田舎のデイ起業セラピストが実践した「はじめての営業」
本日も臨床BATONにお越し頂きありがとうございます。
195日目を担当させて頂くのは、つい先日の4月10日に私の施設の1回目の内覧会が無事終わり、それなりに盛況に終わったことで少しだけホッとしているけど、まだまだ5月の開設に向けて仕事がわんさか残っており焦る毎日の田舎のデイ起業セラピストことPT貴田農士です。
さて、今回は「はじめてのおつかい」ならぬ「はじめての営業」というテーマで、私が先月から今月にかけて自分のデイサービスの営業のために、那須塩原市の地域包括支援センターや居宅介護支援事業所に前職場の昼休み休憩を使ってドブ板営業を行った経験と感想を投稿させていただこうと思っております。
正直、この営業という経験を経て、リハビリの専門家としてでは無く、社会人として大切な事を多く学びました。そして、その学びは間違いなくリハビリでの対象者や他の医療職との関わりにも良い影響があると実感しておりますので、営業に興味が無い方、無かった方もお時間を少し頂きご一読頂けると幸いです。
今回は私の時間管理不足により、イラストが無いこと、そして内容の精度が低いかもしれません。お詫びを申し上げると共にご理解を頂ければ幸いです。
そのため、有料となる部分は最後にしていますので、もし内容に満足いった方、お金を出す価値があったと思っていただける方がいましたら購入していただければと思います。
では、さっそく参りましょう。
・そもそも医療職は営業をしない職種
そもそもなのですが、皆さんは営業をしたことはありますか?
おそらく大学を卒業して病院や施設、訪問事業所などにそのまま就職した方々はしたことが無いと思います。私も大学卒業後は、すぐに地元の回復期病院で13年間、老健で1年間の勤務歴ですので営業をしたことは一度もありませんでした。
たしかに、病院や老健などの施設勤務で対象者により良いサービスを提供することによって、その対象者の家族や知り合いに良い口コミをして頂き、それが集客につながればいいなとは数年前から思って実践はしてはいましたが、直接それが結果として客観的に集客率や入院、入所した理由として示されること、実感したことはほとんどありませんでした。
つまり、医療職、特に現場で働くナースや介護士、リハビリ専門職は「営業」とは遠い存在なわけです。
これは善し悪しではないですが、
ビジネス社会一般的には、集客の問題がかなりの比率でつきまとっているみたいなので、医療職はそういう意味では特殊です。
(特殊であるということを我々医療従事者はもっと自覚した方がいい。仕事の仕方や振る舞い、接遇が間違いなく変わるから)
余談ですが、私の兄は保険会社経営、営業をしており、
その兄に言われたのが
「医療職はあいかわらず殿様商売」
でした。
まぁ、保険会社は営業が必須の職業ですから、そう思われてもしかたがないと思います。
話はもどりますが、
デイサービスを開設するに当たって、ある病院、施設の一セラピスト以外なにものでもない私では、地域の対象者となる方々の集客は営業をしないとほとんど期待できないと思いました。
本当に腕のあるセラピストなら病院にいてもその地域に名を轟かせられるのかもしれませんが、私みたいな凡人では難しかったです。
そして病院、特に回復期病院で勤務していると自分の職場以外の地域の医療職やケアマネージャーと深いつながり、コネクションを持つにはかなり意識して動かないと難しいということを実感しました。
正直回復期時代は仲の良いケアマネージャーなんて一人も出来ませんでしたから。
そのぐらい接点や深いつながりになるには回復期病院ではハードルが高い印象です。
そして、生活期は対象者(利用者)またはその家族にサービス(施設や事業所)を選ぶ権利と辞める権利が大いにあります。
なので、ドブ板営業で「地域のなかで」「その人の生活の中で」優先順位が高く必要なものとして選ばれるデイサービス、施設にならなければいけません。
そうなると競合は他のデイサービスや施設という医療機関以外にも出てくるのですが、何にせよ、やはり「営業」は生活期において必須な課題です。
・営業の基本とは
では、営業の基本とは何なのでしょうか?
本やネットで調べればいろいろ書いてあると思うので、ここでは私の経験と私見を述べさせて頂きます。
まず、一つ目です。
それは、保険屋の兄に「営業の極意を一言で教えて?」と聞いて返ってきた言葉です。
お疲れ!
