解剖 #1-9 内包
内包の解剖
内包は、大脳基底核(被殻、淡蒼球、尾状核)と視床によって挟まれる位置にあり、大脳皮質と間脳、脳幹、脊髄とを連絡する投射線維が走行しており、大脳皮質と下位の脳とをつなぐ主要経路です。
内包を大脳水平断で見ると、外側に開いた「くの字」の形をしており、前から前脚、膝部、後脚に分かれます。内包は視覚、聴覚、体性感覚などの投射線維を形成して視床から大脳皮質に向かう上行性線維と、大脳皮質から間脳、脳幹、脊髄へ向かう下降性線維によって形成されています。
内包の障害
内包は、大脳皮質と脳幹・脊髄を結ぶ様々な線維が通過する部位です。内包は前脚・膝・後脚に分かれます。錐体路すなわち上位運動ニユーロン(皮質核路と皮質脊髄路)は後脚を通り、その後には、視床と大脳皮質知覚野(頭頂葉)を結ぶ上視床脚が通っています。そのさらに後に視放線が通ります。
内包が障害されると、反対側の片麻痺、深部腱反射亢進、病的反射亢進、表在反射の低下、半側知覚障害、同名半盲が出現します。優位半球側の内包が障害されると、失語が出現します。
片麻痺は、顔面・舌を含む体幹の麻痺です。中枢性顔面麻痺になるので、顔面上部に麻痺は起こりません。また、上肢の方が下肢より強い麻痺がでることが多くなります。麻痺は痙性麻痺になります。痙性麻痺は上肢屈曲、下肢伸展、尖足という特徴的なWernicke-Mann肢位をとります。Wernicke-Mann肢位は一側性の除皮質硬直の姿勢です。
また、錐体路徴候と呼ばれる深部腱反射亢進、病的反射亢進、表在反射消失が起こります。上視床脚が障害されると半側知覚障害、視放線が障害されると同名半盲が出現します。
錐体路を栄養する血管
内包の血管分布を理解することは、脳血管障害と症状との相関を理解する上て重要です。内包を栄養する血管は次のように区分されます。
1.内包前脚
前大脳動脈から内側線条体動脈やホイブネル動脈が分枝し、内包の前脚を栄養します。
2.内包膝部
中大脳動脈からレンズ核線条体動脈が分枝し、膝~後脚(前1/3)を栄養します。この動脈は脳卒中動脈とも呼ばれ、脳出血の原因血管になりやすく、出血によって錐体路が障害され、運動麻痺などが起こります。
3.内包後脚
内頚動脈から前脈絡叢動脈が分枝し、内包後脚の後部を栄養します。この動脈の閉塞で、下肢に向う皮質脊髄路などが障害されます。