当時名前も知らなかった伊坂さんのこの作品を手に取った理由。パッと思い浮かぶのは、表紙にすごく惹かれたことだ。かわいい緑色の車と「本小説は車が主人公です」という文字。気づいた時には伊坂さんと緑デミの虜になっていた。 この本の一番面白いところはやっぱり車どうしの会話だと思う。 「ワイパー動くよな。」 へえ、興奮するとこう言うんだ! 「ブレーキペダルとアクセルペダルが逆に取り付けられているかのようなやつだな」 確かに、極悪人を例えるのにはいい言葉かも! 他にもミスター・
今回紹介するのは町田そのこさんの『52ヘルツのクジラたち』。この作品のことはテレビなどで紹介されているのを見て知った。最初はテーマが重そうで近付き難かったが、本屋大賞を受賞されたことをきっかけにチャレンジしてみようと思い購入した。 まず、始まり方が「海」みたいだった。村中さんたちとのコミカルな会話があったのも束の間、お腹の傷や過去の話が主人公の孤独感を漂わせてくるこの感じ。浅瀬からだんだんと深い海の底に引き込まれていく気がして不思議な気持ちになった。キナコが少年52と出
今回は私が尊敬する辻村深月先生のデビュー作『冷たい校舎の時は止まる』を語ろうと思う。本当に大好きな作品だ。 私が初めてこの本を読んだのは2年前のの秋ごろ。今日が2度目の読了となった。同じキャラクターで同じストーリーなのに、感じることの量が前回とは桁違いだった。そういう面でも、辻村先生の作品は本当に驚くことばかりだと実感する。 まず、この本の1番の良さは脇役が1人もいないことだ。校舎に閉じ込められる8人の高校生全員が、多かれ少なかれ想いを抱えている。自分のことも、他人
私にとっての『かがみの孤城』は一言で表すと「宝物」だ。語りたいことが本当にたくさんある。 まずはオオカミさまのことを話したい。私が1番大好きなキャラクターだ。「逃げるな!」とこころにタックルした時の尊大な口調や「…ピンチだったから」とアキを助けた時の気遣うような口調。どんなオオカミさまも私に寄り添ってくれた。彼女のおかげで奮起できたし、肩の力を抜けた。恐ろしく見える狼面で隠された彼女の顔はどんな表情を浮かべていたのだろう。読んでいる途中、ふと考えた。でも、ラストシーンを