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脳神経外科のドレーン管理 13‐1


ドレーン管理に必要な解剖生理

脳脊髄液循環路とは何か?

 脳室系は両側の側脳室、第三脳室および第四脳室からなり、それぞれを狭い通路によって結ばれています。脳室の内壁は上衣細胞と軟膜によって覆われています。これらが毛細血管を伴って脳室内に突出したものが脈絡叢で、脳室の中は脈絡叢によって作られた脳脊髄液で満たされています。脳脊髄液の機能は、脳や脊髄の保護と支持です。

脳脊髄液循環路

 側脳室は左右の大脳半球の内部にあり、前頭葉、側頭葉および後頭葉の発達に対応して前角、下角および後角が作られます。左右の側脳室内の脈絡叢で産生された脳脊髄液は、両側の室間孔(Monro〔モンロー〕孔)を経由して正中部にある第三脳室へと流れていきます。外耳孔で合わせるドレナージの0点はMonro〔モンロー〕孔の高さになります。

 第三脳室は正中部にあり左右の視床に挟まれ、下壁は視床下部、後壁は視床上部から成ります、髄液は、さらに中脳水道を経由して第四脳室へと流れますが、中脳水道は中脳の発達に伴い内腔が著しく狭くなっています。

 第四脳室の底面には橋と延髄があり、上面と側面には小脳があります、第四脳室の天井には、正中下端のMagendie[マジャンディー〕孔と左右両側のLuschka[ルシュカ〕孔の3カ所の孔があり、髄液はこれらの孔を通じて頭蓋内および脊柱管内のクモ膜下腔に流れていきます。

 クモ膜下腔を循環した脳脊髄液は、主として上矢状静脈洞付近にあるクモ膜穎粒により静脈洞内へと吸収されていきます。

 脳槽は、くも膜下腔の特に広いところを指します。視交叉槽や脚間窩槽、大槽などがあります。

 脳脊髄液の入れ替わりを脳脊髄液循環路といい、髄膜に囲まれる閉鎖空間の中にあるのが特徴です。脳脊髄液は、1日におよそ450~500ml生産されていますが、脳脊髄液循環路全容積は約150mlであり、脳脊髄液は1日に3回、全脳脊髄液が入れ替わります。 

髄膜とは何か?

 脳は、頭蓋腔内で3層の膜である髄膜に覆われています。頭蓋骨の直下には「硬膜」、その内側に「くも膜」、さらに内側に「軟膜」があります。硬膜、くも膜、軟膜をあわせて「髄膜」といいます。

髄膜

 くも膜はクモの巣のような膜で、くも膜からは結合組織が飛び出し、軟膜とつながっています。軟膜は脳または脊髄表面に存在する薄い膜です。くも膜と軟膜の間隙を「くも膜下腔」といいます。ここは脳脊髄液で満たされ、このなかを皮質枝動脈が走行します。脳動脈瘤は主にくも膜下腔を走る血管に生じるので、脳動脈瘤が破裂すればくも膜下出血が起こります。 

脳神経外科病棟で用いるドレーンの種類と目的


開放式ドレナージの種類

開放式ドレナージ回路の留置部位

1.脳室ドレナージ

 脳出血やくも膜下出血などにより脳室内へ出血を起こした場合、もしくは腫瘍や膿瘍などの閉塞の原因となる脳室内病変がある場合、脳脊髄液の生理的な循環が障害され、脳室内に脳脊髄液が貯留し頭蓋内圧亢進や水頭症が起こります。脳脊髄液を排出し、頭蓋内圧をコントロールするため、脳室ドレーンが側脳室の前角に留置されます。

 適応となる疾患は、くも膜下出血や脳室内出血、脳室内腫瘍、急性水頭症、髄膜炎などです。

 2.脳槽ドレナージ

 脳室ドレナージと同様に、くも膜下腔内に貯留した余分な脳脊髄液の排出を行い、頭蓋内圧をコントロールする目的で脳槽に留置されます。また、くも膜下出血を発症して1~2週間に起こる脳血管れん縮の原因といわれているくも膜下腔内の血腫を体外への排出や、血腫を溶解させるための血栓溶解薬などの薬剤を注入する経路として使用されることがあります。

 3.スパイナルドレナージ(腰椎ドレナージ)

 脳槽ドレナージと同様に、くも膜下出血の急性期の管理として、脳槽やくも膜下腔の髄液を排出する目的で留置します。ベッドサイドで挿入ができ、開頭術の必要がないため、くも膜下出血発症後のコイル塞栓術のあとに挿入されることがあります。さらに、頭蓋内圧のコントロールや脳脊髄液の排出が長期間必要な場合に、脳室ドレナージや脳槽ドレナージの代わりに行われることがあります。そのほかにも、頭蓋底手術や経蝶形骨洞手術に合併する髄液漏に対して行われることがあります。腰椎穿刺と同様の手技で、第2腰椎以下を穿刺し、カテーテルをくも膜下腔内へ挿入します。

腰椎穿刺 穿刺部位

 

開放式ドレナージ回路の原理

 脳室・脳槽・腰椎ドレナージは、それぞれの部位に挿入したドレーンと、髄液の滴下と圧の設定を行う回路に接続されています。頭蓋内圧が設定圧を超えたときのみ髄液が排出されます。

 外耳孔(モンロー孔の位置)をゼロ点として、刺入部からサイフォン部までのチューブ内で液面移動している高さが、現在の頭蓋内圧を示しています。髄液を排出するドレナージ回路は、外耳孔をゼロ点とし、チャンバ内の滴下筒(円板部)の高さの差でドレナージする圧を設定しています。チャンバ内の滴下筒(円板部)の高さをゼロ点からDrの指示の高さ(cm)で設定することにより、頭蓋内圧が設定圧を超えたときだけ、髄液が排出されるような仕組みになっています。(図)そして、滴下部から落ちた脳脊髄液は排液バッグ内に溜められ、排出量が測定できます。

ゼロ点設定

 

閉鎖式ドレナージ回路の種類と目的

1.SBドレナージ

 SBドレナージは皮下にドレーンチューブを留置し、頭皮と頭蓋骨の間にたまった血液や浸出液を排出することを目的に留置します。適応疾患は無いですが、開頭術後に皮下に貯留する血液や浸出液の排出のために留置します。

 頭蓋骨は頭皮に覆われており、通常は頭皮と頭蓋骨の間に隙間はありませんが、開頭をする際に頭皮と頭蓋骨をはがすことで隙間ができます。ドレナージチューブはこの隙間の皮下に留置します。留置期間は、通常、手術翌日に画像検査を行い、皮下に血腫などの貯留が無いことを確認してから抜去します。排液量や排液の性状によっては、数日留置する場合があります。



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