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NFTが売れない時代に挑む「メルカリNFT」~その意義と課題とは~

近年、「NFT」や「Web3」という言葉がSNSやニュースで取り上げられることが増えました。ブロックチェーン技術を活用した新たな経済圏としてのWeb3は、個人がデジタル資産を自分で所有し、自由に取引できる点が魅力とされています。
そんな中、フリマアプリ大手のメルカリが2025年1月28日から「メルカリNFT」を開始しました。

日本円でNFTを購入できたり、メルカリの既存アカウントですぐに使えるなど、初心者にとってのハードルを下げる仕組みを整えている点は大きな注目を集めています。
しかし一方で、「実はNFTを自分のウォレットで保有していないのではないか?」Web3の本質がどこかに置き去りにされているのではないか?」という声も出始めています。本記事では、メルカリNFTの仕組みを紐解きながら、その問題点を初心者でもわかりやすい形で解説していきます。


メルカリNFTの基本的な仕組み

1. メルカリのアカウントでそのまま購入

メルカリNFTでは、これまでメルカリを利用していたユーザーであれば追加のアカウント登録をせずにNFTを購入できます。決済手段も以下のように、普段のメルカリと同じで便利です。

  • メルカリポイント

  • メルペイ残高

  • メルペイのスマート払い

  • メルカード

ここまで聞くと「NFT購入のハードルが一気に下がった!」と思うかもしれません。通常NFTを購入するには暗号資産(仮想通貨)を用意し、専用ウォレット(MetaMaskなど)を作成し、ガス代を支払いながら取引を行う必要があるため、かなり専門的な知識が要求されるのが一般的だからです。

2. 購入後のNFT保管は「メルカリNFTウォレット」

しかし、メルカリNFTで購入されたNFTは、実際にはユーザー個人のウォレットに入るわけではありません。ブロックチェーン上の記録を見ると、購入されたNFTは「メルカリNFTウォレット」と呼ばれるメルカリ側のアドレスに集約されているようです。
ユーザー視点ではNFTを買ったように見えても、ブロックチェーンのトランザクション上はすべてメルカリNFTウォレットが保有する形になるという仕組みになっているのです。
※今後、アップデートによりNFT転送機能が追加される可能性はあります。

なぜWeb3の本質からズレていると言われるのか?

1. 「真の所有者」がメルカリNFTウォレットである

本来のWeb3やNFTの魅力は、「ブロックチェーン上で自分自身のウォレットに資産を保有する」 という点にあります。ところがメルカリNFTの場合、購入してもオンチェーンでは「メルカリNFTウォレット」が所有者として記録されます。
ユーザーはあくまで、メルカリという中央集権的な存在が管理するデータベース上で、所有権が付け替えられているだけです。

この仕組みにより、ユーザー自身はブロックチェーン上の真正な所有権を持たないため、OpenSeaやMagic Edenなどの他のマーケットプレイスへ自由に移動させることがでません。これはWeb3の理念である「自己管理・自律的なデジタル資産の運用」とは真逆の状態といえます。

2. スナップショットや外部ツールとの連携が困難

NFTプロジェクトによっては、特定のNFT保有者に限定特典を付与したり、トークンのエアドロップしたりするなどの施策が行われます。その際、ブロックチェーン上で「どのウォレットがNFTを持っているか」を確認するためにスナップショットを取ることが多いです。しかし、メルカリNFTウォレットが一括して保有している状態では、プロジェクト側からは実際の購入者が誰なのか把握できません。

「ブロックチェーン上ではメルカリNFTウォレットが持っている」→「本当のユーザーのウォレットは不明」
という構造のため、オフチェーンのデータベース(メルカリ内)を頼るしかなく、一般的なWeb3ツールが機能しないという問題が生じます。

3. NFT保有証明ができない

Web3初心者の方が見落としがちなのが、ブロックチェーン上での“保有証明”ができない点です。例えば「メルカリNFTで○○というNFTを買いました!」とSNSでアピールしても、ブロックチェーンエクスプローラー(Etherscanなど)であなたのウォレットが保有していることは確認できません。※表示されるのは常にメルカリNFTウォレットのみです。
「せっかく買ったのに自分のものとして証明できない」状況は、NFTやWeb3特有の“自己資産をオンチェーンで示せる”という強みを失わせてしまいます。

