脳卒中リハビリテーション看護認定看護師の脳の中

関西のとある脳卒中リハビリテーション看護認定看護師の教育機関を終了した看護師集団です。これから、もしくはすでに脳神経外科で看護師と働いている看護師さんに向けて、私たち脳卒中リハビリテーション看護認定看護師の脳の中にある知識を公開します。

脳卒中リハビリテーション看護認定看護師の脳の中

関西のとある脳卒中リハビリテーション看護認定看護師の教育機関を終了した看護師集団です。これから、もしくはすでに脳神経外科で看護師と働いている看護師さんに向けて、私たち脳卒中リハビリテーション看護認定看護師の脳の中にある知識を公開します。

最近の記事

脳梗塞 #5-11 機械的血栓回収術

機械的血栓回収術の適応 rt-PA静注療法を行ったが効果がない症例、またrt-PA 静注療法の適応はない(発症時刻から4.5時間を超える)が、脳梗塞になると予想される部分から、救済できる部分〔ミスマッチ部分:MRIなどの画像にて診断〕があれば、血栓回収術が適応となります。適応を守らないと、重篤な出血性梗塞を起こします。基本的に、rt-PA静注療法が、治療の第1選択となり、rt-PA静脈療法後に続けて行うのが機械的血栓回収療法です。  血栓回収術は、脳主幹動脈閉塞をともなう

    • 脳梗塞 #5-10 rt-PA静注血栓溶解療法

       脳はつねに活動しているため、大量のブドウ糖と酸素を消費します。しかし、脳はグリコーゲンや脂肪などのエネルギーや酸素を備蓄する機能を持っていません。そのため、血管内の血液からグリア細胞を介して神経細胞に大量のエネルギー源であるブドウ糖と酸素を供給しています。もし脳血管がつまって、エネルギー供給がなくなると短時間で脳の活動が停止し、その後急速に細胞が破綻して壊死を起こし、脳梗塞に至ります。脳の細胞はほかの臓器と違って、自分で再生し修復する力は乏しく、脳梗塞になった部位に応じて

      • 脳梗塞 #5-12 CAS(頚動脈ステント留置術)

        頚動脈ステント留置術とは 頚動脈狭窄症の患者に対し、脳梗塞を予防する目的で手術を行います。手術の適応は以下の2つになります。 ①狭窄率50%以上の症候性(過去に頚動脈狭窄が原因で、脳梗塞を起こしたことがある)頚動脈狭窄症 ②狭窄率80%以上の無症候性(頚動脈狭窄が原因で、脳梗塞を起こしたことがない)頚動脈狭窄症  頚動脈狭窄症に対する脳梗塞予防手術には、頚動脈内膜剥離術(CEA)と頚動脈ステント留置術(CAS)があります。CASは、頚動脈の狭窄部にステントという金属の網

        • 脳梗塞 #5-8 CEA(頚動脈内膜剥離術)

           総頚動脈は頚部で外頚動脈と内頚動脈に分かれ、外頚動脈はおもに顔面の組織に血液を送り、内頚動脈は脳に血液を送ります。動脈硬化とは、動脈の壁の内部にコレステロールなどが沈着していくもので、全身のあらゆる血管に起こり、時に血管を詰まらせてしまい、心筋梗塞や脳梗塞の原因となる疾患です。この動脈硬化による血管の狭窄は、頚部の内頚動脈に多く発生します。頚部の内頚動脈に発生した狭窄性病変は「頚部内頚動脈狭窄」と呼ばれ、脳梗塞の原因になります。  脳梗塞発症の予防法の1つが頚動脈内膜剥離

          脊椎・脊髄疾患 #10-3 脊椎・脊髄の治療

          手術の基本的アプローチ 脊椎・脊髄疾患の手術は、脊椎や内部の脊髄、そこから枝分かれする神経根に対して行われます。また、行われる手術の内容は、 (1)神経に対する圧迫要因を取り除く。 (2)支持組織を再建する。に要約されます。  脊椎・脊髄疾患のほとんどは、腰椎、頚椎に集中します。頚椎は前後両方から手術できますが、腰椎は腹部消化管や大動脈があるため前方からの手術は難しく、患者の負担も大きいです。そのため、できる限り後方から手術します。つまり、頚椎前・後方手術と腰椎後方手術が

