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山を、ワインを、未来を育てる。DAOが変える日本の農業
「山の中に、未来の産地が眠っている──」
群馬県の中山間地域で、革新的な実験が始まろうとしています。
それは、古くからある日本の農山村の課題を、最新のテクノロジーと人々の想いで解決しようという試み。化学肥料や農薬に頼らない自然派ワインづくりを通じて、荒廃しつつある山林に新しい命を吹き込み、都市と農村をつなぎ直す。この挑戦的なプロジェクトを支えているのが、「DAO(分散型自律組織)」という、これまでになかった組織の形です。
今回は、群馬県庁が新たにスタートした「ぐんま山育DAO」をもとに「一次産業×地域振興×DAO」の本質的な意義について、詳しく解説していきます。
1. 「一次産業×地域振興×DAO」とは?
DAO(分散型自律組織)とは?
DAO(Decentralized Autonomous Organization)とは、ブロックチェーン技術などを用いて、特定のリーダーに権限を集中させず、メンバー全員が意思決定に関わることを目指した組織形態です。株主総会など一部の場でのみ意見を言うのではなく、オンラインでのコミュニティ上で常に平等に投票権や提案権を行使できる点が特徴です。
DAOの概念を一次産業に取り入れる
DAOは一般的に、ブロックチェーンなどの技術を用いてメンバー全員が意思決定に関わる仕組みを持ち、透明性や民主性を高めることが特徴です。ここに一次産業の「生産現場」というリアルな土台を掛け合わせると、オンラインコミュニティの力で農業や漁業などの初期投資を支え、地域と都市の人々が共に利益を得るという新しい地域振興の姿が生まれます。
2. ぐんま山育DAOとは? 〜自然派ワインづくりへの挑戦〜
群馬県庁が主導するDAOプロジェクト
「ぐんま山育DAO」は群馬県庁が主導して立ち上げた地方創生プロジェクトです。自治体(群馬県)、Web3分野に強い民間企業(ガイアックス)、地域団体や地元の醸造家が連携し、DAOによる新しい地域活性モデルを生み出そうとしています。
第1弾プロジェクト:自然派ワイン醸造
ぐんま山育DAOが掲げる“山育(やまいく)”とは、「山を育み、地域と山のある暮らしを再興する」というコンセプト。
具体的には、群馬県の山間部にブドウ畑やワイナリーを開き、自然派ワインを醸造するプロジェクトがスタートしています。ここでいう「自然派ワイン」とは、化学肥料や農薬を極力使わず、ブドウ本来の力に任せて醸造するワインのことです。
参加者(オーナー)が主体となる仕組み
DAOの特徴は、参加者全員が意思決定に関与できること。ぐんま山育DAOでは、株式会社をベースにしながらも、ガバナンス(意思決定)をオンライン上でフラットに行う体制を目指しています。従来の「農業生産法人が事業運営して、投資家はお金を出すだけ」という構図ではなく、DAOメンバーがそれぞれ“山の一部”をオーナーとして見守り、重要事項は投票によって決定されるのです。
3. 株式会社型DAOとNFTオーナー権の仕組み
株式会社型DAOとは?
通常のDAOはトークン(暗号資産)を発行し、トークン保持者に投票権が与えられたり、配当が行われたりするケースがあります。しかし、日本国内の法律を踏まえると、トークン販売だけでは法規制上の課題が生じやすいのも事実。そこで、「ぐんま山育DAO」は日本企業としての株式会社を設立し、株式を用いた分散型オーナーシップを実現しながら、オンライン投票プラットフォーム(DAOX)で意思決定を行う設計を取り入れています。
NFTの活用:ワイン区画の“オーナー権”
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出資者を募る際には、NFTを販売して投資を募る形も検討されています。NFT(Non-Fungible Token)とは、ブロックチェーン上で唯一無二のデジタル証明を行う技術。ぐんま山育DAOの事例では、このNFTを購入すると、ワイン用ブドウ畑の特定区画を指定でき、その区画で収穫されたブドウから造るワインの収益の一部を受け取れる“オーナー権”が付与される仕組みです。
オーナー権のポイント:
区画ごとにNFTが発行されるため、“自分だけのブドウ畑”を持っている感覚が得られる
現実の不動産登記やブドウの苗の所有権が移転するわけではない
収穫したブドウを醸造したワインが売れた際に、売上や利益の一部がNFT保有者に還元される
つまり、所有そのものをブロックチェーン上で管理するのは法的に難しい部分があるため、「区画の利用権や利益配分の権利」にNFTを紐づけているわけです。これにより、消費者や投資家が直感的に“自分のワイン”を育てる体験を得られるだけでなく、収益配分が透明化されるというメリットがあります。
4. ぐんま山育DAOが目指す「関係人口づくり」とは
関係人口とは?
