─学園生活と成り上がりの相性は如何に?─ セレクトオブリージュ 長文感想
私、まどそふとの作品をやる時は必ず「ナマイキデレーション」か「セレクトオブリージュ」にすると決めているんですよ。
理由は明白で、ただ単にワガママハイスペックやハミダシクリエイティブでのスタートにしたくないからです。
まぁ今のまどそふとファンでナマイキデレーションやヤキモチストリームをやってる方が少数だと思うので、その少数の仲間入りしたいという気持ちが強いのが本音ですね。
決してワガハイやハミクリが嫌いなわけではないです。
むしろその逆で気になっているレベルですから。
話を戻しまして、ナマイキデレーションとセレクトオブリージュのどちらをスタートにするかで本作をチョイスしたわけですが、実質まどそふとではないのでノーカンでも良いんじゃないかなと思っています。
だってまどそふとのスタッフが殆ど関わっていないのだから(実際関わったの男性キャラのデザインのみ)。
とはいえ、まどそふとの作品として出す以上カウントせざるを得ないのでここは従って初まどそふとということにしましょう。
本作「セレクトオブリージュ」はkuwa games様外注による反逆の成り上がり学園恋愛ADVとされています。
その情報が出てからは、何故kuwa gamesさんとしてではなくまどそふとの作品として出すのかという疑問しか頭によぎりませんでした。
周りの反応も微妙寄りとなっていますし幸先不安しかありませんが、キャラの可愛さに触れてまどの作品として相応しいのかの確認をしながら√ごとの感想を述べていきます。
○各√ごとの感想
・共通√
印象に残ったのは3箇所あり、その1つ目はファイブに迎えられ、ワン・ズ・ギフトという素晴らしい権利を持った主人公が桜元学園に入学するまでの流れ。
今後の展開の期待させますね。
そこからワン・ズ・ギフトの説明→桜元学園のポリシーと奏命達の目的→トウリとの再開、の様にトントン拍子で話が進んでいくのですが...ここは普通と言ったところでしょう。
ただし主人公の爆弾発言にはドン引きしました(突然の結婚してくれ、パンツ見せてくれ)。
かなり大事な部分のはずなのに露骨にその発言をしたのは何がきっかけなのかの説明が欲しいところです...と言いたいところだけど、これも主人公と珠賀良区での過去で説明がしっかりとされてあるのでクスッと笑える場面でもありましたね。
2つ目は、キャラを成形させる背景の匂わせ。
・くくるは親を亡くした過去を持っており、それによって研究に没頭しすぎた結果、人との関わりに壁を作ってしまっている。
・イヴは奏命にお近付きになれないのは才能がないからだと思い、自分の才能とは何かと頭を悩ませている。
・奏命は真の天才だが、それは奏命1人で出来たことでは無い。1人でいる事の脆弱さを知っていてもなお...
とこのように、通常会話の中で個別√関連のチラ見せをしてくるのが、プレイヤーの期待感を高めさせる良い描き方だなと思いました。
特にくくるは、サブの一ノ瀬七とメインのトウリによってだんだんと心を開いてくれてますしね。
イヴは最初に主人公に会った事もあってか、心を開くタイミングはやや早めだったように思えますし。
3つ目は、獅童龍司が辿る末路。
こいつがとにかくヤバい!
声優はぬきたしの手嶋でお馴染みの椨もんじゃ氏なのですが、彼の演じる外道っぷりをここでも見れるとは...と複雑な気持ちになりました。
話を戻しまして、龍司が実際に行った悪行は下記の通りです。
・テイオー1人を相手に複数人でカツアゲと暴行事件を起こす
・主人公が気に入らないのか露骨に冤罪をふっかけてくる
・ワン・ズ・ギフト不正疑惑で警察に監禁させる
と、まさにクズ行為のオンパレード!
なんでこいつ風紀委員やってんの?
もしかして風紀委員は風紀を平気で乱す輩しかおらんっていう印象操作しようとしてる?
何だろう、マイナスな方面で印象づけるのやめてもらっていいですか笑
まぁ冤罪をふっかけるのは主人公の策によって失敗して風紀委員をクビにさせられるし、警察に監禁云々はイヴと奏命に居場所を特定されて詰むという社会的制裁を喰らいましたし。
あんだけ外道っぷりを見せられたのに結局最後まで奏命の犬で終わってたので、正直あまりスカッとはしなかったですね...。
彼が何故ヘイト収集係になってしまったのかの背景も少ししか書かれていないので、今後の√でどのようにして描写していくのかに期待するとしましょう。
全体的に見ると、後半がややゴリ押ししてる感が大きく残りましたね。
そもそもヒロインとの距離感に不自然さを覚えるし、奏命が主人公の事を本格的に気にかけてくれるのもどういう風の吹き回しなんやろか...というのが本音です。
警察への拷問シーンもなかなか胸糞だったけど、なぁんか既視感あるなと思ったらコイツ、ニード・フォー・スピード ヒートに出てくる汚職警官のショー巡査枠だったのね?