          脊椎・脊髄疾患 #10-2 脊椎・脊髄の疾患

          脊髄・脊椎の疾患とは 脊椎・脊髄の疾患には、髄核がはみ出て脊髄や神経根を圧迫するものや、脊椎が変形して脊髄や神経を圧迫するものがあります。脊椎の疾患は、椎間板ヘルニア、変形性脊椎症、後縦靱帯骨化症、脊椎圧迫骨折などがあり、脊髄の疾患は、脊髄動静脈奇形、脊髄梗塞、脊髄腫瘍、頚髄損傷があります。 椎間板ヘルニア 加齢に伴う椎間板の変性や椎間板への過重負荷が要因となり、髄核が線維輪を破り、後方または後側方に突出し、脊髄や神経根を圧迫します。この状態を椎間板ヘルニア(Disc h

          脊椎・脊髄疾患 #10-1 脊椎・脊髄の解剖

          脊柱・脊髄の構造 脊柱は頚椎(7個)、胸椎(12個)、腰椎(5個)、仙椎から構成されます。脊柱の役割は、①身体の支持、②体幹の運動、③脊髄の保護があります。  脊柱を構成する椎骨は32~34個あり、外観はそれぞれに異なりますが、基本的形態は共通しています。 環椎・軸椎  脊柱を構成する椎骨のうち、脊柱の一番上にある第1頚椎と第2頚椎は他の椎骨とは異なる形をしています。  第1頚椎は環椎と呼ばれ、第2頚椎は軸椎と呼ばれています。 椎体と椎弓 1個の椎骨は、椎体、椎弓と様

          脳梗塞 #5-9 STA-MCAバイパス術

          1.バイパス術とは バイバス手術とは、血流不足に陥っている領域の脳血管に別領域の血管を吻合すること(=バイバス)で、不足部分の脳血流を増やす手術です。STA-MCA(superficial temporal artery-middle cerebral artery:浅側頭動脈-中大脳動脈)バイパス術が行われることが多く、頭蓋内外の血管を吻合し、頭蓋外から頭蓋内へ新しい血液の流れをつくる手術のことです。  STA-MCAバイパス術で使用するSTA(浅側頭動脈)は、図のよう

          脳動脈 #2-9 椎骨動脈と脳底動脈

          椎骨・脳底動脈の解剖 左右の椎骨動脈(vertebral artery:VA)は、鎖骨下動脈から分岐して、大後頭孔を通って頭蓋内に入り、橋延髄移行部付近の高さで合流して1本の脳底動脈(basilar artery:BA)となります。椎骨動脈、脳底動脈からは、脳幹、小脳を栄養する3対の血管が分岐します。3対の血管は、後下小脳動脈(posterior inferior cerebellar artery:PICA)、前下小脳動脈(anterior inferior cerebe

          脳血管 #2-6 皮質枝動脈

          皮質動脈の解剖 皮質動脈とは大脳半球を表面から栄養する血管を指し、前大脳動脈(anterior cerebral artery:ACA)、中大脳動脈(middle cerebral artery:MCA)、後大脳動脈(posterior cerebral artery:PCA)から分岐します。皮質動脈は表在枝動脈や主幹動脈とも呼ばれます。 中大脳動脈  中大脳動脈から内頚動脈から分岐し、前頭葉と側頭葉の間のくも膜下腔(シルビウス裂)を外側に向かい、その後2本(時に3本)

