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田舎の散歩は命懸け


最近は仕事が少し落ち着いてきたのと、なんだかお腹の調子がよくないので
散歩をすることにした
よく言われていることだが、実は田舎の人間は歩かない
都会の人間の方が1日の歩数は多いのだ
田舎の人間は2.3分歩けばつくコンビニや郵便局にも車で行くのだ わたしも農家を営んでいるが、農家も本当に歩かない
作っているものにもよるのだろうが、1日ヒーヒーいいながら働いたあとの歩数が1000歩だった時はあまりの衝撃に携帯を放り投げた
とにかく、歩きたい散歩したいのだが
田舎で散歩をすることの難しさを述べる

1.夜が暗すぎる

あまりにも夜が暗すぎるため、危険である
車も通らなければ街灯も店もない
あるのは暗闇と、両脇にある田んぼやドブだ
落ちたら最後、死が待っている場所も多い
なので仕事終わってから夜歩こう、みたいなことができない

2.不審者に思われる

まず、田舎で1人で散歩してる30代がいない
爺さん婆さんばかりだ
あと犬
なので30代が1人で散歩なんかしていると
農機具を盗もうとしている外国人
みたいな目で見られている、たぶん、ぜったいそう
それでキョロキョロしながら歩くとさらに怪しい
そうなると、明るい時間におちおち散歩もできやしない


以上の理由で、文字通りなかなか一歩が踏み出せないでいたが、とにかくお腹の調子が悪いので一歩踏み出した
ちなみにお腹の調子が悪いので歩くという理論は独自のものである科学的根拠はない


登下校の道も、大きなバイパスが通り様相が変わっていた
むかしヒロくんが野糞をした伝説のドブも、もう誰も草刈りをしないのか半分くらい森のようになっていた
いまなら隠れて野糞できたのに
「ウンコマン」などという称号を与えられることはなかったのに

バイパスが通り新しいオシャレな家が建っているすぐよこに、放棄された農地や崩れかけの家がある
なんともいえない風景に、意外にも僕の心は踊った
これが人間の営みなのだと思い知らされる
必要があったから耕し、必要がなくなったから手放したのだ
いま、なんとか昔の良かった時代に戻そう戻そうという風潮が田舎にはある
でも、もう戻らないのだとみんな頭の隅で感じている
必要だったから増えたのだ、必要じゃなくなったら減る
人間はそれの繰り返しなんだと思う

そんなノスタルジアを感じながら家に着くと
iPhoneの歩数計は1万歩になっていた
不思議と疲れはない、逆に幸福感があるくらい
命懸けだと思っていた田舎の散歩
わるくない

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