なんとか主人公は助かったけど、これ主人公の力ではないから反逆の成り上がりとしては成立してるとは言えないし...まぁイヴに最後の切り札を託したシーンがあるからそれで許してねって感じなんでしょう。
それでもカタルシスレベルの盛り上がりは感じられなかったですけど。
スラム街生まれって時点で相応な警戒をされるかと思ったら、予想以上に興味を抱かれてるし(特にイヴと奏命)でお話が上手く進みすぎてる印象が強すぎる√だったなと思えました。
ほとんどの問題がこの√だけで完結しているので、個別√はイチャラブメインになるわけですが...微妙な印象を拭える事ができるのかと少しの期待を持って個別√の感想と行きましょう。
その前に最後に1つ言うとすれば、温泉旅行でのボードゲームと裸の付き合いは緩和された雰囲気の仲良しこよしで楽しめたし、奏命の真の目的と主人公のターニングポイントは本格的に次のステップへ進む準備期間に思えてワクワクしてきます。
シナリオへの不満はあれど、ヒロイン同士のイチャイチャは満足なので中和は出来てると思いますね。
・一色奏命√
キャラ43/シナリオ37
奏雨さんといえば「千の刃濤、桃花染の皇姫」のエルザの印象が強いですが、ボスの雰囲気とカリスマ性を声で出せているのは奏雨さんならではの演技力だと思っています。
ボス故に孤独感を抱き、一色家の当主としての未来(跡継ぎ問題)の不安を心に秘めた彼女が求めたのは、一色家に相応しいステータスを持った男。それが主人公だったわけですね。
これは共通√のラストの選択肢前に奏命の口からも発せられています。
実際には回想シーンですが、下記の通りとなっています。
「共に歩む伴侶、興味を刺激してくれる男、か...」
「人は1人では生きられない。だから一色家を共に背負える男を探していた」
「けれど頼れる背中はなく、頼れると思える相手は女だった」
「でもそれでは子供が作れないから、一色家を繋いではいけない」
「自分が老いていくのは止められない。だから忸怩たる思いを抱えていた。そんなところか?」
主人公を欲さんがためにグイグイと食いついていく系になっていたのも納得のバックボーンでした。
そこからはキャラゲーらしくイチャラブ展開をしていくのですが、正直この娘はあまり刺さらなかったですね...。空と花の盛り上げが無ければずっと真顔で進めることになっていたのでそこには感謝です。
ただこの√は問題も抱えています。
それは何かと言うと奏命が主人公と共に一色家を背負う宣言をした後にバアさんが物申すシーンなのです。
本√は今まで全く出番のなかった葦華真智というサブキャラがいるのですが、彼女が学園長兼主人公の実質母親であることが判明します。
その後はくくる√でも出たデザイナーチャイルドであること、国がなんらかの研究で作った子供達を利用していたこと、バアさんが何かしらの手段で主人公達を引き取りビーチ・フィールズを開いて育てたことが芋づる式に彼女の口から発せられます。
ここでは触れていませんが、なんらかの研究というのは恐らくオートマタ関連の事なのでしょう。
話を戻して何が関係しているのかと言うと、デザイナーチャイルドとして生まれた主人公は生殖機能が著しく劣っており、子供を作ることは非常に困難を極める状態にあります。
それを宣言後に物申すのですが、解決の仕方がおかしいと思うのですよ。
ではどういうふうに解決したのかと言うと、奏命は「ヴァルハラの最先端技術でなんとかするから大丈夫」的なことを、主人公は「それでも子供は最低でも3人以上は産む」みたいなことを言い、バアさんをそれで納得させたという所ですね。
...いやいや主人公話聞いとった?それでも産むじゃねーのよ。
生殖機能を何とかしないと出来ないって言ってたよね?
バアさんもバアさんよ。
最先端技術があるって一言だけで何信用した気になってんの?最先端技術があるから何?失敗しないとは限らないよね?
そのリスクもあるということはバアさんが知らないわけがないんですよね。
なのであれで納得したというのもおかしな話をだと思うんですよね。
それにどういう風にして主人公の生殖機能を復活させるのか、その提示もさせてこそ納得感出せよって思うのは自分だけでしょうか?
