代、
踊っていたことを、踊っていた自分を、
過去のものにしようとすると苦しかった。
月1回のレッスンから再開した大学時代、
踊っている時間は日常を忘れられた。
結局そのまま踊ることを諦めきれず、
きちんとした就職はしなかった。
オーディションを受けていた時期は、
レッスンの回数が多ければいいと思っていて、
手当たり次第オープンクラスを受けていた。
だんだんと、
「バレエが好きで、踊るのが楽しい」
ということよりも、
「何者かになって、誰かに認められたい」
ということが、踊る理由になっていった。
コロナ禍になってほとんどの舞台は中止され、
劇場は閉まり、オーディションもなくなった。
その数年間、ひたすらレッスンに通い詰めた。
技術も表現もレベルアップできたと感じた頃
もう一度オーディションを受けてみたけれど、
プロとして踊る機会は得られなかった。
バレエに向いていない自分の身体を恨んだ。
舞台でもレッスンでも思ったように踊れず、
バレエなんて、もう辞めた方がいいと思った。
逃げるように知らない土地に引っ越した。
踊ることから離れれば楽になれるはず。
トウシューズもレオタードも使わない生活。
それなのに何ひとつ捨てられなかった。
たまにレッスンをすると、
身体が上手に使えなくて自分に絶望する。
体重ではない身体の重さを感じる。
でもレッスンを続けると、
何回かに1回、ふわっと浮く感覚がある。
上手く踊ろうと思わなくても、
シュルシュルと身体がつながって動く感覚。
一度その感覚を味わうと、やみつきになる。
まるで麻薬のように、
もっとその感覚で踊りたいと思ってしまう。
そうやって結局、
今の今までバレエをやめられないでいる。
今、私がバレエを踊るのは、
筋肉の動かし方で、骨の位置で、
何より自分の気持ちの持ち方で、
踊りが変わっていくのが楽しいから。
自分が踊りたいから踊るんだと思えてから、
心も身体もどんどん楽になってきている。
少しでも長く、楽しく、
踊り続けられるように。
そして、
踊りたいと思ったときに、
踊れる自分でいられるように。