メルカリNFTのビジネスモデルとリスク

1. メルカリNFTウォレットがノーリスクで利益を得る構造

たとえば、ユーザーがNFTを購入して代金を支払ったとしても、実際にはNFTはメルカリNFTウォレットが所有している状態です。そのため、メルカリからすれば、自分の資金を使わずにユーザーの支払いでNFTを獲得しているのが現状です。
さらに、その後ユーザー同士でメルカリNFT内マーケットプレイス上で売買が行われれば、そのたびに手数料が発生するため、メルカリNFTは安定した手数料収益を得られる仕組みになっています。「ノーリスクでNFTを保有し、さらなる売買手数料を得る構造」と一部からは酷評されているのは、こうした背景があるからです。

2. 税務管理と法的リスク

NFT保有者がメルカリNFTウォレットである以上、ブロックチェーン上の所有者はメルカリになっているわけです。もし税務当局が「NFTの所有者=メルカリNFTウォレット」と判断すると、誰がどのタイミングで利益を得たのか分かりにくくなる可能性があります。
ユーザー自身は「メルカリNFT上で売買した」という事実があるだけで、税処理がどうなるのか明確ではありません。今後、NFTに関する税制や法規制が進むにつれ、この仕組みが問題になる可能性も考えられます。

メルカリNFTにおける価格差の例

メルカリNFTの既存のメルカリユーザーからすると使いやすい一方、Openseaと比較すると価格が高めに設定されているという報告もあります。

  • MEGAMI

    • メルカリNFT: 9,300円

    • OpenSea: 7,200円(約$48、ガス代別)

  • Murakami Flower

    • メルカリNFT: 76,000円

    • OpenSea: 60,000円(約$400、ガス代別)

上記のように、メルカリNFTでは購入時に手数料や円換算レートによる上乗せがあると考えられます。もちろん、「ガス代を意識しなくていい」「クレジットカード感覚で買える」というメリットはありますが、これを高いと見るか、手軽さと安全面の代償として納得するかはユーザー次第です。

メルカリNFTへの総評

1. 初心者にとってのハードルを下げた点は評価

  • 日本円(メルペイ・ポイントなど)でそのまま買える

  • 新たなウォレット作成不要

  • UIが馴染みやすい

Web3の敷居が高いと感じていた層には、大手プラットフォームの安心感も相まって、一歩踏み出すきっかけにはなるでしょう。「とりあえずNFTというものを体験したい」「暗号資産を用意するのが面倒」という方には向いています。
事実、NFTが売れない時代にもかかわらず、リリースして間もない状況で数百点の販売は実現しています。

2. Web3の本質「自己管理」からは遠い

しかし、本来のNFTやWeb3の魅力である「自分自身が所有し、自由に移転・売買できる」という点は大きく損なわれています。メルカリの内部データベースを信用する形となり、ブロックチェーン上にはメルカリNFTウォレットが所有者として残るという状態です。

3. プロジェクト連携や税務・流動性の面で課題

  • スナップショット時に所有者が不明

  • プロジェクトの特典やツールがうまく機能しない

  • 外部マーケットプレイスへの流動性が失われる

  • 税務や法的整理の課題

こうした問題があるため、今後はメルカリNFTが外部ウォレットとの連携機能をどう拡充するか、あるいはWeb3的な仕組みに寄せていくのかが注目されるところです。

まとめ

メルカリNFTは、確かに日本の一般ユーザーにとって「NFTとは何か」を気軽に体験できる 大きな一歩です。一方、ブロックチェーン上の真の所有権がユーザーに渡らず、メルカリ側のウォレットで一括管理している構造は、Web3が目指す“自己管理・分散型”の世界観とは隔たりがあります。
NFTを純粋に投機目的やコレクション感覚で楽しむだけなら、メルカリNFTは便利です。しかし、Web3の本質に魅力を感じている方や、NFTプロジェクトに深く関わりたい方にとっては、「本当の意味で自分のものにできない」 という大きなジレンマを感じるかもしれません。
今回は、メルカリNFTをWeb3の本質の観点から考察する形になりましたが、今後のアップデートや機能追加次第では、よりWeb3らしい自由度を提供するようになる可能性もあります。とはいえ、現時点では「NFTを買っているようでいて、実はメルカリNFTウォレットに預けているだけ」 という仕組みを理解しておくことが重要です。
これからのWeb3市場におけるメルカリの立ち位置に注目です。
今回も最後までお読みいただきありがとうございます。

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