それ言ったら今までのHシーンはなんだったんだって言われそうだけど、一応目を瞑ることにして...。
まぁおまけシーンで生殖機能が良くなってボテ腹Hするに至ったのは、個別√の補填として十分に機能しているので良いのですが...その過程元い奏命とバアさんとの衝突はもう少し書いて欲しかったなと思いました。
・蓼科イヴ√
キャラ48/シナリオ28
全体的にテンポが悪くて微妙に感じられた√だと感じました。
主人公好き好きな秋野花さんを愛でられるのは大きいけど、それ以外に良かった点を挙げるとするのであれば「才能と環境」をテーマにしたお話くらいでしょうか。
まずイチャラブの描写ですが、共通√からとにかく主人公の事を気にかけてくれます。
まぁそれだけならキャラゲーあるあるなのでまだ許容範囲なのですが、その理由等が全然書かれていないからか、そんなに感情移入出来なかったのが心残りですね。
ただ珠賀良区でのシーンやゲーセンで楽しむ場面は面白かったですよ。
あと告白はイヴからしてきたのに、主人公があの手この手で決断を遅らせたのは正直長引きが過ぎますね。
家族や仲間想いなのは伝わるけど、自分の気持ちによる葛藤を書くなら早めにくっつかせた方が読み手としても満足させられるのではないでしょうか。
主人公の鈍感さも程々にすべきなのでしょうね。
次に題材に沿ったシナリオ。
だいたいは汐莉の「才能のないあなたが恋に溺れて、努力を怠った結果がこれです。」という台詞から始まったのですが、サブキャラながらも良い仕事をしてくれてましたね。
結論から言うと、汐莉のポジションは「対比として描かれたもう1人のイヴ」という認識で間違いないでしょう。
汐莉はイヴを尊敬するがあまりに主人公に対してやたらと警戒と妨害をしてくるのが良い匂わせでしたね。
注意されてからは敵意をイヴへと変えるのですが、ここで敵として書かれる彼女の背景が浮き彫りになっていきます。
汐莉は母に言われて空手を始め、その優れた身体能力を得て様々な結果を残していきました。
母はそれを父からの遺伝なのだと喜んでいたのですが何らかの理由で他界してしまいます。
母の死を境目に、汐莉は一層空手にのめり込むようになりました。
全てはあの人に認めてもらうために...。
ここでいう"あの人"というのは汐莉の父元いイヴの父の事を指します。
汐莉が空手をやるように武術を極めるという点でいうとなんとなく繋がりが分かりますね。
汐莉はあの手この手を使って優秀である力を手に入れたけど、父に認めてもらう事は出来なかった。
言葉を悪くして言うのであれば、見捨てられたということでしょう。
だからこそ恵まれた人間であるイヴが気に入らなかったと認識して、嫉妬心を燃やし続けていたのだと思います。
そんなイヴに接触して補佐に入ったのはイヴの真っ直ぐな言葉に救われたから。
イヴを尊敬してる理由と主人公に敵意を向ける理由が一気に浮き彫りになる描写でした。
イヴの信頼を勝ち取るまでには至ったものの、主人公との恋愛に現を抜かしたことにより汐莉の嫉妬は憎しみへと変える、と√としての本番はこんな感じでしょうか。
居場所をまた無くしたと思った彼女の心境を考えるとそうぜざるを得なかったのかなとも読み取れます。
ただ汐莉がイヴに勝つシーンは一方的で、イヴの努力描写もやたらと不足している事からパンチが弱いのも大きく目立っていましたね。
そんな彼女があっさりと運動部総括の座を譲り渡したのも不自然でした。
そりゃあ汐莉もイヴの事を見かけ倒しって認識するよ、同情するわ。
よくよく考えたら汐莉の背景と行動って言うのは本作の反逆の成り上がりというコンセプトにしっかりと沿ってるんだよな...なにせあの背景で全てが語られてるし、なんでそれを主人公がやってないの?
もしかして汐莉で反逆の成り上がりを、キャラゲーのイチャラブを主人公に担当させる役割分担形式で話進めようとしてるのかな?