          脳血管 #2-4 大動脈弓部

          大動脈弓部 大動脈弓は、心臓から出て上行する「上行大動脈」から続き、前方から後方に弓状に曲がって第4胸椎レベルで縦隔内を下行する「下行大動脈」に続く間の動脈のことです。  大動脈弓からは、①腕頭動脈、②左総頚動脈、③左鎖骨下動脈の3本の動脈を出して、頭蓋内に血流を送ります。 ①腕頭動脈  大動脈弓部からの最初の枝で、右胸鎖関節の高さで右鎖骨下動脈と右総頚動脈に分かれます。右鎖骨下動脈は左上肢に血流を送り、右総頚動脈は頭に血流を送ります。 ②左総頚動脈  左側の頭頚

          脳血管 #2-5 頚部頸動脈

          総頚動脈 総頚動脈は、右は腕頭動脈から、左は大動脈弓部から分枝します。左右とも、頚椎の4~5番目前後で、頭の表面に向かう外頚動脈と、頭の中に向かう内頚動脈に分かれます。  総頚動脈分岐部から内頚動脈起始部にかけて頸動脈洞があります。頸動脈洞は血圧変動を甘受する圧受容器として働きます。また、総頚動脈分岐部には頚動脈小体があります。この部分は、血液の化学組成変化を感受する化学受容器で、ここからの情報は呼吸中枢や循環中枢を介して呼吸や拍動に反射的変化を起こします。  頚動脈洞

          脳血管 #2-3 Willis動脈輪

          Willis動脈輪の解剖 Willis動脈輪は脳底部にある脳血管で構成される輪のような構造です。1本の前交通動脈と左右一対の後交通動脈によって、左右の内頚動脈系と椎骨脳底動脈系の3つの動脈が吻合することで構成されています。前交通動脈は左右の前大脳動脈を、後交通動脈は内頚動脈と後大脳動脈を結んでいます。Willis動脈輪の構成は図のようになります。  左右の内頚動脈や椎骨脳底動脈系のどれかが閉塞した場合、Willis動脈輪が側副血行路として機能し、閉塞した動脈の分枝動脈へと

          脳血管 #2-2 脳血管の解剖的・生理的特徴

          脳血管の解剖学的特徴①側副血行路  Willis動脈輪や眼動脈の構造などが代表的ですが、側副血行路を完備しています。頚部では前方に左右の内頚動脈と、後方に左右の椎骨動脈へと分かれていましたが、大脳底部でもう一度吻合して、Willis動脈輪をつくります。Willis動脈輪をつくることで、仮に1本の動脈が閉塞しても側副血行路で血流を補うことができ、脳梗塞に陥る危険性を回避できます。  脳実質内に入り込む穿通枝動脈は、他の動脈と吻合を持たない終末動脈であるため、穿通枝動脈が閉

          脳血管 #2-2 脳血管の解剖的・生理的特徴

          脳血管 #2-1 脳動脈と灌流域

          動脈の名称 動脈系の走行  脳に向かう動脈は、右総頚動脈は腕頭動脈から,左総頚動脈は大動脈弓から始まります。椎骨動脈は鎖骨下動脈から出ます。以後、脳は2つの動脈系(内頚動脈系・椎骨脳底動脈系)によって栄養されます。 覚えるべき13本の動脈  脳は前方循環である内頚動脈系と後方循環である椎骨脳底動脈系によって栄養されます。 内頚動脈系(内頚動脈) ➜内頚動脈 ➜前大脳動脈 ➜中大脳動脈 ➜前交通動脈 ➜後交通動脈 ➜前脈絡叢動脈 ➜眼動脈 椎骨脳底動脈(椎骨動脈・脳底

          外傷 #8-3 急性硬膜外血腫

          原因と病態 頭部への高エネルギー外傷がきっかけで急性に起こります。高エネルギー外傷とは、高所転落や交通事故などで体に大きな力が加わって起こった外傷のことです。高齢者の場合は、単純な転倒などの外傷でも発生することがあります。血腫は硬膜と頭蓋骨の間に貯留します。多くは頭蓋骨骨折を伴い、その骨折線上にある中硬膜動脈が損傷し傷つくことで血腫ができます。骨折部や静脈洞からの出血によって起こることもあります。脳自体の損傷は比較的軽いため、血腫の増大がなければ後遺症が残こすことは少なくな