臨床工学技士の学校選び① | 養成校と科目指定校
いのちのエンジニア ー 臨床工学技士は医療機器を通じて「いのち」を支える存在です。医師や看護師といった医療の国家資格のひとつで、今の医療には欠かせません。そんな大切な役割を担う臨床工学技士になるにあたり、どのような視点で学校選びをするとよいのでしょうか?
大学と専門学校はどちらがいい?立地は?偏差値?国家試験の合格率?他には何を比べればいいの?学校を選ぶためには様々な要素がありますが、その中でも、特に大事にしてほしい視点をご紹介したいと思います。
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臨床工学技士の学校には大きく2種類あるのをご存知ですか。この2種類というのは大学か専門学校かということではありません。「養成校」と「科目指定校」と呼ばれる分類です。
もちろんどちらの学校でも臨床工学技士になることはできますが、どちらを選ぶかによって学びの環境がずいぶん違ってきます。今回は臨床工学技士を目指す人が2種類の学校のどちらを選択したらよいか判断できるよう、情報提供の場となればと思っています。
1.臨床工学技士 2種類の学校とは
臨床工学技士の学校には4年制の大学と3年制の専門学校があり、高校卒業後にこれらの学校に進学し、臨床工学技士として必要な専門知識や考え方を学ぶことになります。なお、下図には短大(3年)の記載がありますが、現在のところ該当する学校はありません(2025年1月時点)。
さらに、臨床工学技士の学校にはもうひとつの分類があります。それが「養成校」と「科目指定校」と呼ばれている分類です。これは臨床工学技士法の第14条にある国家試験の「受験資格」によって分類されているものです。
第14条の第1号が「養成校」、第4号が「科目指定校」に相当し、今回はこれを2種類の学校と表しています。ちなみに法律では第2号と第3号の学校についても定められていますが、高校卒業後に臨床工学技士の学校に進学する人には現在該当しない学校ですので割愛します。
2.「養成校」と「科目指定校」の違いは?
養成校と科目指定校の違いを簡単に表すと以下のようになります。
🔵養成校
臨床工学技士の学校として一定の施設基準※を満たした学校で、卒業時に全員が国家試験の受験資格を得ることができる。
※臨床工学技士学校養成所指定規則、臨床工学技士養成所指導ガイドライン
🔵科目指定校
通常の大学卒業に必要な単位を取得し、追加で指定の科目※を履修した学生のみ卒業時に国家試験の受験資格を得ることができる。
※厚生労働大臣の指定する科目
養成校に求められる施設基準というのは、臨床工学技士になるための最低限必要な教育環境を整えるという意味があります。この施設基準の例を下表にまとめてみました。
養成校であればこの施設基準に適合している学校ということになります。(表現を変えれば、科目指定校は適合している必要はありません。)
なお詳細な施設基準は下表のリンク先よりご覧になれます。
科目指定校で国家試験の受験資格に必要な指定科目は26科目あります。これ全てを追加で履修するということではなく、一部は必修科目に含まれています。卒業時にこの指定科目すべてが履修できていれば、国家試験の受験資格を得ることができます。
(表現を変えれば、指定科目を履修できなくても、国家試験は受けられないが卒業できるということになります。)
なお、こちらに挙げた指定科目は養成校で必修科目として学習することになります。それぞれの科目で行う内容も定められており、養成校と科目指定校で学習内容に違いはありません。
3.メリットとデメリット
養成校と科目指定校はそれぞれの特徴があり、どちらが優れているかを判断するには、これらの学校に入学しようとする人それぞれの目線に立って見極めなくてはなりません。誰から学ぶのか、誰と一緒に学ぶのか。受験資格を得られればいいのか。学校によって全く環境が異なります。
以下は私の考えになりますが、臨床工学技士になるための学校選びをする際の、養成校と科目指定校のどちらがよいかを判断する材料としていただければと思います。科目指定校の教育環境について、一律に養成校より不十分だということを言うものではありません。実際の教育環境については養成校と科目指定校の両方を実際に見比べることが必要であると考えます。
🔵養成校のメリット
・必要な教育環境が整備されている(設備、備品、臨床工学技士の専任教員数など)
・卒業に必要な科目を履修すれば国家試験受験資格を得られる
・クラス全員が臨床工学技士になろうというモチベーションを保てる
🔴養成校のデメリット
・臨床工学技士になるための科目を履修できなければ卒業できない
・進路変更が難しい
🔵科目指定校のメリット
・臨床工学技士にならない選択がしやすくい(進路変更等)
・指定科目が履修できなくても卒業要件を満たせば卒業できる
🔴科目指定校のデメリット
・臨床工学技士である専任教員が少ないなど、教育環境が養成校と比べて不十分なことがある
・指定科目を履修する人としない人のモチベーションが異なる(指定科目を履修する人の方が大変)
・国家試験に合格できそうにない人は、国家試験受験資格なしで卒業させられる可能性がある
4.まとめ
最後までご覧いただきありがとうございました。
今回は、いのちのエンジニア ー 臨床工学技士になるための学校選びに必要な情報として、養成校と科目指定校についてご紹介しました。
どの学校が養成校か科目指定校は、学校案内やホームページを見てもわからないことがあります。その場合、以下から確認することができますので、ご活用ください。
一般社団法人 日本臨床工学技士教育施設協議会
日本の臨床工学技士教育を行う学校の団体です。
公益財団法人 医療機器センター
臨床工学技士の国家試験業務を行う機関です。
臨床工学技士だけではなく、すべての医療職に当てはまることですが、学校選びはその後の人生を左右する大きな選択になります。やり直しはできません。そのためには、それぞれの学校の特徴をきちんと見極める必要があります。立地や偏差値、国家試験の合格率というのは分かりやすい要素ではありますが、医療職の学校選びにはそれ以外にも重要な要素があります。これからもこういった要素をご紹介していきたいと思います。