イヴは父の遺伝を受け継げなかったけど整ってる環境で努力を惜しまなかったことが書かれてるし、汐莉は父の遺伝を受け継ぎ1人で地べたを這い上がってでも桜元学園へのチケットをもぎ取らんと努力している事がしっかりと書かれています。
冒頭で汐莉はイヴの対比として書かれていたとありますが、まさにこの書き方がそうなのだと思います。
汐莉の背景を説明するシーンで才能を種に例えるのも粋でした。
種にも善し悪しがあり、その成長過程にも環境や努力次第では枯れることも良い花が咲くこともある。
強い自分を形成しているのは種からでは分からないということなのでしょう。
話を√へと戻してその後はイヴは自信を取り戻し、汐莉へのリベンジマッチにも成功→汐莉と和解して異母姉妹と判明、父の不倫で亀裂が生じていた→実父と話してくる。
と展開も進んでいくのですが、試合後とはいえあれだけスラスラと喋れたのに急に寝るというのも不自然さを強調していますね。
それやったら喋ってる合間に眠い雰囲気を声で表すなど工夫のしようはあったはずですが。
おまけシーンの書き方も正直納得いってません。
そもそも唐突の異母姉妹設定や父の不倫展開にしておきながら、なんで解決前にED迎えて無理やり終わらせた感出したん?
本来ならエピローグで解決して万々歳で良い所も全ておまけに詰め込みましたからね。
おまけ部分は追加Hだけでいいんだって。
これはテンポ云々より書き方の問題が目立ってしまったケースでしょうね。
・夜刀くくる√
キャラ46/シナリオ36
オートマタの研究とくくるの恋愛描写が上手く噛み合っていた√だと感じました。
キャラゲーとして成立させるあまり、圧倒的な財力を誇るエンジニアと言うよりは作中唯一のロリ気味ヒロインという印象で埋もれてしまったことが気がかりでしょうか。
さてイチャラブ展開に関しては、研究に全てを捧げてきた為に感情を表に出せなかったくくるが人間味のある娘に成長して行く過程が見所ですね。
モンステラ開発の為に性行為を持ちかけてきたり、何よりあれだけ興味を示さなかった主人公に好意を抱くもその1歩が互いに踏み出せないという焦れったさも粋でした。
早くくっつけよとは思いますが、あえてそうしなかったのがシナリオ面の活躍でしょう。
ここは上手く噛み合ってましたね。
肝心なシナリオ面ですが、「くくるはファイブの人格を形成するためのデザイナーチャイルド」とされ送信機として感情を抑制されるという特徴があり、その性質が損なわれないようにと里親に預けられ管理されるという落とし所が全てでした。
所謂奴隷に近い扱いをされてると言っても過言ではないでしょう。
ファイブの視点で考えてみたら見せしめにイチャイチャを見せられるようなものなので、共通√での主人公との関わりを上書きされたくないという抵抗心もあったのかもですね、知らんけど。
七の放つ「オーバーテクノロジーの正体が人間を利用したシステムだったとはな。これだから政府の研究者は好きじゃないんだ」という言葉もかなり重要でしたね、くくるに焦点が当たっているが故に流されやすいくらいで。
トウリから食事の楽しさを、主人公からは交流を得て感情が豊かになったのは良いものの、その代償としてファイブが壊れてしまった所までも合わせて匂わせもなかなか良かったです。
やたらと家族のことを話そうとしないのも、家族を大切にする主人公と対立しようとするのもかなり説得力あると感じました。
しかしながら、こんな奴隷じみた事をして政府と義両親にはお咎め無しというのはどうなんでしょうか...。
まぁ義両親は死んでるのでそれでチャラにしてねってことなんでしょうけど。
政府に嗅ぎつけるには流石に学園物の範疇じゃないから勝ち逃げせざるを得なかったのでしょうね...。
オートマタによる生まれと闇を聞かされ、修理が済んでくくるの元にはファイブとモンステラという家族が増えてハッピーエンドを迎えるのですが...これも都合よく行き過ぎてる気がします。
一色家のガードが功を成してるのは百歩譲るにしても、ファイブの上書き云々は無かったことにされるしでここのシーンももうちょっと説明が欲しかったかなぁと感じました。
個人的に拭えなかった疑問点が1つあるのですが、それは一ノ瀬七というサブキャラの存在です。
エロストークが終わった後に七が「もう長くは生きられない、だから新たなオートマタの創造だけに注力してきた」と口にする場面があり、それはくくるにも匂わせていましたね。
なぜこの設定を出したのか、そもそも不要では?という気持ちがEDに来ても残ったんですよ。
自分では気が付かなかったのですが、他の人の考察を見てそういう事だったのかと口にしていました。
本√は「風が吹けば桶屋が儲かる」という言葉の通りに展開されており、くくるの恋愛事情を描きつつ一ノ瀬七というもう1人のオートマタも裏で動かしていたのですね。
いや分かりづらいわこんなの。
ファイブのロック解除や修理したりで本領発揮したのは分かるけどそりゃ気づかん人も出てくるでしょ。
ん?ってことは七っていう名前もファイブも数字関連だから隠れオートマタっていう設定で通そうと思ったってコト?
