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コバルトーレ女川というクラブ~前半~


2011年3月

私がコバルトーレ女川というクラブを知ったのは、2011年3月のことでした。東日本大震災の翌日か、翌々日だったか。テレビのニュースを見ていたら「女川町では、コバルトーレ女川というサッカーチームの選手が給水活動をしています。」という声が聞こえてきました。その時は、「そんなクラブがあるんだ~。」程度にしか思いませんでした。ただそれだけだったはずなのに、何故かずっと頭に残っていました。それから8年経った2019年、急に気になり出し調べるようになりました。ただ8年の間に私は、クラブの名前を「バルバドール女川」と頭の中で勝手に変換してしまっていたのでした。先ずはそこから調べ直しました。そして色々調べていく内に、すっかりファンになってしまいました。チームのコンセプト、街の人々との繋がり、ストーリーがもう堪らないんです‼

そのコバルトーレ女川を突撃取材してきました。そのときの様子を、思い出しながら(何も記録をとっててませんでした。)お伝えしようと思います。あくまでも、記憶を辿りながらなので、事実と違う点があるかも知れません。その点はご容赦願います。

クラブとのやり取り(メールにて)

2017年から毎年東北に行くことにしている私は、コバルトーレ女川が気になり出した事もあり、2019年は女川に行くことに決めました。ただ単に女川に行くのではなく、コバルトーレについてもっと知りたいと思うようになりました。そこで、クラブにメールをしてみました。

私「3月11日に女川に伺う予定なのですが、クラブとして何か活動はされてますか?」

コバルトーレ「あいにくその日はOFFとなっております。」

私「残念です。震災の報道でコバルトーレさんを知りました。クラブハウスの見学など出来ますでしょうか?」

コバルトーレ「時間を指定して頂ければ、事務所にて対応いたします。」

とても親切かつ丁寧な対応をして頂き、当日お時間を作っていただきました。そして3月11日。雨と風がとても強い日でした。約束の時間ギリギリ位にコバルトーレ女川の事務所に到着しました。(11時~12時30分の90分もお時間を取っていただきました)

まさかのサプライズ‼

事務所を訪れた時、丁度日刊スポーツ東北支社の取材が終わったところでした。私と入れ替わりで、コバルトーレの社長が退出されました。事務所には、日刊スポーツの記者さんと、コバルトーレの若い男性職員と年配の男性職員の合計3名がいらっしゃいました。若い男性職員が「今日はわざわざお越しいただいて……」と仰るので、私は慌てて「いえいえ、こちらこそお休みのところ申し訳ありません。」とあまりの対応の素晴らしさに平伏しました……m(__)mそしてその男性職員に促され、着席しました。するともう一人の年配の男性職員が……!!!!(@ ̄□ ̄@;)!!あれ?この方何か見たことあるぞ……。「もしかして阿部さんですか?」と私が尋ねると、「はい。そうです。」とニッコリ笑って名刺をくださいました。頂いた名刺を見るとそこには「株式会社コバルトーレ  GM  阿部  祐二」と書いてあるではありませんか‼私が年配の男性職員と思っていたのは、GM(2019シーズンから監督復帰)の阿部祐二さんだったのです‼GM自らお話をしてくださるということで二重の驚き(喜び)でした。しかも翌々考えてみると、メールでの問い合わせに答えて頂いた文面の最後には「コバルトーレ  阿部」と書いてあったのです‼つまり、メールでのやり取りも阿部さんだったのです……(;゜∇゜)ただただ驚く私に援護射撃が。「折角だから一緒に写真を撮ったらどうですか?」と日刊スポーツの記者さんが提案してくれました。記者さんに自分のスマホを渡して、コバルトーレのチームフラッグの前で並んで写真を撮りました。すると「どうせなら握手してるところを取りましょうか‼」と、更に嬉しい提案を。「入団会見みたいですね‼」と浮かれる私にお付き合い頂き、もう一枚‼撮そして影タイム終了です。

記者さんの提案で記念撮影

入団会見風

突撃取材(聞いておきたかった事)

①給水活動

私はコバルトーレ女川というクラブを調べた中で、いくつかどうしても聞いて確認したいことがありました。しかし私はかなり舞い上がっていたので、どういう順番で聞いたのかを覚えていません。なので、思い付いた順番に紹介したいと思います。

①私がコバルトーレ女川を知るきっかけになった給水活動は、どういう経緯で行われたのか?

