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【現役農家注目!!】2024年度注目の補助事業3選!

―今村編集長(以下今村)
皆さんこんにちは。編集長の今村です。
さあ、井上さん。
お待ちかねの補助事業(2024年度補正予算)のお話ですよ!

―編集部井上(以下井上)
待ってました!
前回では国の予算について整理することができて、また知識が深まる時間になったんですが
今回は補正予算含めた具体的なところを教えていただけるということでワクワクしております。

―今村
ではでは、今回は注目の補助事業3選と題して、昨年末に可決した2024年度(令和6年度)の補正予算のうち、農林水産関係の事業についていくつかピックアップし見ていきながら、私が気になっている補助事業をポイントと共にピックアップしていきますので、今回もお付き合いいただけると嬉しいです!

【おしえてくれる人】今村 純(いまむら じゅん)
農タイムズ編集長。
岐阜県出身。愛知県内の大学を卒業後、農業機械メーカー(ヤンマー)に就職。その後、人材広告会社(マイナビ)にて「マイナビ農業」の企画営業を経て、農業法人の立ち上げに参与。
2023年より農場オフィサーとして北海道で農業を始める。

【おしえてもらう人】井上 食堂(いのうえ しょくどう)
農タイムズ編集部。
福岡県出身。大学で映画を学び、映像クリエイター / フォトグラファーとして活動後、株式会社クリオグラフィーを立ち上げ数多くの企業、行政の映像写真の企画に携わる。農タイムズではライティングやデザインなど多岐に渡り活動中。農業をやりたい!という想いが沸々と湧き上がっている。

補正予算の概要


ー今村
さて、早速ですが2024年度の補正予算について、予算要求されているのはこちらになります。

令和6年度農林水産関係補正予算の全体概要より抜粋

―井上
すごい項目の量ですね。
しかし農業をやっていない僕でも大事そうだなとわかる項目ではありますね。

―今村
そうですね。
まず、予算要求の総額は8,678億円で、前年の2023年度の8,182億円と比較すると、微増となるんですけれどもあくまで“予算要求“になりますので、ここから予算が多少前後する可能性はあります。が、大きくは変わらないでしょう!
続いて、事業の中身について見ていきましょう。
2024年度は農政の憲法とも言える「食料・農業・農村基本法」の改正もあり、農業の構造改革に向け力を入れていく姿勢が随所に見られます。この改正で特に注目していきたいのは、「食料安全保障」です。
それに伴い、「食料安全保障」に関する事業で、注目していきたい取り組みを3つ挙げてみました。

・次世代を担う農業者及び経営体の育成・支援
・大区画による効率的な生産体系の確保
・農水産物の輸出入体制の強化

農林水産大臣を務める江藤拓氏の年頭挨拶では、一番初めに「食料安全保障」に関する話を述べていることからも、国としての最重要テーマであることが伺えます。また、昨今の“米騒動“のように、あらゆる条件が重なることで国内における食料の安定確保が難しくなっていることも浮き彫りになってきました。
そこで、国民一人一人の食料安全保障という基本理念のもと、農業生産の拡大と両輪で輸出を促進して供給能力を維持し食料安保の確立を目指す、これまで以上に重要なミッションとして目標を掲げ、国が中心となり食を守っていく動きが加速していきそうです。

―井上
本当に何がある分からない世の中だからこそ常日頃からしっかりと、食ということを「農」目線でも考えないといけないという。まさに一人一農時代を見据えてですよね!

―今村
そうですよね!
また、「食」は生命の根幹ですが、やはり1経営体だけで解決できない問題がほとんどですから・・・
こういった補助事業を通して業界にシナジーを与えていくという点でも非常に重要だと思っています。

さて、次に私自身が注目している補助事業を見て行きますので、みなさんの参考になると嬉しいです。
ここからいよいよ!

現役農業者 今村が注目する補助事業3選に参りたいと思います!