√としては後半になるにつれて主人公が置いてけぼりになっているので、総括で良√かと言えば微妙でしょう。
逆を言えば前半が悪くなかっただけで。
・トウリ√
キャラ47/シナリオ24
先生、書かないと来週で打ち切りですよ〜って迫られでもした?ってくらいに展開が雑に感じられた√でした。
こんなのでカタルシス求められても無理やろ。
まずトウリは桜元学園のエリートではない、この時点で主人公の目的の対象外であることは明白でしょう。
そこで√として書くのには、妹と珠賀良区という要素を引っつけるしかないわけですから。
その一方で、共通√からの繋げ方が上手いようにも感じました。
というのも、実は共通√にて回想シーンの「トウリをなだめる」の選択肢で1度主人公とおっぱじめてるんですよ。
エロ本じゃなくて私がお兄ちゃんを気持ちよくしてあげる...からのHシーン、これはオカズにしては最高でしたね。
この時点でトウリは主人公の事を男として見るきっかけにもなっているが、妹分として自分の気持ちを出すに出せずと蓋をしているという背景が書かれているのです。
こういうケースは、ハイスペックな三人の土台に立てないならではの処置とも言えるのでしょう。
本√は、奏命が主人公を手に入れるためにとトウリを一色家のお抱えに任命する所から始まります。
その時に奏命はトウリに「人と人を繋ぐ能力がある」と言っていたのですが、共通のくくる以外でその能力を発揮したことありますか?って思いますよね。
主人公の能力もオマケ感覚で見てただけでこいつホンマに手にする気あるん?本当はないだろって気になりますし。
そもそも主人公の能力が生かされたシーンとか共通以外で何かあったっけ?
この時点で色々とおかしいんですよね、特に主人公にずば抜けた能力がある訳では無い時点でもう無理やり感しか残らないのですから。
そんなこんなでトウリはお抱えとして将来を見据えての行動を取るようになります。それに感化された主人公も行動しようとしますが、今まで家族のためを考えてきたために自分が将来的になにをしたいのかという明白な目標がありませんでした。
そこでクラスメイトであるテイオーの存在が輝くのです。
彼はゲーム部にてゲーム作りに力を注いでおり、将来的にはゲーム作りの仕事をしたいと考えています。
主人公は当時何となくのつもりだったのでしょうが、自分のやりたい事がゲーム関連だったので実質テイオーの影響を受けたと言っても過言ではないでしょう。
最終的に主人公はゲーム作りの道をテイオーと共に歩んでいく決断を下しました。
トウリ√の表向きに書かれるお話はこんな感じですが、将来を見据えての行動というのはやるべき事とやりたい事で軸が全く違ってきますからね。
主人公の決断を下すという意味でも良い展開でした。
その傍らで妹との恋愛描写を描いていくのですが、ここは激甘ですね。
主人公をお兄ちゃんと呼び慕いながらも共通√で諦めかけていた恋心を主人公にぶつける様は、これからの関係性の変化に一石を投じたわけですから相当勇気がいったように思えます。
ゲーム作りの話は順調に進み起業まで踏み込むのですが、このお話との両立がトウリ√の土台のように感じました。
イヴのシーンもなかなかつらいものがありますね。
距離感が近すぎていたとはいえ一度は主人公に告白していたイヴですが、トウリとビーチ・フィールズを訪れた際にバアサンに武術を鍛えられたことで強さを求めるようになってからは主人公への未練を断ち切ったんですよね。
そのセリフがこちら。
「ありがと。今の答えで心が決まったよ」
「今日、先生と戦ってわかったの。私はもっと、強くなりたい」
「でも、強くなるには......今のままじゃ、だめ」
「もっと真剣に向き合う必要がある。他のものを見ることなく、強さだけを追う」
「ごめんね、凪さん。あの告白はなかったことにしてほしい」
「自分勝手なことはわかってる。でも今の私が欲しいのは強さなんだ」
(中略)
「私は自分が強くなることを選ぶ」
「今まで、血のにじむような努力をしてきた。それでも越えられない壁がたくさんあった」
「でも今なら、その壁を越えられそうな気がする。そして、いつか......」
これ一方的やし、恋を諦めて少しでも絶望するシーンがあっても良かったと思うんですよ。
まぁイヴの心身的な強さが浮き出ていたって認識で良いんだろうけど、本√だと関与しないよね。
イヴにとっての強さも分かる名シーンなんだけど、これトウリ√だって事忘れてないか?
