鍵を渡す。
怪我をしてしまった冨士さんは少しずつリハビリを頑張っている中で、車を運転する許可が出たらしい。
しかし1人で運転していては何かあった時に対処してくれる人間がいない。
親に付き添ってもらいながら車を運転していかなければならないとのことだった。
古民家へいつ来れるかは分からないが、もし運転できるようになった時のことを考えて、冨士さんに家の鍵を渡しておくのが良いだろう。
日曜日の朝に会おうと約束した。
待ち合わせの場所はお互いの家のすぐ近くにある公園だった。
小学校の時にで一緒に登校するために集合していたのもその公園で、2人とも地元では馴染み深い場所だ。
朝8時45分。
公園の入り口に冨士さんを見つけた。
ハグを交わし、喜びを分かち合う。
生きててよかったよ。
私はその後予定があったので、挨拶もそこそこに分かれたが、冨士さんが元気そうで何よりであった。
不動産屋さんから貰った鍵にはなぜか元からダルマの鈴が付いていた。
おそらく大家さんがつけた物だろう。
ダルマと一緒に、その鍵には住所の書いたプレートが付いていた。
これ、鍵を落としたら住所丸わかりで怖くないか?と思う。
私はそこから2つの鍵がある片方だけを抜き取り、別のキーホルダーにつけて使っていた。
冨士さんには残りのプレートとダルマ付きプレートを一旦そのまま渡しておいた。
ダルマというのは縁起が良い。
倒れてもひとりでに起き上がれる強さを私も見習いたいものだ。