補助事業内容紹介


1.新規就農者確保緊急円滑化対策 (世代交代円滑化タイプ) 経営継承・発展の支援

将来の担い手の円滑な確保を図るため、親元就農を含む新規就農者の経営継承・発展に向けた取組を支援する事業です。取り組みの内容についてはこんな感じです。

農林水産省HPより

その中でも、私が最も注目している項目がこちらになります。

●経営継承・発展の支援
① 世代交代円滑化タイプ
地域計画の実現に向け、親元就農を含む新規就農者がスムーズに経営を継承・発展できるよう、
ア) 農業用機械・施設等の修繕・移設・撤去等の経営資源の有効利用や、法人化、専門家の活用等の円滑な経営移譲に向けた取組
イ)機械・施設等の導入を一体的に支援します。

② 初期投資促進タイプ
就農後の経営発展のために、都道府県が機械・施設等の導入を支援する場合、都道府県支援分の2倍を国が支援します。

<今村の事業ポイント!>
主に世代間継承で倅さんに農業を継ぐ場合や、就農初期の新規就農者が規模拡大等で設備の導入などをするケースを対象に補助をする事業ですね。親元や第三者継承で就農した49歳以下の就農者が対象になるようです。

これまで新規参入向けの補助事業はある程度あったものの、親元就農に対する支援が手薄だったんですよね。また、修繕や撤去といった既存設備に対する補助は今回が初めてのようで、より現場の実態に即した支援が受けられそうです。この事業は、国と都道府県が予算を出し合って補助する事業になるため、こちらは「間接補助事業」になるかと思います。管轄の都道府県にて事業の公募が行われるかと思いますので、窓口を確認の上、問い合わせすることをお勧めします。


2.農地の更なる大区画化・汎用化の推進(公共) 〜米の生産性向上等に向けた大区画化の推進〜

「総合的なTPP等関連政策大綱」に則し、農畜産業の体質強化を図る観点から、担い手への農地の集積・集約化、農産物の高付加価値化・生産コスト削減など農畜産業の競争力向上に必要な生産基盤整備を実施する事業になります。

農林水産省HPより

①農地の更なる大区画化・汎用化の推進
地域計画を策定した区域において、担い手への農地集積・集約化を加速し、米の生産コストの早期かつ大幅な削減等を図るため、スマート農業に適した農地の大区画化や排水改良、水管理の省力化等を推進します。

②水田の汎用化・畑地化、畑地・樹園地の高機能化の推進
高収益作物を中心とした営農体系への転換を促進するため、排水改良等による水田の汎用化・畑地化、スマート農業に適した農地の区画拡大、畑地かんがい施設の整備等による畑地・樹園地の高機能化等の基盤整備を推進します。

<今村の事業ポイント!>
これまでも大区画化に向けた基盤整備事業はありましたが、昨今の米騒動などを踏まえ、より一層大区画化や農地の集約に力を入れていくものと思われます。こちらの事業については、いずれも基盤整備事業(公共事業)となるため、各都道府県及び市町村等が主体となって動きます。
各都道府県及び市町村等にて対象とするエリアの選定を行ったのち、現場調査等が始まるかと思いますので、各所轄の市町村等から案内がありましたら、同事業(基盤整備)への参画を検討するといった流れになります。

ただ、基盤整備って難しいですよね…。工事したからと言って必ずしもその圃場が良くなるとは限りませんから…そういった理想と現実のところについても、今後皆さんからいろいろな声を聴いてみたいと思ってます!


3.不測時に備えた食料供給体制強化対策

食料供給困難事態対策法に基づく特定食料・特定資材の民間在庫の実態等に関する調査、不測時における食料供給シミュレーションモデルの構築、世界の食料需給動向等の総合調査・分析を実施します。
新たな食料システムの関係者による食料安定供給に資する備蓄等の取組を周知・推進することで、消費者による行動変容を促進します

農林水産省HPより

① 総合的な備蓄体制の推進
不測の事態において、備蓄を効果的・効率的に活用していくため、国内に存在する備蓄をトータルで把握し、官民合わせた総合的な備蓄体制を推進します。これに向け、食料供給困難事態対策法に基づく特定食料・特定資材 <※> について、サプライチェーンの各段階における民間在庫の実態等に関する調査を行うとともに、これらを定期的に把握するための、より効率的な調査手法を検討します。