後、トウリを恋のライバルとして認識していた時に「凪さんと一緒で地頭がいいから空気も読めるし、頭のいい人との付き合い方も出来る」と言ったシーンがあるのですが、ここも少し疑問点が。
クールで真面目系のキャラが言うのであればまだ分かるとして、イヴのようにフレンドリーなキャラが言うのに語弊があるように感じるのは気のせいでしょうか。
言わされてる感があるとの噂は龍司関連だけでなく、ここでも出ていたんですね。
問題は龍司のシーン。
外道枠だった龍司が牙を抜かれたように自信喪失する様を書くのは良いんですが、結局バックボーンについてはなんも書かれませんでしたね。
一応共通√でかるーく触れてはいたものの、全部ヒロインの口から発せられただけで表沙汰にもならなかったですし。
ただ改心させるがてらに珠賀良区の危険地帯(セクター)について語ってくれるのは嬉しいですね。
スラム街と言っても警察ですら介入出来ないレベルのものもありますから。
数字が大きいほど危険であるという珠賀良区で龍司が最深部のセクター6というエリアに囚われ、ボスに薬漬けにされそうになった所をイヴ達が助けに来てくれるのですが...ここはなんの盛り上げなくあっさり終わります。
だってやってる事はマフィアじみた雰囲気を出しながら呑気に龍司を拘束して尋問してるだけですからね。
おっかない雰囲気を出しておきながらイヴの投げ如きで倒れるし...アジトの門番もボスも弱すぎるし、主人公にスタンガン持たせてもなんの活躍もしてない、最も危険であるセクター6のはずなのになんの緊迫感もないまま戦闘が終わるのはさすがにどうかと思います。
そんなあっさり展開をもって書かれていたのは、龍司は罪の重さを知っているからこそ自分に自信が持てず、距離を置いていたという所なのです。
珠賀良区で遊び呆けていたのもわかる気がしますが...ボスに脅されていた云々の背景が全くなかったのは何故でしょうか。
あえて書かなかったのか、龍司がその弱さをまた晒したくないと思わんばかりに隠していたのか、そこも突拍子が過ぎやしませんかね?
結果、龍司に必要だったのは立ち直る場所でも、慰めあう友人でもなく、自分の罪を認め向き合う時間だったと言うことが描写されていますが...外道ポジションになったバックボーンが殆どない以上そこまで同情は出来ませんでした。
工夫のしがいはあるはずなのに、全体的にうーん残念と言わざるを得ないでしょう。
おまけHもゲーム会社企業の事が書かれてるし、そこはエピローグで良かった感もあると感じました。
トウリのバブみ要素と妹っぽさでどれだけ中和出来るかが本√の問題とも言えますね。
○読み終えて思ったこと
・作品のコンセプトの是非
突然ですが、公式サイトにあるINTRODUCTION欄からの引用ながらも本作のコンセプトとポイントをまとめてみましょう。
本作はスラム出身の主人公とエリートだらけの名門校を舞台とした、学園生活×成り上がりストーリーが楽しめるものとなっています。
その中でも「身分違いの恋」と「カタルシス」、「豊富なHシーン」の3つのポイントが特徴です。
まぁ豊富なHシーンに関しては、原画を担当する柚子奈ひよ先生の描く絵はあどけなさがあって可愛いので、特に巨乳ヒロインによるHは期待出来ますね。
ただ問題となっているのはこのカタルシスの部分。
そもそもまどそふとの作品ってヒロインとのイチャラブをメインに書いているのが殆どですよね?
舞台とキャラを成形する上での背景、そしてカタルシスを引き起こす程の展開が噛み合ってこそ真のカタルシスが出来上がるというのが私の認識でいます。
では本作はカタルシスを強調していたようですが実際にプレイしてみるとどうでしょうか?
大体の展開は予想できるし「オホー!盛り上がってきたなぁ」とはなるものの、盛り上がって印象には残るだけでカタルシスとまでは行かないのが殆どです。
身分違いの恋に関しては、ハイスペックな身分である娘とそうでない主人公の対比も表れています。
その中での恋愛描写を特徴として捉えているのですが、彼女たちはそれを忘れるほどにイチャラブしてくるんですね。
ヒロインは高嶺の花として書かれているのですが...正直イヴと奏命による距離の縮め方が早すぎて色々と都合よく行き過ぎてると思うんですよ。
一応奏命は共通√でかなりのバックボーンを明かしていたのですが、それでもやり方が露骨過ぎやしませんかね?
