脳血管 #2-4 大動脈弓部
大動脈弓部
大動脈弓は、心臓から出て上行する「上行大動脈」から続き、前方から後方に弓状に曲がって第4胸椎レベルで縦隔内を下行する「下行大動脈」に続く間の動脈のことです。
大動脈弓からは、①腕頭動脈、②左総頚動脈、③左鎖骨下動脈の3本の動脈を出して、頭蓋内に血流を送ります。
①腕頭動脈
大動脈弓部からの最初の枝で、右胸鎖関節の高さで右鎖骨下動脈と右総頚動脈に分かれます。右鎖骨下動脈は左上肢に血流を送り、右総頚動脈は頭に血流を送ります。
②左総頚動脈
左側の頭頚部に血流を送ります。
③左鎖骨下動脈
左上肢に血流を送ります
左右差がある血圧:鎖骨下動脈盗血症候群
左右の上肢の血圧を測定した際に血圧の左右差がある場合、鎖骨下動脈盗血症候群(subclavian steal syndrome)が疑われます。左鎖骨下動脈が、椎骨動脈分枝部より大動脈弓部側で狭窄あるいは閉塞すると、脳底動脈への血流は反対側の椎骨動脈のみで供給されます。この状態で左側上肢の運動をすると、上肢への血流が増加しますが、左鎖骨下動脈は狭窄・閉塞しているため血流をもらうことはできません。血流は右側の椎骨動脈より左側の椎骨動脈へと血液を逆流させることで、上肢への血流を維持します。この結果、脳底動脈の血流が減少し、脳幹や後頭葉への血流が不足し、脳底動脈流域の虚血症状が出現します。脳底動脈領域の虚血症状は、失神・めまい・視野障害・上肢のしびれなどです。この状態が鎖骨下動脈盗流症候群です。