見出し画像

アイアンクロー 2024/04/01 試写会


突然だが、
私はザック・エフロンが 好きだ。

学生時代ハイスクールミュージカルを観ていた訳でもない。何がきっかけかは思い出せないのだが、社会人になって少し経つ頃、突然訪れたマイブーム。ザック・エフロン。
取り敢えず片っ端から出演作品を観ていった。

甘いマスクの歌って踊れる美少年が
次第に濃厚なマッチョに変身し
出演作品の幅も広く、
安定感が増していく様にニヤニヤが止まらなかった。

それから2年に1度くらいのペースで
ザック・エフロンが強烈に観たくなる発作が起きる様になった。

ザック・エフロンが観たい!!
ザック・エフロンが観たい!!
ザック・エフロンが観たい!!


まさにそんな発作が起きかけていた頃
本作の予告編を目にする。
(↓これこれこれこれ!!!)

むっちむちのムッキムキに仕上がったザックが
プロレスリングの上でロープに繰り返し身体を打ち付ける姿が続く数秒。


なんこれ!もう!観るしかないじゃん!!

そう、プロレスにも別段詳しくない私は、完全に不純な動機で本作の試写会に応募した。
そして120パーセントの不純な心で試写会当日を迎えたのである。



本作は
1980年初頭、プロレス界で旋風を巻き起こしたフォン・エリック家の父フリッツと、その息子の次男ケビン(ザック・エフロン)、三男デビッド、四男ケリー、五男マイクら兄弟がプロレス界の頂点”を目指す、栄光と悲劇の物語である。

呪われた一家と呼ばれるようになった理由と彼らの運命。実話を元にしているのでネタバレも何もなく、簡単なあらすじと実際に起きたフォン・エリック家の悲劇がどんなものかは知っている状態で鑑賞した。

それでも想像以上に胸を打つ良い映画だった。

以下、なるべく本編のネタバレなしに
刺さったポイントを考えてみた。

家族という楔(くさび)
フリッツ兄弟は幼い頃から自らの心身を鍛え、技を磨き、遊びや恋愛する時間も惜しんでトレーニングをしている。父フリッツの果たせなかった夢を果たそうと、兄弟たちは互いに寄り添いながら、そのプレッシャーに耐えている。
結果を重視し高みを目指す父は、兄弟同士を比較し、少しの成功や注目では満足しない。
愛する家族の期待に応えたい気持ちと、期待に応えられない現実の狭間で、彼らは酷く苦しむのだ。

現代では"毒親"という言葉も割と浸透してきているが、まさにフリッツ家も"毒親"という言葉が当てはまってしまう。
しかし、私は単純に"毒親が齎した悲劇"と言う言葉では片付けられない家族の難しさを感じ、そこがとても好きだった。
本編を観れば、この家族は互いに愛し合っていることがよくわかる。監督がプロレスがお好きだそうで、フリッツ家やその周囲の方々にとてもリスペクトを感じるつくりをしていることもあり、実際のフリッツ家はどうだかはわからないが、父フリッツを完全な悪とし、ドラマチックにし過ぎていないのがいい。

きっと完璧な家族なんてない。
多少なりとも、この家族の誰かに自分を寄せて考えてしまう人は多いのではないだろうか。

・長子あるあるが胸を打つ
ザック演じる次男のケビンに終始共感した自分がいた。
フリッツ家の長男は幼い頃事故で亡くなっており、この家族の長子的な役割を担ってきたのは次男のケビンである。
父の期待を背負い、真面目にトレーニングに励む。弟たちの面倒をみたり、精神的に気にかけたりもしながら、自らは立派な手本とならねばならない。下の兄弟達の自由さや破天荒さ、甘えなども本当に愛おしく思いながら、どこかでそうなれない羨ましさもあるのが長子なのだ。

はい、何を隠そう私も長子!!

めちゃくちゃ分かるよケビン!

