124のわ 二度目の海外
121でイングランドのサンダーランドの話しをした。調べてみると初めて訪れたのは1989年だった。その年は忘れてはいけないタイミングだ。ポーランドで第二次大戦後続いていた共産党政権が選挙で敗れ、東欧の民主化の先駆けとなったのだった。サンダーランドを訪れた後には実際にポーランドに行き民主化活動を推進した自主管理労組「連帯」の拠点であるグダニスクの造船所を見に行った。ニュースではいつも連帯メンバーの労働者と政府側の警官隊との緊張して騒然としてせめぎ合いが報道されていたのだけど、造船所の大きな正門はひっそりと静まり返っていて少子抜けするような思いがした。その後に行った首都ワルシャワも公園では人々がのんびりと落ち着いて散歩していた、もうずっと大昔から穏やかで平和な佇まいが続いてきたように感じられた。わずか3〜4カ月前まで世界を揺るがせた騒乱が繰り返された場所とは思えなかった。サンダーランドに向かったのはそんなタイミングだった。
イギリスはと言えば、当時は長らく続いたサッチャー政権の末期で、経済が全くうまく行ったなくて、失業率が高まり続けていた。一方の日本はまだバブルの最中で日本円を持っていればお金持ちの象徴として世界中を闊歩していた。しかしその直後にバブルは崩壊してしまうのだけど。
僕はまず知り合いのアーティストが住んでいるロンドンに向かった。イギリスに行くのは初めてというだけでなく、人生2度目の海外だった。1度目はその15年ほど前にアメリカに行ってミシガン州の小さな田舎町で1年間高校に通った経験があるだけだった。
西海岸のロックミュージックが大好きで過大とも言える憧れを持ってむかったアメリカとは違って、イギリスにはそんな思い入れはなかった。でも到着して初めてみるロンドンの街並みを見て、欧州の重層な歴史の重みを感じずにはいられなかった。
そして数日間ロンドンの街中を訪ね歩いた。もちろんどんな美術があるのかをみるのが目的だったので、ギャラリーや美術館に行きまくった。
ホワイトチャペルギャラリーのオープニングでは、アート業界の人物関係の縮図を味わったり、目くるめく現代美術三昧の日々。興奮した!!
そしてすぐ飽きた。(続く)
新見永治