見出し画像

マンガ回顧「手塚治虫アシスタントの食卓」

※画像は11.「OBの特権!?特上3段重うな重」を連想できそうなイメージです。

こんにちは。イハです。
先日書いた自己紹介の記事がいい感じで「スキ」を貰ってちょっと舞い上がっていたのも束の間、さて2回目は何を書こうかと思っていたら、ちょっと時間が経ちすぎてしまいました。
近いうち、自分の仕事(インタビューのこと)に関することも書こうかなと思っています。仕事を語れるだけのキャリアを積んだのかと言われると悩むところですが、自分の経験をアウトプットすることで見えてくるものもあるのではないか、と。

それはそれとして、今回は以前に読んだマンガの感想などを書き連ねてみたいと思います。
取り上げるのは、堀田あきお&かよ『手塚明治アシスタントの食卓』です。

作品について

『手塚治虫アシスタントの食卓』は2019年4月ぶんか社から発売された単行本。同社のアンソロジーコミック『ごほうび食堂』(旧:めしざんまい)シリーズに掲載した作品を加筆修正し、収録しています。

タイトルの通り、日本漫画界の巨星・手塚治虫氏のアシスタントを務めた作家たちの視点から、手塚プロダクションのエピソードを食事に絡めて綴っています。

作者の堀田あきお&かよ両氏は夫婦で漫画家活動をしており、過去には親の介護経験を綴った『親の介護、はじまりました』(ぶんか社)や、旅行体験を描いた『夫婦でインドを旅すると』(旅行人)などを発表しています。
手塚先生のアシスタントを務めていたのは夫のあきお氏。作品内のエピソードは、彼がアシスタントを務めた1980年前後の体験がベースになっています。

ふんわり描かれる濃厚エピソード

あきお氏は軽いタッチの画風。トーンは極力使わず、かといって描き込みも抑えめです。加えて、ところどころに笑いの要素が入るので、サクサク読み進めることができます。

ところが、当時のプロダクションの内情が垣間見える話もそこかしこに散りばめられており、うっかり「あれ、軽く読んじゃったけどあれってすごいエピソードじゃね?」というのが出てくることもしばしばあります。

例えば「1.夜食のシメの絶品茶漬け」では、アシスタントの夜食がすべて会社持ちという気前の良い話がしれっと出てきます。と思ったら次の「2.徹夜明けのミックスサンド」では、夜勤には夜食だけでなく翌朝の朝食も付いているという話まで!どんだけメシ出してくれるんスか!!パねぇッス!先生パねぇッス!!!俺一生ついていきますッッ!!!!と言わずにはいられません。

ほかにも、プロダクションのもう一つの事業であるアニメ制作部との微妙な対立関係や金銭事情、当時のプロダクション内で使われていた細かなテクニックなどなど、興味深い話があちこちに潜んでいます。

登場人物のほとんどは伏字になっており、そちらのモデルが誰なのかというのも気になります。

もう味わえない?作品内に出てきたお店たち

当作では手塚プロの人々が通ったお店も多数登場します。ファンならば一度は訪ねてみたいところですが、現在はもう営業していないお店も多いようです。

「2.徹夜明けのミックスサンド」に出てきた喫茶店「つかさ」は2015年に閉業してしまったそうです。当時、手塚るみ子さんも閉業を惜しむツイートをされていました。

「3.なじみの店のやみつき中華丼」で当時の社長さんが食事をしていた中華料理店は今も営業していそうな感じです(推測の域を出ないので店名は割愛)。中華丼がメニューとして残っているかは不明ですが、手塚先生のリクエストで生まれたメニューがあるとのことで、ファンには有名なお店のよう。

「10.そばまんじゅうとお父さん」で手塚先生の父が「これオサムちゃんの大好物なんだよ」と話したのは更科と書かれたそばまんじゅう。こちらを販売している和菓子屋さんは現在も営業中とのこと!今では鉄腕アトムをかたどった饅頭など、手塚作品にちなんだものが人気のようです。そばまんじゅうも店頭で購入できるらしいので、一度味わってみたいものです。

おわりに

本作から感じられるのは、人情味あふれる手塚先生の横顔。そして、かつてアシスタントを務めた方々が抱く、今もなお失われていない手塚先生へのリスペクトです。巻末にはあきお氏と同期で入社した作家陣との座談会も収録されており、こちらも必読!

ぶんか社の作品ページ

いいなと思ったら応援しよう!

この記事が参加している募集