ティファールの神様
神様は簡単に産まれる。
神様は簡単に作られる。
何故なら人は理解できないものを理解できるようにするために、在りもせぬ超常の者を自らの上に置きたがるのだ。
こんな話がある。
男が旅先で携帯電源を使い電気ポットで湯を沸かしている時、老人に声を掛けられた。あっという間に湯を沸かしたという事実だけしか認識できなかった老人は男を神だと認識し、近くの村へと連れて行く。
そうか、知らないものは不思議だろうな、と男は少し得意になってまた湯を沸かして見せる。するとどうだ、村人は次々にその湯を求めてきた。
水に困っていたわけではないので分け与えると次第に面倒になってきた。一式を持たせてやり方を教えてあげればいいか、と説明しようとした時だ。
「おお、神よ、あなたの秘儀は常に隠されてしかるべきです!下々の者にその力で永遠に湯を分け与えてください」
並べられる供物はこれから男が自由に生きていくための時間とはあまりにも釣り合わない、こんなところで人生を終わらせてたまるか!と逃げ出そうにも村人は鎖のように絡みつき、あまつさえ「生贄ならいくらでも」とのたまう。
誰も理解しようとしなかったのだ。だから、私は神に成り果てた。
さて、お前も神になりたいのならその電気ポットのボタンを一度押しなさい。
それだけで『人』じゃなくなる。
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