「彦根城」イコモスの事前評価結果概要について思うこと
昨年文化庁の文化審議会は、日本の世界遺産暫定リストに記載されている「国宝・彦根城」について、イコモスが実施する事前評価制度(プレリミナリーアセスメント)の活用を促し、1年間をかけて書面調査が実施され、10月2日に調査結果が示された。
調査結果の結論は、「彦根城は、日本における徳川(江戸)時代の地方政治拠点として機能した建築及び土木の傑出した見本で、大名統治システムを示すもの」とする日本の推薦主旨について、評価基準(ⅲ)を満たす可能性があるとしながらも、現時点では、彦根城単独で大名統治システムを完全に表現できているか疑問であるとした。
そして、「今後日本が正式に推薦書を作成するにはシリアル推薦も考えるべきであり、シリアル推薦でない場合には、大名統治システムとその運用について彦根城のみで十分に説明できることが必要である」と評価している。
簡単に言えば、徳川時代における大名による統治制度を示す遺産として、現時点では、彦根城だけでは十分に説明できておらず、このまま彦根城単独で推薦書を作成していくのであれば、更にしっかりとした証拠や根拠が必要である。よって、単独ではなく他の城と連携した推薦(シリアル・ノミネーション)も検討すべきではないかというものである。
ところで、現在日本には12の城に天守があり、その内5つの城の天守が国宝となっている。5つの城の内、姫路城は1993年に日本で最初に世界遺産登録された4つの遺産のひとつであり、登録されてから30年以上になる。逆に彦根城は姫路城とともに1992年に国内推薦候補となってから、こちらも30年以上が経過するが、未だ登録に至っていない。残る松本城、犬山城、松江城は国宝5城によるシリアル・ノミネーション・サイト(日本語訳としては、連続性のある遺産)として、「近世城郭の天守群」の名で世界遺産登録を目指している。
これまで、先行する姫路城や彦根城と足並みを揃えた動きは困難と思われたが、今回の彦根城の評価結果により、シリアル・ノミネーション・サイトとして5城での登録の可能性が出てきたのではないかと思われ、彦根城のみならず、松本城、犬山城、松江城の世界遺産登録への期待をも高める結果になったのではないかと私は感じている。
今後の彦根城の推薦に向けた動向が注目される。
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