【短編小説】愛想のいい男・25枚 (電子書籍の落丁分を無料公開)
(本稿は『短編小説「目撃者たち」他四篇』に含まれるはずの原稿でした。1話丸ごと誤脱させてしまいましたので、デジタルスタッフが責任を取ってここに公開します。本文 9,623字)
「愛想のいい男」
あまのじゃく子
くぐもった空の下、悲しげな犬の泣き声が聞こえてくる。二月も半ばを越え寒い日が続く。日中の気温もほとんど上がらないまま、夕暮れの刻をむかえた。
居間のエアコンは、昼過ぎからつけたままにしてあるが、隣の私の部屋までその暖気は届かない。設計の都合で五・五畳となった自室