そんな"頼れるお兄ちゃん"であろうとするケビンの葛藤や愛。セリフが少ないながらも感じるザック・エフロンの繊細な好演。

これを読んでいるみなさん、
兄弟姉妹がいてもいなくても
ぜひケビンに注目してみてください。
そして長子にちょっとだけ優しくしてください。笑

身体造りとプロレスシーンも必見
ポスターなどでも一目瞭然。
役者たちの肉体の美しさよ!!
ザックだけでなく、ジェレミー・アレン・ホワイトやハリス・ディキンソンもかなり身体造りをしたのがわかる。
ハリス・ディキンソンなんて一個前の出演作『逆転のトライアングル』では、島に遭難する売り出し中のモデル役でスラっとしてたのに…!!
また、身体造りだけでなく、プロレスシーンもロングショットで撮られており、ザックなどはスタントではなく自ら演じたシーンが多いそうだ。

プロレス中心でプロレスを知らない人は楽しめないのでは?という心配も不要だ。
これは家族ドラマがとても重厚である。
だからと言ってプロレスがおざなりにはなっていない。
恥ずかしながら、本作を観るまで
私はプロレスについて全然興味がなかった。

(台本かあるだろう勝負って何?面白いの?つよいの?)とすら思ってしまっていた。
しかし、本作を観てプロレスの難しさや魅力がかなり伝わり、自分の無知故の舐めた考えを恥じた。それ程バランスのとれたプロレス愛も感じる作品だった。

男らしさの呪縛
"男たるもの涙など見せない"
そう教えられてきた男性は未だにこの日本でも沢山いるのではないだろうか?
本作はまさに身体的強さを武器にプロレス界の王者を目指す、謂わば"男らしさの極み"になろうとする者の物語だ。

男らしさや、ある種の"正しい"とされてきた信念に忠実に生きる。一生懸命な彼らが、次第にその信じるモノに蝕まれ、押し潰され、自らを失っていく姿は観ていてとても苦しくなり、想像以上に泣いてしまった。
しかし、この作品はその"有害な男らしさ"の問題を描くだけでなく、これから先の未来へと希望を感じるような、優しい問いかけを残す映画だと思う。
詳しくはネタバレになってしまうが、ラスト20分ほどは特に印象深く、何度も反芻してしまうシーンがあった。

・変わっていく正しさや未来を思う
これまで書いてきたように、本作は家父長制や男らしさについて考える契機になる、肉厚な物語が展開される。

観終わった後、色々な感情が押し寄せ、
何とも言えない余韻があった。
愛があるだけでは幸せになれないこともあるし、自分を愛する為には愛から離れることが大切だったりもする。

私は親の望むような子どもとしての人生を送れているだろうか。
私は私が望むような人生を選択してこれただろうか。
もし私が親になった時、何をしてあげられるだろう。
そんなことをアレコレ考えたくなる映画だった。



わたしのエンドロール
鑑賞後のアフタートークで
終盤のあるシーンの話題が出た。
切ないのにキラキラとしていて、
私は物語前半のこのリングでのハグのシーンを思い出し、話を聞いているだけで込み上げる感情にまた泣きそうになった。

沢山泣いて頭がぼーっとし
心地よい疲労感のまま、試写会は終了。

気がつけばひどく腹が減っていたので
友達と街に出てラーメン屋に入った。

映画の感想をお互い話しながらラーメンを待っていた時、同じくラストのシーンについて話していた友達の瞳に涙が浮かび、溢れる過程をみた。

その姿を見てまた泣きそうになった。

良い映画を観て、
良い1日になったな、と心から思えた。

ラーメンも、いつにも増して美味しく感じたんだよ



自分が人生で抱えてきたもの、
家族との関係、これからのこと。
なんとなく胸に過ぎり
温かい気持ちになる映画だった。

どうやら公開する劇場が意外と少ないようなので、是非早めに足を運んでみてほしい。

4/5 公開です。

この記事が参加している募集

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?