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脳梗塞 #5-12 CAS(頚動脈ステント留置術)
頚動脈ステント留置術とは
頚動脈狭窄症の患者に対し、脳梗塞を予防する目的で手術を行います。手術の適応は以下の2つになります。
①狭窄率50%以上の症候性(過去に頚動脈狭窄が原因で、脳梗塞を起こしたことがある)頚動脈狭窄症
②狭窄率80%以上の無症候性(頚動脈狭窄が原因で、脳梗塞を起こしたことがない)頚動脈狭窄症
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頚動脈狭窄症に対する脳梗塞予防手術には、頚動脈内膜剥離術(CEA)と頚動脈ステント留置術(CAS)があります。CASは、頚動脈の狭窄部にステントという金属の網を留置するカテーテル治療です。原則的にCASの適応は、以下のCEAの危険因子を持つ症例となっています。
CEAの危険因子
・心臓疾患(うっ血性心不全、冠動脈疾患、開胸手術が必要など)
・重篤な呼吸器疾患
・対側頚動脈狭窄
・対側喉頭神経麻痺
・頚部直達手術、または頚部放射線治療の既往
・CEA再狭窄例
・80歳以上
頚動脈ステント留置術の流れ
術前
術前は抗血小板を内服します。抗血小板が効いていないと、術中・術後に脳梗塞の合併症を発生する確率が高まります。基本的に2種類の抗血小板薬を1~2週間以上内服したうえで、CASを行います。
シース留置、ガイディングカテーテル誘導
鼠径部を消毒し、足の付け根の大腿動脈から局所麻酔で8~9Frのシースという管を留置します。全身ヘパリン化(ヘパリンを静注)の後に、シースよりガイディングカテーテルを総頚動脈に誘導します。
CASを受ける患者は重度の動脈硬化症で、全身の動脈が細くなっています。動脈硬化により内径が狭くなると、動脈は長軸方向に伸びます。そのため、動脈は強く蛇行し、カテーテルが上がりにくくなることがあります。また、カテーテルやガイドワイヤーなどの機械的刺激により全身に塞栓症を起こすことがありますので、全身ヘパリン化を行います。ヘパリン化の目安としてACT(ヘパリン活性化凝固時間)を250秒以上にします。
遠位塞栓防止デバイスの展開
血栓が病変部動脈から末梢に流れて脳梗塞を起こさないように、バルーンやフィルターなどの遠位塞栓防止デバイスを使います。
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前拡張
前拡張とは、狭窄部位をバルーンカテーテルで広げて、ステントが通りやすいように隙間を開ける手技です。
ステント展開
ステントを狭窄部に留置します。
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後拡張
ステントを展開後、もう一度別の風船でステントを血管壁に圧着させます。
手術終了
バルーン型防止デバイスのときは、血液を吸引してから遠位塞栓防止デバイスを抜去します。フィルター型防止デバイスのときは、回収力テーテルにしまい込んで抜去します。
造影で血管がきちんと拡張したか、頭蓋内の血管に異常がないかなどを確認します。問題なければ止血デバイスで止血して、手術は終了です。
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術後合併症
1.脳梗塞
バルーン拡張時などにプラークが壊れて脳血管に詰まり、脳梗塞を起こすことがあります。術中に起こる場合と、術後ステント内に血栓ができたりプラークがはみ出て起こる場合があります。
また、頚動脈ステントは身体にとって異物であり、その表面は血栓ができやすくなります。抗血小板薬で血栓ができないように予防しますが、ステント内に血栓ができて、脳梗塞やステント閉塞を起こしてしまうことがあります。
2.過灌流症候群
頚動脈ステント留置によって狭窄が改善し、急に脳血流が増えることにより発症します。頭痛・けいれんなどの症状が出現し、ひどい場合には脳出血を起こします。術前の脳血流検査でリスクが高いと判断された場合、過灌流を疑う症候が出現した場合は、まずは血圧管理を行います。収縮期血圧120~140mmHg以下まで降圧します。術前に穏やかであった患者が、術後に興奮状態になり、多弁や易怒性で、安静が保てない場合は注意が必要です。降圧だけでは無く、プロポフォールやミタゾラムなどで鎮静をして、脳の活動を抑える場合もあります。過度な鎮静によって呼吸抑制や沈下性肺炎を起こすことがあるので、人工呼吸器管理をする場合もあります。
3.徐脈・低血圧
内頚動脈の付け根部分には、脈拍と血圧を調整している頚動脈洞があります。ここに風船やステントによって刺激があると、術後徐脈・低血圧となることがあります。この反射をブロックするために、術中は硫酸アトロピンを投与します。術後にも発生することがあります。多くは一過性で、ドパミンなどの薬剤で対処しますが、数日持続することもあります。
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4.穿刺部合併症
大腿動脈に8~9Frの太いシースを留置して手術を行い、抗血栓薬の内服も継続しているため、穿刺部の止血が不十分となりがちです。従来は用手圧迫で止血をしていたのですが、1時間以上圧迫することもありました。現在は血管に開いた穴をコラーゲンのスポンジを使って塞ぐことができる止血デバイス(Angio-Seal)を使用しており、1分ほどで止血ができます。
デバイスによっては下肢動脈の閉塞を起こしたり、止血が不十分で大きな皮下血腫や仮性動脈瘤ができる場合があり、注意が必要です。
低血圧が頚動脈洞反射による場合もありますが、穿刺部からの出血の可能性があります。低血圧が出現した場合、穿刺部の腫れや痛み、皮下出血がないか確認します。出血を疑われる場合は、用手圧迫を行い、すぐにDrコールをします。。ショック状態であれば、下肢を挙上し、点滴を全開にして、輸血や昇圧剤などの投与を考慮します。
術後は、穿刺部の皮下血腫がないか、足背動脈の拍動を触れるかを観察します。止血が不十分な場合は、圧迫時間を延長することがあります。また、術翌日以降の歩行開始後も皮下血腫の拡大がないか、注意が必要です。
5.コレステロール結晶塞栓症
カテーテルを穿刺部から病変部に進めるときに大動脈のプラークを壊してしまい、コレステロール結晶が剥がれて全身に飛散して各種臓器障害を起こします。まれな合併症ですが、手足の壊死や急性腎不全の原因となり、重篤になりやすいため、注意が必要です。皮膚症状(足趾の冷感、疼痛、チアノーゼ)や腎機能障害などに注意します。
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