コバルトーレ女川というクラブ~後半~
前半では、私がコバルトーレ女川に興味を持った経緯と、突撃取材でどうしても聞きたかったことを紹介させて頂きました。後半では、その後のサッカー談義(もちろんコバルトーレがメイン)の様子を思い出しながらお伝えしたいと思います。
後半もあくまでも記憶を辿りながらなので、事実と違う点が有るかもしれません。その点はご容赦願います。
コバルトーレ女川の目指す未来
Q:今コバルトーレは、プロ契約の選手は居るのですか?もし居ないのであれば、これから先そのような予定はありますか?
阿部GM
「今、プロ契約の選手は居ません。今後のプロ契約選手についても、今のところ予定はありません。」
「このクラブの大きなテーマとして“街を元気にするクラブ”というものがあります。選手達は、全員が女川町で働いています。この町は小さな港町で、若い労働力が不足しているんです。そこにうちの若い選手たちが、労働力として街に貢献する。これも街を元気にする1つの方法です。」
「クラブが出来たばかりの頃は、なかなか地域に馴染めず少し浮いた存在でした。でも、地道に街の清掃活動や、イベントへの参加などを繰り返していくうちに地域に認められる存在になりました。うちは背伸びをせずに、一歩一歩成長できたらいいなと考えてます。勝つことだけが、街を元気にする事ではありません。」
Q:今でも清掃活動はされてるんですか?
阿部GM
「去年は残念ながら出来ませんでした。やはり、JFLを戦いながらの活動には限界がありました。」
Q:コバルトーレが目指している、またはモデルにしているクラブはありますか?
阿部GM
「ありません。うちはうちです。」
*確かに、コバルトーレが目指すべきクラブというのはないような気がします。と言うよりも、他のクラブが目指すべきクラブこそがコバルトーレなのではないかな?とも思います(理由は沢山あります。この後に出てきます)。「街を元気にするクラブ」というコンセプトを絶対に見失わないという頑固さが素晴らしいと思いました。
差し入れ
Q:とあるコバルトーレの選手が「練習が終わって車に戻ると、よくお弁当が差し入れで置いてある」とか、「仕事中に、最近少し体調が悪いことを漁師のおじちゃんに伝えたら家の玄関に刺身が置いてあった。」という逸話を話している動画を見たんですが、良くあることなんですか?
阿部GM
「あるでしょうね。私なんかは流石に妻もいるのでお弁当は無いんですが、デッカイ魚を丸ごと一匹貰ったり、サンマを山のように貰ったりしたことはあります。“こんなに食べきれないよ”と言うと“誰かにあげればいい”と言うんですが、女川の人にサンマをあげても要らないって言われますからね(笑)女川では、サンマを買うという概念は無いですね。“貰うもの”であり、“あげるもの”なんですよ。」
「女川は少し言葉がキツいんです。でも、付き合ってみると凄く暖かい‼女川の財産は人なんです(この言葉は、色んな所で聞かれます)。」
「毎年秋に“サンマ収穫祭”というお祭りがあるんです。その日はサンマを焼いて、来場者にタダで配るんです。是非来てください。」
*女川のサンマ収穫祭必ずいきます‼同じ日にホームの試合もあるので必ずいきます‼それにしても、街とクラブの距離が近いなと感じました。
コバルトーレ女川の育成、スクール
Q:育成はどのようになっていますか?
阿部GM
「うちは今ユース(高校生年代)が無くて、ジュニアユース(中学生年代)までなんです。昔は、サッカーやりたいけど学校にサッカー部が無い子を受け入れたりもしていました。うちは、セレクションをしないんです。やりたい子は誰でも受け入れるんです。」
Q:サッカー選手として育てるだけが、育成ではないですもんね?指導者であったり、クラブ運営であったり。
阿部GM
「そうなんです。とにかく“街を元気にするクラブ”というコンセプトでやっているので、先ずはサッカーを好きになってもらうことが重要だと考えています。例えば、うちのサッカースクールは基本的に中止というのがありません。応募人数が少なくても、必ず開催します。以前、応募が2人ということがありましたが、コーチ2人で行きましたよ(笑)。マンツーマン。個人レッスンですよね‼」
「うちのジュニアユースから、結構ベガルタに引き抜かれたりもしてるんですよ。基本的に声が掛かったら、快く送り出してます。向こうの方が環境もいいですしね。もしそこでダメだったら、また戻ってくればいいんです。そこからまた這い上がればいい。」
「トップチームも、サッカーやりたいけどやる場所がなくて女川に来た‼というやつが多いです。そんなやつらばっかですよ‼だから、やる気は凄い。」
Q:震災の後、子供たちを集めてサッカー教室をやったそうですが、あの時は回りの反応はどうだったのですか?