阿部GM

「選手が自主的にやったんです。特にクラブから指示したわけではありません。選手達は女川や隣の石巻に住んでいます。職場はみんな女川です。なので当たり前の事として、やっただけです。」

「幸い、コバルトーレの選手は全員無事でした。若くて体力のあるやつが、自分の住む街のために何かする。これは美談でも何でもなく、ごく当然の事です。」

*確かに復興ボランティアという概念でやったわけではなさそうです。この給水活動について、選手が自ら語っている動画がありました。その中で、選手も同じ様な事を言っていました。「僕らは若いし、体力もある。そんな僕らが何かをするというのは当たり前の事です。給水活動をしていて驚いたのが、普段は酒ばかり飲んでるオッチャンが“そこを曲がれ‼その先に足の不自由なお年寄りが住んでるはずだからそこに水を持っていこう”と街の隅々まで知っているんです‼小さい町だからこそ出来ることだなと、感心しました‼」隣の石巻市では、給水車が来ても水をもらうまで何時間も待たなければならなかったそうです。もしかしたらお年寄りや、体が不自由な方は並ぶことが苦痛だったり、そもそも給水車まで行くことさえ困難だったかもしれません。それを考えると、女川町の給水活動というのは本当に素晴らしいものだと思います。そして、給水だけでなく女川の名産である蒲鉾(作りたて)も配られたそうです。それにより、女川では比較的水と食料に困るということが少なかったそうです。

②活動再開

地震から半年後の2011年9月チームは活動を再開したわけですが、ナイター設備を使用して練習することにたいしてクレームが来るどころか「賑やかでいい‼」「もっとやって欲しい‼」という声があったとありますが本当ですか?

阿部GM

「本当です。このチームは、街の人々に支えられてます。本来は1年間の活動休止を予定していたのですが、皆さんの後押しがあり半年で活動再開出来ました。」

「震災の後選手達には、“1年間活動を休止する。でも必ず1年後にまた活動を再開するから、ここに残るのもいいし、他のチームに行ってサッカーを続けてもいい”と言いました。クラブとしては、選手達にここを離れる選択肢も与えなければならないと思いました。」

「選手達は、サッカーをするために女川に来たんです。それなのにここでサッカーがやれないとなったら、当然ここを離れるということも考えてもいいんです。まぁ、それでもほとんどの選手が女川に残ったんですが(笑)」

「1度女川を出て、他のチームで力を付けて戻ってきてくれる選手も居ました。コバルトーレよりレベルの高い所でやって、1年後に戻ってきて戦ってくれました。」

「うちは、引退してもそのまま女川に残る選手も多いんですよ‼○○っていう選手なんて、今は蒲鉾工場で課長やってますよ‼うちのメインスポンサーの高政さんで。」

*チームや選手の事を話す時、阿部さんはとても嬉しそうに、そして優しい顔をしていました。まるで自分の家族の話でもしているかのように。

お話を伺ってる最中に、何度かコバルトーレの選手が事務所を訪れました。「仕事の休憩時間で~す。ジュース買いに来ました~‼」「お昼ここで食っていいッスカ?」こんな感じです。どんだけアットホームなんだ❤と、ホッコリしました。その度に阿部さんが「こいつは、○○って言う選手で、○○なんですよ~」という感じで、紹介までして頂きました。雰囲気の良さがひしひしと伝わってきました。

③海外からの支援

ヨーロッパに住む方がコバルトーレを応援したいということで、ネットで募金を募りクラブに直接寄付してくれたというのは本当ですか?

阿部GM

「はい。それも本当です。この方は、以前からコバルトーレを応援してくれていました。小さな田舎街のクラブということが気に入ったみたいです。」

「そして震災が起きたことを知り、世界中から寄付金を集めてくださいました。数十万円(すみません。金額をはっきり覚えていません)集まって、それを全額クラブに寄付してくださいました。」

「実はコバルトーレのトップチームの選手は全員無事だったんですが、下部組織の子供達の中には亡くなった子も居たんですよ……。」(初めて、阿部さんの表情が曇りました。)

「他にも親を亡くしてしまった子供、家が流されてサッカー道具も全部失った子、引っ越しを余儀なくされた子。多くの子供たちがサッカーどころでは無くなってしまったんです。」

「私達は、その寄付金で子供たちのユニフォームを揃えました。そのユニフォームを着ての初めての試合の時は本当に感動しました。」

*これは私の勝手な妄想ですが、世界中から寄付金を募ったその方が一番喜ぶお金の使い方だったのではないでしょうか?「ソーユートコロガサイコーダヨ‼コバルトーレ‼」と、喜んだに違いありません。

私はこの突撃取材でどうしてもこの3点について聞いてみたかったのです。きっと今まで何度も同じ様な質問をされてきてると思います。それでも丁寧に、かつ盛り沢山でお答えいただきました。今回はここまでといたします。

次回は、この後の熱いお話を思い出しながらお伝えしようと思います。毎度お付き合いありがとうございました。

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