唇よ、熱く君を語れ
*本作は渡辺真知子さんの名曲「唇よ、熱く君を語れ」をイメージしたオリジナルショートストーリーです。歌詞とは一切関係ありません。
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うん。いい感じ。ヨーコは南向きの窓を開け、朝の若干オゾンを含んだ涼風を細胞に浴びながら心のスイッチを切り替えた。昨日までの鬱々とした私よ、さよなら。
誰の目も気にせず、私は私らしく生きてゆく。心を整えたことで空気までもが張りすぎず緩みすぎず、まるでヴィオラの弦のようにしなやに時を奏でだしたように感じた。
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彼女は鏡に向き合いゆっくりと口紅をひく。唇に命を吹き込むように。鏡の真ん中に真紅の薔薇が花開く。玄関に立ち、ヨーコは寄せた肩甲骨をそのまま下に下げた。自ずと下腹に力が入り、スッと背筋が伸びる。引き気味の顎、口角は上がり瞳には士気がみなぎり、未来へと漕ぎ出す準備は整った。ドアノブをしっかりと握り、迷うことなく扉を開けた。
"さあ、出発だ!!"
内包す想い滾りてこの地球の私は私ここに息づく
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