阿部GM
「元々は、震災後少し落ち着いて来て、選手も少し体を動かしたかったんです。そこで何人か集まってボールを蹴っていたら、子供たちが集まってきたんです。それが始まりです。選手も子供たちから“サッカーはいつやるの?”とか、“もうサッカーやらないの?”とか聞かれていたようです。」
「避難所生活で、子供たちもストレスが貯まっていたと思います。とても楽しそうに体を動かしていました。翌日に“昨日は凄くよく寝れた”と言って喜んでいたそうです。やはりあんなことがあった後なので、不安で寝れない夜もあったのだと思います。そういった面でも、凄くいい活動だったと思います。」
*子供たちが夜よく眠れたというのが、凄く意味のある事だったのかなと思います。避難所では、とにかく我慢するというのが大人から子供へ言われてたのではないでしょうか?子供のストレスを解消することで、大人への効果もあったかもしれません。コバルトーレは、間違いなく街を元気にするクラブになっていると思います。参加人数2人でスクール開催するクラブなんて、他に存在するのでしょうか?知っている方居たら教えてください。(そこも突撃取材してみたいです。)しかも、ジュニアユースのセレクションが無いなんて……。
人数が減ってきたという理由で三重県のスクールを閉鎖した名古屋の某クラブに、コバルトーレのような理念があれば……。
聞きづらいこと
日刊スポーツの記者さんが、聞きたくても聞けなかったことを聞いてくれました。
Q:戦力外通告をすることもあるわけですか?
阿部GM
「当然あります。ただ、本当に辛い仕事なんですよね……。本当に……。他にやる場所がなくて来た選手が多いので。」
*やはり、コバルトーレ女川といえどもそういう辛い決断もあるんですよね。そりゃあ当然ですね‼
Q:将来的なJ参入を目指してる訳ですが、監督のS級ライセンスを取得する予定はありますか?
阿部GM
「S級を取るつもりはありません。S級ライセンスにあまり意味がないように思います。取得するのに、物凄く時間がかかるんです。海外研修だとか、国内のJクラブでの研修だとか。その渡航費用ももちろんかかります。その時間があるなら、別の事に使いたいです。」
*後日調べたら、S級ライセンスを取得するのはかなり大変だということが分かりました。2週間以上の海外研修、1週間以上のJクラブでの研修、その他にも国内での研修が必要です。それに加え、その渡航費用等で100万円位かかるそうです。悪い言い方をすると、暇な金持ちしか取れないのでは?と思ってしまいます。更に誰でも受験出来るわけではなく、年間に20人という定員があるそうです。しかもその受講生を決めるのは、サッカー協会なんです。なんだこれ?茶番か?と、思われても仕方ないと思います。
メインスポンサー「高政」との絆
Q:メインスポンサーの「高政」さんは、いつからのお付き合いなんですか?
阿部GM
「クラブの設立当初からです。うちの選手も高政さんで何人も働かせてもらってます。」
「コバルトーレも、有り難いことにどんどんスポンサーさんが増えてきました。その中には、高政さんより多くの協賛を頂ける企業もあります。高政さんは“うちは別に胸のスポンサーじゃなくても、何処でもいいよ”って仰るんですが、他の企業の方にご理解いただいた上で胸のスポンサーは高政さんにしています。」
「ただ、1つ難点が。高政さんのマークがあれでしょ?某有名スポーツメーカーさんのあれと……形が。うちがそのメーカーさんのユニフォームなら問題ないんですけど、ミズノさんのユニフォームなんで……(笑)」
某有名スポーツメーカーのあれっぽいマーク
*コバルトーレと、高政の絆に感動しました‼そして某有名スポーツメーカーのあれの件、笑いました‼(*´∀`)
ソシオ会員について
Q:こちらに来る前にソシオ会員になろうと思ったんですが、受付はいつからですか?