<※>特定食料:コメ・小麦・植物油脂原料等 を想定
<※>特定資材:肥料・農薬等 を想定

②不測時における食料供給シミュレーションモデルの構築
不測の事態を想定し、必要な対策を検討するため、諸外国の事例を参考とし、国内の農地や労働力をはじめとする生産基盤の確保状況、品目ごとの輸出入量、食料等の備蓄状況、世界の需給動向を考慮し、供給熱量や栄養バランスを最適化する我が国の食料供給シミュレーションモデルを構築します。

1.食料供給困難兆候の把握のための情報収集・分析
食料の供給不足となる兆候を適切に察知するため、現地コンサルタント等を活用し、異常気象及び地政学的リスクの発生が海上輸送等に及ぼすリスクの分析等を実施します。
(関連事業) 農業気象情報衛星モニタリングシステム (デジタル庁計上)15(15)百万円

4.食料安定供給に資する総合的な備蓄等の取組の周知
改正食料・農業・農村基本法や食料供給困難事態対策法の理念に則した取組事例を深く知ることができるよう、新たな食料システムの関係者(生産者、食品産業事業者、消費者等)による食料の安定供給に資する備蓄等の取組に関するシンポジウム等を通じ、国民の理解醸成を図るとともに、行動変容を促す事業を展開します。

<今村の事業ポイント!>
同事業は、主に食品流通に関連する調査や周知が主となるため、農業者が直接的に活用する補助事業では無いですね。ただ、「不測に備えて」という前置きがついた補助事業は、私が知る限り初めてじゃないかな?と思いまして、それだけ先が見通せない世界情勢になっているということを理解しなくてはなりません・・・
この事業は、「食料供給困難事態対策法」に基づくものであり、将来的な構想として食料の在庫や農産物等の生産状況を可視化し、国内の「食」を一元管理できる状態にすることが最終的なゴールなのでは?思っています。
そうなれば、食管法を超える新時代の食料管理システムが完成するでしょうね…。そのうち、農業者の栽培計画や実績も、すべてマイナンバーに登録しなくてはならない時代が来るかもしれませんね・・・笑

いかがでしたでしょうか?
その他にも、スマート農業の導入支援に関する補助事業も多くなってきました。2024年(令和5年)4月に法律が改正され、これまでの「人・農地プラン」を発展させた「地域計画」の策定が全国で行われることになりました。その中にはスマート農業による支援や活用ついても明記されることになっており、人手や機械等のリソース不足を補うための技術ならびにサービス事業体の活用に対する支援が、一層加速するのではないかと考えています。

また、2025年度(令和7年度)の概算要求金額は、2兆6,389億円と、2024年度(令和6年度)から3,703億円増となっており、次年度の予算をベースに農林水産に関連する支援が手厚くなっていくと思っています。

―井上
僕が農業をやっていたらと想像しながら聞いてみてたんですが、補助事業一つ一つがすごくわかりやすく現場感があるなと感じました。
というのも、僕は映像制作会社をやっていますので、行政のプロモーションにおける補助事業等はよく目にすることがあって。個人的意見ですがそういった補助事業は「本当に補助事業で人口が増えるのだろうか?」「観光事業として長く続くのだろうか?」みたいなことは多々あります。しかし、「農」や「食」に関する補助事業は現場と直結しているというか、今本当に必要なことがしっかりとわかっている気がします。
 
―今村
そうかもしれませんね。ただ。やはり、あくまで補助金ですので国の動向に左右される経営は良くないと思います。自分がやっている事業としっかり照らし合わせて、こういった補助事業のうち、ご自身の経営に沿った内容の事業があれば積極的に活用すべきだと思います。(私も活用しようと思ってます!)
ぜひ、情報収集をして更なる経営発展に向けて動いてみると良いと思います!

また、食料危機に陥る可能性がすぐそこまで来ていると思います。(いつそうなってもおかしくない)
そこで考えるべきことは、「自分たちの食は自分たちで守る」ということだと思います。すると、次なる行動が見えてきますよね。

―井上
今回もすごく具体的な学びとなりました!
ありがとうございました。



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