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【辛口考察】NTTデジタル主導の「はぴウェル応援団」と今後の課題

2025年にNTTグループであるNTTデジタルが手掛けるweb3プロジェクト「はぴウェル応援団」は、ブロックチェーン技術を使って大手企業が共創する事例として、2025年1月21日よりスタートしました。

20社以上の名だたる大手企業が参加し、「健康」や「ウェルビーイング」というテーマを軸に、NFTを活用したキャンペーンを展開している点は新鮮です。
一方で、web3のマスアダプションという観点から見ると、ウォレット体験や自分自身のデジタル資産管理に関する取り組みは、まだ十分とは言えないのが現状です。
今回は、web3プロジェクト「はぴウェル応援団」の取り組みと共に、今後の可能性と課題について考察を交えながら解説します。


1. 「はぴウェル応援団」とは?


1-1. プロジェクト概要

  • 主催: NTTデジタル(NTTグループ)

  • 参加企業: サンリオをはじめ、食品、旅行、通信、小売、スポーツなど計20社以上

  • 採用ブロックチェーン:  Soneium

プロジェクトの目的は、NFTのようなweb3技術を取り入れて、企業間連携およびユーザーエンゲージメント強化していくことです。企業の垣根を超えた共創型のキャンペーンを展開し、ユーザーに楽しみながら健康やウェルビーイングに関する行動を促していきます。

1-2. キャンペーンの仕組み

サンリオの人気ユニット「はぴだんぶい」が応援団長として参加しています。ユーザーは健康、スポーツ、旅行など複数のチームから選び、各社が設定したミッションをクリアしていくとデジタルバッジや特典を獲得していける仕組みです。条件を満たすと、株式会社Contribution Labsの「Megaphone」というプラットフォームを通じて、SONYが提供する「Soneium」のブロックチェーンでNFTが付与されます。

2. 企業連携モデルとしての意義

2-1. 多業種×ブロックチェーン=新たな可能性

これまでのポイントプログラムやコラボキャンペーンは、一企業内または限られた企業間で完結するケースがほとんどでした。しかし、「はぴウェル応援団」は22社もの大手企業がブロックチェーン技術を活用して共創している点が大きな特徴です。
企業同士が既存の濃く客を相互に送客していき、ユーザーは横断的な特典が提供されます。

2-2. 「Megaphone」と「Soneium」の技術的優位性

今回、web3の取り組み実現にあたり「Megaphone」というプラットフォームと「Soneium」というブロックチェーンを採用しています。

「Megaphone」 は、web3のようなデジタルアセットを活用したマーケティングプラットフォームです。

このプラットフォームの最大の特徴は、大規模なユーザー数にも対応できる高いスケーラビリティです。これは、多くの企業が同時にキャンペーンを実施しても、システムが安定して機能し続けることを意味します。また、「Megaphone」は企業のキャンペーン設計をサポートする柔軟なインターフェースを備えており、各企業が独自のニーズに合わせたキャンペーンを設計・実施できるようになっています。これにより、企業は創造的かつ効果的なマーケティング戦略を展開しやすくなります。

「Soneium」 はソニーグループが開発したパブリックブロックチェーンであり、その技術的優位性は非常に高い評価を受けています。

「Soneium」は、イーサリアムのレイヤー2ソリューションを採用しており、これによりトランザクション手数料の削減と処理速度の大幅な向上が実現されています。具体的には、従来のブロックチェーンよりも迅速に取引を処理できるため、ユーザーはストレスなくサービスを利用できます。

このように、「Megaphone」と「Soneium」はそれぞれ異なる強みを持ちながらも、相互に補完し合う関係にあります。「Megaphone」の柔軟でスケーラブルなマーケティングプラットフォームと、「Soneium」の高速かつ信頼性の高いブロックチェーン技術が組み合わさることで、企業連携のインフラとして非常に魅力的なものとなっています。特に、大手企業が「ブロックチェーンを実運用している」具体的な事例として、このプロジェクトは業界内外から大きな注目を集めています。これにより、他の企業もブロックチェーン技術の導入に対する関心を高め、さらなる技術革新と市場拡大が期待されます。

3. 辛口考察:web3ウォレット体験の弱さ

一方で、筆者が個人的に最も期待していた 「web3ウォレットを介したデジタル資産の自己管理体験」 が、このプロジェクトではあまり重視されていない点は非常に期待外れでした。以下では、具体的な課題について考察していきます。