阿部GM
「もうすぐできると思います。お待ちください。」
Q:ありがとうございます。因みに今現在どのくらいのソシオ会員が居るのですか?
阿部GM
「震災前は800人以上居たのですが、震災後はだいぶ減りましたね。亡くなった方も居ると思いますし、この状況ではなかなか難しいところもあると思います。」
もし気になった方が居たら、1度問い合わせしてみてください。一口3,000円からソシオ会員になれますよ!勿論、私もソシオ会員です‼
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コバルトーレ女川SOCIOカードについて
Cobaltore Co.Ltd
TEL:0225-54-3251(10:00~17:00)
E-MAIL:お問い合わせフォームはこちら
住所:〒986-2261 牡鹿郡女川町女川浜字大原1-4 地内シーパルピア女川E棟
クレジットカード機能について
日専連コールセンター
TEL:022-267-9222 (24時間・年中無休。オペレーター受付時間 平日9:30~18:00)
3月11日という日について
こちらも日刊スポーツの記者さんの質問です。
Q:今日は3月11日ですが、何処かで追悼式等に出られる予定は?
阿部GM
「特にありません。私達は、あの日から毎日大変なんです。みんな、毎日必死に生きてるんです。3月11日だけが特別なんじゃないんです。毎日特別なんです。暗いニュースを求めてマスコミの方はいらっしゃいますが、もっと明るいニュースも取り上げて欲しいです。」
*私は、その言葉にハッとしました。今まで、毎年3月11日に東北を訪れて来ました。その日に行くことに意味があるんだと思い込んでいました。でも、もしかしたらそうじゃなかったのかもしれません。勿論、それはそれで大切な事だと思います。でも、街が普通に元気で、賑わってる、1番魅力的な季節に行ってその街を楽しむということも同じくらい重要ではないでしょうか?
その他のお話
Q:アジアカップの決勝(日本対カタール)はどちらを応援したんですか?女川にはカタール政府から大きな冷凍倉庫が寄贈されて、それで漁師さんたちが漁業を続けたと聞きました。
阿部GM
「よくご存じですね‼決勝はもちろん……日本を応援しましたよ‼(笑)」
逆に阿部GMから質問が
Q:この後はどちらに行かれるんですか?
私
「石巻の大川小学校に行こうと思ってます。確か遺族の方の中に、女川で中学校の先生をされてた佐藤さんって居ましたね。」
阿部GM「よく知ってますね~‼佐藤先生は、すごい熱血漢でしたね‼バレーボールの監督をやられてました!」
*阿部GMと佐藤先生は、個人的なお付き合いがあったみたいでした。佐藤先生は、現在では教師を退職されていて大川小学校の悲劇を後世に伝えるための語り部をされています。大好きな東北シリーズの⑥の中で「心に残った語り部の方の言葉」として紹介させていただいているのが、佐藤先生の言葉です。
コバルトーレ女川というクラブ
今回の突撃取材を通して、コバルトーレ女川というクラブの魅力を再認識し、新たな魅力も発見できました。そんなクラブの魅力を一人でも多くの人に知ってもらいたく、この記事を書きました。近いうちに、J3規格の新スタジアムも完成するそうです。東北一部リーグでも、スタートダッシュには失敗しましたがここのところは連勝中です(7月2日現在)。
2019シーズンのキックオフパーティーで女川町長が「結果はどうなろうと皆さんが全力でその壁に向かってワクワクさせてくれるサッカーを示し続けてくれる限り、ここにいる全員が皆さんを支えます。その事だけは安心してください。」と仰っていました。私もクラブを支える一人になりたいと思いました。
お付き合いありがとうございました。大好きな東北特シリーズ別編「コバルトーレ女川というクラブ」でした。