【自作ショートショート④】その名が世界を変えた──ブランドとネーミングの力
その名が世界を変えた──ブランドとネーミングの力
名前とは、一見するとただの符号に過ぎないかもしれない。けれども、一度世に送り出されるや否や、その製品の運命を左右する決定的な要素となり得る。私たちは、無意識のうちにその名前に感情を重ねたり、親しみを感じたり、時には抵抗を覚えたりするのだ。
思い浮かべてほしい。「iPod」がもし「Sound Square」と名付けられていたらどうだろう?スタイリッシュな未来感が少し曖昧になり、なんとなく平凡な電子機器の一つに埋もれてしまうかもしれない。あるいは、「Walkman」という名が別の候補であった「Soundabout」として発売されていたら、果たしてあの時代の若者に、あれほど強く「自分だけの音楽空間」を提供できただろうか。歴史を刻む名前には、それ相応の意味や感覚が込められている。
名前とは、単にラベルではなく、その製品が持つ価値や夢を凝縮した「物語」そのものである。そこにはブランドのビジョン、消費者の期待、そして文化的な背景までもが交差し、時には一つの国や時代に深く浸透する力がある。この本では、ネーミングがいかに製品の成否を分け、私たちの日常や歴史にどのような影響を及ぼしてきたか、そのエピソードを紐解いていこうと思う。
オゲレツ お珍歩大魔神 著
『その名が世界を変えた──ブランドとネーミングの力』
まえがき、より抜粋