・キャラは活用できていたかどうか
一通り攻略してて思ったのは、活用できていたキャラは片手で数えられるくらいしかいなかったという所ですね。
Ⅰ.まず一色奏命は人を寄せつけないタイプのクールカリスマ会長となっていますが、学園の学生会会長という立場での活躍より一色家としての活躍が多かったですね。
主人公への距離の縮め方も不自然さを覚えましたし、そもそも起きる問題のスケールが大きすぎて学園の範疇でどうにかなる問題じゃない時点で設定すらも活用できてないのです。
Ⅱ.蓼科イヴは主人公の何に触れて興味を持ったのかと、どういう努力をしてきたのかが具体的に書かれてないように見えます。
奏命同様距離の縮め方に雑さがあるし、お偉いところの娘ながらちょっとフレンドリー過ぎるのが引っかかりました。
Ⅲ.夜刀くくるは良かったですね。
家族を大事にする主人公と家族を失ったくくるだからこそ描ける、共通√で縛られてるシーンはお互いの価値観に一石を投じる名シーンでした。
トウリ達によってオートマタ研究以外の楽しさを見出させるという心の開き方もナイスです。
Ⅳ.トウリは龍司に取られてしまった印象です。
だって主人公の目標の対象外だし、家族ながらに異性としての好意を抱き続けてるというよくある設定ですからね。
人あたりの良さでなんとかカバー出来てる感がどうしても歪めなく、トウリだからこそできる個性も具体的に描写されていないので、その3つの点を持ってしても足りなかったのが非常に残念です。
Ⅴ.ファイブはなんでヒロインじゃないんですかね。
くくる√での伏線回収係として活用してくれたくらいで、主人公と別行動したりクラス内に入ったりと少し謎もある娘でした。
Ⅵ.北条姉妹は奏命の従者として主人公への接し方が丁寧でした。
出番を取りすぎず出しゃばらすぎずのバランスが上手く取れていた良キャラだったと思います。
奏命が刺さらなかった分を妹の空でなんとかカバーしてくれたのが幸いですね。
Ⅶ.大屋汐莉は共通での出番が無さすぎ。
バックボーンの説明からのテンポが悪くてそんなに盛り上がらなかったです。
もうちょっと共通√でイヴへの嫉妬心を少しでも書いたりと活用して欲しかったなぁと思いました。
Ⅷ.一ノ瀬七はくくるを妹のように可愛がっていましたし、良好な仲であることが分かります。
が、寿命があとわずか設定はもうちょっと匂わせを強くしてくれ。
それやったら体調不良の描写とか活用法がもっとあるでしょ。
Ⅸ.バアさん...にしては若く見えるし名前何とかならなかったんでしょうか。
主人公の育ての親として殆どの裏方をしてくれるスーパーウーマンとして描かれており、奏命√で明かされる正体も納得が行きます。
ってかずっとシスターの服でやってたの?
Ⅹ.葦華真智の出番が殆どなかったのは奏命√のためだったんですね。
情報説明も何もなかったですし、しっかりと説明通りに活用できてたと思います。
XI.成宮帝雄はお人好しすぎ。
龍司を信用しすぎたせいでこちらも嫌悪感を引っ込めるのに苦労しましたよ本当に。
それが彼の優しさであり個性であるんだろうと受けれてはいますが...まぁゲーム会社を立ち上げるまでに未来を見ているという点は良かったです。
XII.獅童龍司はなんで外道ポジになったのかの説明が圧倒的に足りません。
一応帝雄と共に栄光を掴む日を夢見ていたという描写はあれど、真面目すぎるが故に挫折してからはひねくれネガティブ野郎に成り下がってしまったのですよね。
そこから考えを改めれば良かったのですが...暴走してあの有様ですからね。
改心するまでの流れは多少同情できるとは思いますが...少なくともトウリ√でやるべきではないです。
帝雄君、いくら龍司が昔はあんなんじゃなかったから悪く言わないであげてって言っても、背景の説明で納得させてくれないとプレイヤーからしたら意味ないのよ?そこの所理解してくれ...。
ⅩⅢ.主人公こと布波能凪はどこに魅力を感じれば良いですか?
龍司の小汚い策を掻い潜った事くらいですかね?
それともスラム街出身で身についた、空間を理解して行動できる能力ですか?
