ボイスドラマ『残響スパークル』第6話「焚火を囲むかのように」シナリオ公開!
こんにちは! ノベルボch公式noteです。
ボイスドラマ『残響スパークル』はお楽しみいただけましたか? Voicyにてアンコール放送もしていますので、まだの方はぜひノベルボchをフォローいただき、ご視聴くださいね。
全7回にわたって、『残響スパークル』のシナリオ完全版を無料で公開します。この記事では第6話「焚火を囲むかのように」を全文公開しています。
実際のボイスドラマを聴きながら読み込んでいただくと、声優の演技力に圧倒され、効果音や楽曲の効果に感動していただけるはずです。また、ボイスドラマ制作をしたいと考えている皆様の一助となれば幸いです。
シナリオ公開にあたって
・このシナリオは、収録時に声優が入れたアドリブや、編集時にディレクターが演出として加えた効果音を反映した『シナリオ完全版』です。実際の収録時や編集時に使用したシナリオとは一部仕様が異なります。
・行頭にある番号は、収録時や編集時に制作メンバー間で意思疎通をしやすくするための管理番号です。なお、シナリオ番号が一部飛んでいるのは、秒数を調整するために収録直前にカットしたことによるものです。
【著作権について】
この記事にて公開しているテキスト全文について、著作権は水島なぎ( @nagi_kotobano )に属します。一部または全部の無断転載、および許可のない二次利用(音声コンテンツ化、映像化を含む)はご遠慮ください。
『残響スパークル』第6話「焚火を囲むかのように」ボイスドラマはこちらから
『残響スパークル』第6話「焚火を囲むかのように」シナリオ全文
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ノベルボchボイスドラマ 残響スパークル
第6話 焚火を囲むかのように
1
ゲン「タダ同然なら売らねぇ方がマシだ! ったく」
※SE 煙草を吸う音
※SE 歩き回る足音
2
イライラして不満をぶちまけるゲンさんを無視して帰るわけにもいかず、ミコトと並んで隅に座る。
3
ミコト「売らないなら、やめなきゃいいのに。……おじいちゃん、どうするつもりだろ」
4
遼「AAA(ノーネーム)が大切だからこそ、自分でちゃんと終わらせたいんじゃないかな」
5
ミコト「え?」
6
遼「スタッフたちの転職も面倒みたって言ってたし。機材も、ただ処分できればいいんじゃなくて、どこかの誰かに使ってほしいんだと思う。そうやって、次につなげたいっていうか……うん」
7
ミコト「……似たもの同士、考えてることわかるんだね」
8
遼「えっどこが? ……似てるか? あれと?」
9
ステージを歩き回りながら、ゲンさんはぶつぶつ文句を言っている。かと思いきや、誰かに電話をかけ始めた。
※SE 電話をかける音。ガラケー
10
※電話
ゲン「もしもし、俺だ。聞いてくれよ、機材の下取り業者がよ……」
14
※電話
ゲン「……え? 何? ……おいちょっと待て、何の話だ?」
16
ゲン「おいおい、誰に断り入れて……ああ、一回、打ち合わせだ。……おう、今夜な。酒はいい。AAA(ノーネーム)で待ってる」
18
ミコト「おじいちゃん? どうかした?」
19
ゲン「いや……スタッフたちがな。勝手に計画してたんだとよ」
20
遼「計画? 何を?」
21
ゲン「AAA(ノーネーム)での、ラストライブ」
23
遼「えっ……またやるんすね、ライブ!!」
26
ゲン「詳しいことは今夜、あいつらを締め上げてからだ。スタッフも全員来れるかどうか……遼。お前はどうする」
27
遼「手伝え、って言わないんすね」
28
ゲン「今回ばかりは、金が出ねぇからな。やりてぇやつが集まってやる。それだけだ」
29
脳内に、火花が奔った。
※BGM 挿入曲『STOP STOP STOP』 カットイン
29
それだ。今のが答えだ。
エンターテイメントの価値は誰が決める? ……自分だ!
30
遼「……やります!」
※SE背中を叩く音
31
遼「いっ……」
32
ゲン「よく言った。頼むぞ」
33
AAA(ノーネーム)のスタッフTシャツに、再び袖を通す日がくるなんて思いもしなかった。
ま、俺にできる仕事はゲンさんの雑用くらいだけどな。このライブ、絶対成功させたい!