極意なんかねーよ!笑
謙虚で真面目!
それだけだよ!
その先にユーモアや知識、テクニックだ!
どんなにすげーやつでも、どんなに頭良いやつでも、、
最終一言、君は嫌い!
君には任せない。
そうなったら負けだ!
とのことでした。
どうですか?皆さん。
これリハビリにも通じますよね。
謙虚さと真面目さ!
これを「相手」に思ってもらえるよう、伝わるように
・声のトーンや話し方
・姿勢
・質問に対する受け答え
・相手の仕事の理解(これ超重要)
・相手が必要な情報(戦略的には客観的数字が良いのか、感情に訴えかけるものがいいのか、サービスの内容なのか、提供している人物、人柄、略歴なのかなど)
・アポイントの必要性の有無
・自分が与えられているであろうプレゼン時間
などなどたくさんのこと、考えていかなければいけないと思っています。
上記のことに関して、細かい考え、内容は割愛させて頂きますが、
「相手の仕事の理解」と「自分が与えられているであろうプレゼン時間」というものはかなり調べて準備したり、意識したりはしてきました。
みなさんは、ケアマネージャーの仕事もそうですが、共に働く医療職、ナースや介護士、薬剤師や医療ソーシャルワーカー、それこそ医療事務の方などの仕事について、そしてその方々、しかもその個人が仕事上大切にしていることや考え方をしっかり情報収集し理解した中で話をすることが出来ていますか?
(私は回復期時代には出来ませんでしたが・・・・最近やっと出来るようになってきた気がします)
ということで、営業で大切な事の一つ目は「相手の仕事を理解する」ということです。
次に、もう一つ営業に大切な事は、「相手に勝たせる」ということです。
いわゆるWin-Winの関係というやつですが、大抵の医療職は相手のwin、取り分を考えず、自分の思いややりたいことを全うしたがる印象です。
そしてもっと言うとWin-Winではなく、相手のwinを優先できるかです。
これは相手に取り分、有益性がないと今後の信頼、信用に繋がらないからです。
そのため、自分のwinは後回しです。
でもあとで回収できるという仕組み、立て付けを考える、検討し実践しておくことも重要だと思います。
まずは相手を勝たせて、徐々に自分も勝てるという算段をつけておきたいですね。
(これもまだまだ私はしきれないので、相手に勝たせようとしすぎて結果自分たちの首を絞めないようにと心がけています)
・デイサービス開設に当たって誰に営業するのか?
私が考えてきた営業の基本はそんな感じです。
それを踏まえて、デイサービス開設に当たって誰に営業するかということについてお伝えします。
基本的には介護支援相談員(ケアマネージャー)だと思います。
(これに関しては実際行っていく中でいろいろな発見もありましたが、その詳細はFacebookプライベートグループの地域リハを面白くするコミュニティに近いうちに投稿しようと思っていますので、興味がある方はそちらまで)
なので、ケアマネージャーの仕事に関しての理解が重要になりました。
『介護保険法』(第79条第2項第2号)によると、
介護支援専門員(ケアマネージャー)とは、「要介護者等からの相談に応じ、及び要介護者等がその心身の状況等に応じ適切な居宅サービス又は施設サービスを利用できるよう市町村、居宅サービス事業を行う者、介護保険施設等との連絡調整等を行う者であって、要介護者等が自立した日常生活を営むのに必要な援助に関する専門的知識及び技術を有する者として政令で定める者」
つまり、介護認定を受け、介護保険サービスを利用する方などからの相談に応じ、利用者の希望や心身の状態を考慮して、在宅や施設での適切なサービスが受けられるように、ケアプラン(介護サービス計画)を立てたり、関係機関との連絡調整をおこなったりするのが、ケアマネージャーです。
そして、私の事業において重要なことは、ケアマネージャーがデイサービスにおいては何の情報が欲しいかということでした。
ここに関しては、私の勤務していた老健に地域包括支援センターと居宅介護支援事業所が併設されていたので、そこのケアマネ-ジャーに何度も相談させて頂きました。
これはそこの事業所や私が聞いたケアマネージャーさんのバイアスはありますが、
例えば、リハビリデイサービスと普通のデイサービスって何が違うのか?はたまたデイケアとどう差別化しているのか?であったり、個別リハビリの時間やそれ以外の時間に何をしているのか?介護報酬以外の実費費用は?入浴は?具体的にどのような方が対象なのか?などの事業自体の情報です。