自分よりも家族や仲間と認識した人には大事にするという、自己犠牲心の持ち主である事が描写されていますが、ここは文句なかったですね。告白を先延ばしにしたのも葛藤が上手く書かれていましたし。
ただ問題は2つあります。
それは共通√にもあった結婚してくれ発言とパンツくれ発言、凪の思い浮かべる未来の姿の2つです。
前者に関してはスラム街生まれということもあって、性に対するまともな知識を学ぶ機会がなかったんだと認識して百歩譲ることにしていますが、後者は別です。
奏命√でどうやって家族を幸せにするの?という問に対し、主人公「俺は会社が欲しい。そこで珠賀良区出身の人を雇い、生まれによる差別を減らしたい」と口にしたんですよ。
ですが後半になってみてどうですか?一色家の者として背負うのに子供を最低3人産むことに変わっちゃってるんですよね。
あれは建前だったんですか?と言うように最終的な目標がブレているようにも感じました。
とこのように主人公は目標のブレと突発した能力と行動力が個別√で見られなかったことから、活用できてるとは言い難いというのが私の印象です。
主人公ならもっと出張って欲しかったですわ。
・一体何がいけなかったのか
カタルシスの部分でも触れたように、本作は学園生活×成り上がりのサクセスストーリーを展開するも"ヒロインとのイチャラブをメインに書いた恋愛ADV"故に強調しているはずのカタルシス効果がそんなに得られないという事案が発生しているのです。
「学園で恋愛をしながら主人公は成り上がりをして良い未来を掴む」というお話をチョイスするのは良いんですが如何せん目的が簡潔だし、そもそも学園後の話がない以上盛り上がりに限度があるんですよ。
つまり、カタルシス効果を強調させるには如何せん舞台との相性が悪かったと言えるでしょう。
まどそふとの雰囲気を出すためにあえてリアルさを見せられてからの簡潔エンドに持ち込みたかったとも読み取れますが、その簡潔さで期待をさせるのは非常に難しいですし。
シナリオライターも出来る限りを尽くしてもこれなので、制作陣もこの相性に気づいてればまた違った書き方や最善策を思いついたのかもしれないですね。
・まどそふとの作品として出すのは?
前作ハミダシクリエイティブが人気すぎたが故に期待値が上がり、それに伴ってハードルも上がってしまってのこの評価になってしまったんだろうなと感じています。
この作品をプレイする前も私は「これはkuwa games様の作品であってまどではない」と思い、だからこの作品は評価が良くないと思っていました。
ですがプレイしてみて、評価の低い原因は外注云々では無いという事が分かりましたね。
結論を言うと、まどそふとの作品として出すには色々と中途半端なのでラズベリーキューブ枠なんだろうなと思いました。
多分外注でなくkuwa games様の作品として出してもそんなに評価は変わらない気がしますね。
・システムとBGM
お気に入りボイスと立ち絵鑑賞、選択肢スキップとノベルゲー初心者にも優しい設計がなされている印象です。
特にバックログのシーンジャンプが出来るというのは、スクショをメモ代わりにしている私にとっては本当にやりやすいですからね。
BGMの使い方で本領発揮したのはやはり共通√後半でOP曲のボーカル無しver.でしょう。
そもそもBPM192とかなり速くギターによるかっこいい演出が光る中での使用なので文句無しの盛り上げ方でした。
○最後に
本作はコンセプトを活かせるどころか、世界観や土台の時点でブレっブレなのが露骨に著れていた作品と言えるでしょう。
反逆の成り上がりを書いたと言いながら主人公がそれに沿った行動をしていないのですから。
それに共通√の時点でサブキャラの出番が全くないし、突然出たと思ったらメインヒロイン差し置いて"オラァ、サブのバックボーン出してやったから同情しろぉ"っていう書き方が見え透いてて魅力を全面的に引き出せてないのも残念です。
ただクスッと笑える所があるのは間違いないし、色々な方面で不満があったとしてもそこまで完成度が低いわけではないです。
キャラゲーとしては微妙やしシナリオゲーにしても中途半端と、どっちつかずになってしまった結果が本作の世間的な評価なのだと思っています。
本作はkuwa games様の外注によって制作されたまどそふと作品ではあるのですが、この評価になってしまったのはシナリオライターが全て悪い訳ではありません。
この展開で話を進めてしまったり色んな要素を盛りすぎて良さを消しすぎた制作陣が、いち早くその問題に気づいていればもっと作品に沿ったシナリオに持ってこれたのだと思います。
そうなると、1人のプレイヤーとしてやるせない気持ちにさせられてしまったなぁという思いでいっぱいです。
チームとして一生懸命考えて制作したという気概は少なからずとも伝わりはしました。
が、キャラゲーに必要な要素とそれを納得させる描写と説明は最低限でも書いて欲しかった、というのが一個人としての感想です。
とはいえキャラデザは萌えとして十分に可愛さを出せているので、ヒロインとのイチャイチャだけを望む方であれば楽しめるタイプの作品でもあると言えるでしょう。
かなりの疑問点を残したままでは終われないだろうからFDも制作するんだろうとは思いますが...ラズベリーキューブっていう事例があるのでその可能性は低いんじゃないかなぁと思っていますね。