※BGM ボリュームアップ→フェードアウト
※場面転換
※SE 夜の音 フェードイン
38
ラストライブまであと3日。AAA(ノーネーム)からの帰り道、ミコトが言った。
39
ミコト「やっぱり寂しいな。AAA(ノーネーム)、好きだったんだよね。おじいちゃんのライブハウスだからってのもあるけど……」
40
遼「……なんか、こう……残せたらいいよね。写真とか、映像とかで」
41
ミコト「うん……」
※SE フェードアウト
42
家に帰った俺は、『自分探し資金』の封筒を握りしめて考えた。今こそ、この金の使い時だ。
かわいい彼女の願いを叶えられるなら。それに、ゲンさんだってきっと喜んでくれる。
45
ネットで調べた業者に片っ端から連絡した。写真屋、ビデオ業者、ついでに取材に来てくれそうな音楽メディアまで。
だけど、2日後に予定が空いている業者はほとんどない。そもそも、封筒に残っていた『自分探し資金』では到底足りない。
46
だったら今、俺にできることをやるしかない。
※SE 電話をかける音
47
遼「もしもし、兄貴? ちょっと相談していい? 安くて性能のいいカメラを買いたいんだけど」
※場面転換
※SE ライブハウスの準備中の背景音
48
ラストライブの日。
スタッフたちは束の間の再会を喜びながら、着々とステージの設営を進めていた。ミコトは専門学校の友人たちとともに、軽食やスイーツの搬入をしている。祭の準備って、なんでこう、わくわくするんだろうな。
49
俺はフロアを歩き回り、撮影ポジションを考えていた。スタッフやバンドの邪魔にならないのはどこだろう、と考えながらうろうろしていると、ゲンさんが言った。
50
ゲン「遼。お前、そんな立派なカメラ持ってたか?」
51
遼「ひひっ、いいでしょ。昨日買ったんす」
52
ゲン「今日のためにか? いくらした」
53
遼「別に、今日のためだけじゃないっす。ちょっと、カメラはじめてみようかな~って」
54
ゲン「……夢中になれそうか?」
55
遼「わかんないっすね。やってみないと」
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ゲン「はっ。だよなぁ。……三脚使え、腕がもたねぇぞ」
57
遼「はい!」
58
倉田「あのー……すいません。こちら、鈴野遼さんっていらっしゃいますか?」
59
遼「はっ、はい! 俺ですけど」
60
倉田「あ、お世話になります。昨日ご連絡いただいた、ミュージックラビッツの倉田と申します」
61
遼「えっ!? あ、音楽メディアの?」
62
渡された名刺には、「音楽ライター/取材カメラマン」とあった。昔、ここの常連客だったそうで、個人的に閉店ライブを取材したいとのこと。
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遼「ぜひ、よろしくお願いします!」
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倉田さんは気さくに笑って、さっそく店の外観を撮影しにいった。
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遼「音楽ライター……こういう仕事があるんすね」
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ゲン「他のメディアだが、うちにもよく来てたぞ。インディーズを取り上げたり、ハコの情報をまとめたりな。日陰で一生懸命がんばってるやつらを見つけては掘り出して、日の目を見せてくれるんだ。ありがてぇよ」
67
遼「がんばってる人を応援する仕事、か……」
68
右足首に、ぐっと力が入った。
なんだろう。なにか、ヒントをもらえた気がする。
夢中になれそうなもの。右足首の未練を、振り払えそうなもの……
69
遼「あっ、すみません! 取材とか、勝手なことして」
70
ゲン「いや? 好きにやればいい。ほら、もう客入れるぞ」
71
遼「はいっ!」
※SE 扉を開ける音(重厚、防音扉)
※SE ライブ待ちのざわめき
72
重い防音扉を押し開ける。
AAA(ノーネーム)にゆかりのあるミュージシャンたち。扉の前で写真を撮っているのは、長年通う常連客だろうか。先日、ここで公演をした劇団の人たちも来てくれた。
焚火を囲むかのように、この場所には人が集まる。AAA(ノーネーム)という火が消えるのを、惜しむ人たちばかりだ。
73
遼「お待たせしました! AAA(ノーネーム)ラストライブ、入場開始します!」
※BGM ED『ナミダと、涙。』 カットイン→フェードアウト
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