移住(定住)するわけではないが、特定の地域と継続的につながる人々を「関係人口」と呼びます。移住ハードルが高い現代において、まずは都市住民が資金や知見を持ち寄って地域と結びつき、結果的に「ずっと応援し続ける関係」が生まれれば、それは大きな地域資源になります。
DAOで生まれる愛着と仲間意識
NFTを購入してオーナーになった人は、投資目的だけでなく、ブドウ畑の成長を見守ったり、収穫体験イベントに参加したりできます。これにより、遠方に住んでいても自分ごとのように群馬県の山を感じながらワインづくりに携わることが可能です。ワイン醸造には数年単位の時間がかかるため、オーナーは継続的に地域と関わり、「自分たちのワイナリーを育てている」という仲間意識を育んでいきます。
やがて、何度も現地を訪れるうちに地元の人々ともつながりが深まり、将来的に「二拠点居住」「ワーケーション」「本格移住」などに発展するかもしれません。まずは関係人口として入口を広げる──この点がDAOを活用する大きな狙いです。
5. DAO×一次産業のメリット・デメリット
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メリット
小口投資による資金調達
農業やワイン醸造は設備投資が必要ですが、DAOを通じて多くの人から小口資金を集めることでリスクを分散し、スタートアップのハードルを下げられます。ファンベースづくり・関係人口の拡大
DAOメンバーは単なる「お客さん」ではなく、ワインを一緒に育てる“仲間”。この一体感が、プロジェクトの長期的な支え手を育み、地域に愛着を持つ人口を増やします。透明性の高い運営・意思決定
DAOの最大の特徴であるオンライン投票や議論の履歴管理により、会計や運営体制がオープンになりやすく、外部からの信頼を得やすい点も見逃せません。
デメリット・課題
法規制面の複雑さ
株式会社型DAOやNFTの販売など、日本の法律との整合性を図る必要があるため、専門家のサポートや行政の理解が欠かせません。運営の難易度が高い
DAOではメンバー全員が意思決定に関わりますが、誰もがスムーズに参加できるわけではありません。投票の方法や議論の進め方をどう設計するかが課題になります。収穫・醸造までに時間がかかる
ワインづくりは年単位のプロセスで成果が見えるビジネスです。投資回収のスパンが長く、参加者が途中で興味を失わないよう工夫が必要となります。
6. まとめ
今回ご紹介した「ぐんま山育DAO」は、一次産業と地域振興、DAOという新しいテクノロジーを組み合わせることで、“ワインづくりの主体”を全国の参加者に広げるモデルを構築しています。
NFTによってブドウ畑区画ごとのオーナー権を販売し、収益だけでなく地域への愛着も一緒に育んでいく──まさに「関係人口づくり」の先進事例と言えます。
DAOの登場は、従来の一方向的なクラウドファンディングを超えて、「お金を出す側も一緒になって事業を育てる」時代の幕開けを示唆しています。そして、こうしたモデルが地方の山村や農地再生、さらには林業や漁業の分野にまで波及していけば、日本の一次産業と地域づくりは大きく変わっていきます。このブログが、一次産業×地域振興にDAOを活用する面白さを少しでもお伝えできていれば幸いです。
今回も最後までお読みいただきありがとうございます。
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