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子どもたちは夜と遊ぶ 感想※ネタバレあり


この本を読んで、どこでもいいから感想を吐きたくなりました。

※以下、ネタバレを含みます


ここから先、iを『浅葱』、θを浅葱と書きます。

やるせない、というのが読み終わった最初の感想です。

何度か手が止まり、天井を2.3秒見つめては読み進める。
下巻ではその回数が多くなっていきました。

何を恨めばいいか分からなかった。
ADHDを持ったことを恨めばいいのか、受け入れられず虐待をした母親を恨めばいいのか、施設を恨めばいいのか。
またはその後の運命か。


浅葱は、どうすればよかったのだろう、と読み終わったあとしばらく考えました。


許されないことをしたのは浅葱だけど、浅葱は、じゃあどうすれば救われていたのか。
幸せを感じるにはどうしたら良かったんだろうと思いました。

浅葱は、月子と。

月子の感情に気づくのが遅すぎました。
浅葱は藍しか見えてなかった。
兄のことだけを考えて頼って生きてきたから。
幸せをもらえる環境に気づけなかった。
月子もそれに気づかせなかった。
恋愛が嫌いだから、って気を使った。

やるせない。
幸せになってほしかった。
浅葱に、幸せになって欲しかった。
でも、浅葱は死んでしまった。
本当にやるせない。
なんでこんな話作ったんだとまで思ってしまいました((ごめんなさい素晴らしい作品です

いろいろ考えたけれど、実際はその浅葱はもう死んでしまっているし、月子も記憶がなくなってしまった。

やるせなさを感じるのは、読者含め当人以外のみです。

特に、『浅葱』は浅葱のことを好きだった。
だから恭司に代わって、月子に会いに行ったのだろうと。

恭司も優しい男ですよね、大好きな月子に『石澤恭司』として会うことを放棄してまで、『浅葱』を月子に会わせた訳ですから。
1発殴ってますけど、まぁ仕方ないですね。
いい加減だけど、優しい男。
作中1番印象的な人物です。



恐らく、この本を読み進める中で、読者は誰かに感情移入をしながら物語を追っていくんだろうと思います。
どこか同じ考えを持った人間が、必ず出てくる。

私には、それが浅葱でした。



登場人物

狐塚孝太
月子
萩野清香
白根真紀
石澤恭司
片岡紫乃
秋山一樹

こう書いてみれば一目瞭然ですが、久しぶりに辻村作品を読んだのもあってすっかり忘れていました。

名前遊びは辻村深月さんの常套手段ですね。
やられたーーと思いました。

私は浅葱と一緒に驚くことになりました。
同時に浅葱の気持ちが手に取るように分かり、と言うよりも分かるように書いてあり、やるせなくてしばらく涙が止まりませんでした。

直前の場面で、こう書いてあります。

浅葱は気が付いてしまった。思い出してしまった。目の前で声を張り上げる月子のエゴに。
気が付いてしまった。彼女が他人だということに。そして思い出す。月子は、浅葱の元にはやってこない。彼女は、狐塚のところに戻る。

ものすごく共感しました。

浅葱は、どうすれば救われたかな。
苗字を知っていれば…月子が好きなのは浅葱と知っていれば…

中でも。

浅葱は、萩野さんの家で話した時、恋愛相談を口実に部屋に上がりますが

「第一、月子には狐塚がいるでしょう?」
「それとこれとは話が別でしょう?あなたと月ちゃんって、似合うのよ」

という会話がされています。
はっきり萩野さんが言っていれば。
別ってどういう意味?と浅葱が聞いていれば。


浅葱は死ななかったかもしれない。

多分、物語を通して私は浅葱のことを好きになりました。


月子がゴミ箱を蹴った浅葱を見て、

それを見たら、駄目でした。ああ、この人は本当はこんなに弱くてかっこ悪いんだ。そう思ったら駄目でした。私、浅葱を好きになってしまった。そばにいたいと思ってしまった。

月子の気持ちがよく分かりました。

月子のことも大好きです。
可愛くて、優しくて、自分を持ってて、自分の弱さを知ってて、でも直さない。
紫乃との不健全な友達関係も含めて、月子が大好きでした。



登場人物は大半が20を超えた、社会的には『大人』と呼ばれる人。

だけど思うことは変わってない。
必死に大人になろうとしている。
ずっと。ずっと。

きっと私もそうなのだろう、中身は学生のまま、時間がのうのうと過ぎて責任が増えていくこの社会で、孤独を感じながらこの先も必死に生きていく。
そう思いました。

『なりたいものになるためには、きちんと生きていかなければならない』

この意味を、ちゃんと理解できるまで。



幾原邦彦さんの解説が、まさに、まさにそうだと思える内容でした。

解説までぜひ読んでみてください。



走り書きかつ拙い感想を読んで下さり、ありがとうございました。

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