3-1. Scramberry Walletが導入されていない

NTTデジタルは「Scramberry Wallet」というweb3ウォレットを提供しています。「Scramberry Wallet」は電話番号のみで登録が完了するという簡単な登録プロセスでありながら、秘密鍵やリカバリーフレーズの管理が不要なため、セキュリティ面でも安心して利用できる点が非常に利便性が高いです。
しかし、今回のキャンペーンではこの「Scramberry Wallet」が採用されていませんでした。

このような大手企業連携での大型プロジェクトをきっかけに、「Scramberry Wallet」のようなweb3ウォレットが一般普及していくことを期待していただけに非常に残念でした。

3-2. web3のマスアダプションにつながりづらい

今回の「はぴウェル応援団」のキャンペーンについては、Googleログインのようなシングルサインオン(SSO)連携を通じて自動生成されたウォレットが使用されています。この方法はユーザーにとって便利ですが、web3の真髄であるブロックチェーンで活動証明を可視化するには不十分です。ユーザーは自分のウォレットを直接操作する感覚が薄くなります。
結果的に、既存の会員登録型キャンペーンと大きな差異がなく、"ブロックチェーンならでは"のユーザー体験を得られないことが大きな課題です。

4. 今後の課題と展望

「はぴウェル応援団」は、企業間の連携という点で非常に価値のあるプロジェクトですが、NFTの活用が限定的であり、ユーザーがNFTを自由に管理・活用できる環境が十分に整備されていません。具体的には、以下の2つの側面から課題を捉え、解決策を探る必要があります。

4-1. Web2.0とweb3のハイブリッドアプローチ

web3技術の「所有の証明」という価値を最大限に活かすためには、ユーザー自身がNFTを管理できるweb3ウォレットの導入が不可欠です。しかし、web3ウォレットの利用には一定の知識や操作が必要となるため、従来のWeb2.0型サービスのような手軽さを求めるユーザーにとってはハードルが高いのが現状です。
そこで、Web2.0の利便性とweb3の価値を両立させるハイブリッドアプローチを採用します。
具体的には、NTTデジタルが提供する「Scramberry Wallet」のような、電話番号のみで登録が完了し、直感的に操作できるウォレットを基盤として活用します。そして、「はぴウェル応援団」内でNFTを獲得する際、ユーザーはワンタップで自身のウォレットでNFTを受け取ることを実現します。

4-2. web3ウォレット体験をどう組み込むか

上記のハイブリッドアプローチにより、ユーザーは容易にweb3ウォレットを体験し、NFTを保有できるようになります。しかし、NFTを単に保有するだけでなく、その実用価値を高め、ユーザーにweb3のメリットを実感しても
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ことが重要です。
そのため、NFTの多角的な活用の推進も不可欠です。
具体的には、「はぴウェル応援団」で獲得したNFTを、他の提携企業やプラットフォームでも活用できるようにします。

  • 特典: NFT保有者限定の特典やサービスを提供

  • 割引: 提携サービスでの割引や優待を提供

  • 限定コンテンツ: NFT保有者のみアクセス可能な限定コンテンツを提供

  • 経歴証明: 特定の活動への参加やスキルを証明するNFTを発行し、就職活動やキャリアアップに活用


これらの課題を克服することで、「はぴウェル応援団」はより多くのユーザーにとって価値のあるプロジェクトとなり、企業間の連携による新たな可能性を切り開くことができるはずです。

5. まとめ

NTTデジタル主導の「はぴウェル応援団」は、日本企業がブロックチェーン技術を活用して共創モデルを構築する事例として、大きな意義を持ちます。多くの大手企業が参加し、健康やウェルビーイングをテーマにNFTを活用する試みは、社会的にも注目度が高いと言えるでしょう。

しかし、web3のマスアダプションという観点で見ると、ユーザー自身がウォレットを管理し、資産をポータブルに活用するといったweb3の本質部分を体験できる仕組みはまだ十分ではありません。Googleアカウントと連携した一時的なウォレット生成にとどまり、「自分の資産を所有する感覚」や「他サービスとの連携による資産活用」は未成熟です。

今後は、Scramberry Walletのようなweb3ウォレットの本格運用や、ユーザーが面倒なく利用できる設計が鍵です。さらに、企業連携だけでなく、ユーザーコミュニティ形成など、web3の強みを活かした取り組みを広げることで、真のマスアダプションに近づいていくと確信しています。

「はぴウェル応援団」は大きな一歩ではありますが、真のweb3体験を拡充していくためには、さらなるブラッシュアップが必要――これが本ブログの率直な考察です。日本の大手企業が今後どのようにweb3プロジェクトを推進させていくのか、引き続き注目していきたいと思います。


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