また、それ以外にどのような方が開設したのか?(代表はどんな人物なのか?)などといった人の情報です。
(理学療法士が開設するデイサービスという情報はケアマネージャーにとってはかなりのパワーワードのようでした)
事業の内容で選ぶ方もいれば、その開設した人、スタッフなどの人で選ぶ方もいるので、両方の情報を適度にお伝えすることが求められると思いました。
そして、日程やアポイント(予約)に関しても考えました。
基本レセプトが10日締めなのでそこらへんは忙しいこと、また、ケアマネージャーにとってはなにものでもない私(基本的には相手にとって価値が未知数)にアポイントを取られることは、相手のスケジュールや時間を奪うことになりかねないので、辞めました。
(価値があるのか無いのか分からない存在に時間を縛られたくないでしょ・・・)
なので、いわゆる、飛び込み営業を行いました。
まぁ私の前職場の昼休みを使わざるを得なかったので、12時前後を目標とし、可能な範囲で事業所周りをしていました。
お昼休憩やお昼ご飯中に訪問したのは正直後ろめたかったので、頭は下げまくりました。
・実際行ってみて・・・
そんなこんなで、いろいろ事前準備をして実際営業を行ってみたところ・・・
そりゃ興味を持って頂けない事業所もありました。
正直この事業所は大丈夫かなと思う場所もありました。
しかし、興味を持って頂いた方々や積極的に質問をして頂ける方々もいました。
その中で地域の問題、課題に関しても気づき、理解が深まりました。
そのひとつは、要支援の方々の通う場所の悩みでした。
ここに関しては正直、経営的目線では非常にシビアにならざるを得ないのですが、初めから断ると印象が悪いので、相談させて頂き、検討させて頂くという形でお伝えしています。
(実際、要支援は人数限定で利用可能にはしています)
ここで難しかったのが、ケアマネージャー、特に地域包括支援センターが抱えている要支援の行き先などの地域課題、社会課題に対してどう自分の事業所が手助け出来るか、共にその課題に向き合う存在として認めてもらえるとかということも踏まえた振る舞い、受け答え出来るのかということが求められました。
ただ、事業としては、利用者の対象を制限するということも自分たちのコンセプトを守る、従業員を守るなどの大義があるので必要になってきます。
(誰の笑顔がみたいか。全ての人へは届けられない)
そこのバランス感覚は非常に難しいと今も現在進行形で感じています。
とどのつまり印象商売ですので、自分たちの事業のサービス対象者となりづらい方に対しても、話をしていただいたなら、丁寧に相談させていただき、どう誠意を持って答えられるかということだと思っています。
そして、当たり前ですが、営業は何度も行くようにすべきだと思います。しかし、まだ私はケアマネージャーから利用者を紹介して頂いていない事やそもそもまだ開設していないことなどにより、何度も行く理由が弱かったので、行く理由付け、目的を分けました。
一回目は認知の獲得(そのため専用のケアマネ用認知フライヤーも作成し配布)
二回目は内覧会のお知らせ(こちらもそれ専用でフライヤーを作成し配布)
ここまでは現在までに終わっており、
次は、内覧会に来ていただいた事業所へのお礼とその他の事業所含め正式なケアマネージャー用のパンフレットや利用者に配布していただくパンフレットを届けるという理由で営業に伺う予定です。
このようにプロモーションとなる物を持って行く理由を毎回つくり、何度も顔を見せて、顔見知りのような形となれるよう、信頼や安心を得られるように行動してきました。
また、事業所周りではそこのケアマネージャーに会えないこともありました。
しかし、これはチャンスとして捉えていました。
なぜならば、何度も行く理由になるということと何度も来てくれてありがたいと思わせることが出来るからです。
(こういう事象をチャンスと捉えられるマインドって大事ですね)
結論、この短期間でたくさんの名刺交換をしたのは後にも先にも今しか無いと思います。
そして、40歳に近づきつつあるおじさんにとって昼休みに休息を取ることは大切ということです。昼休み返上して仕事するのマジで疲労感すごくて3時頃に電池切れやすい・・・
(なんじゃその結論・・・)
・最後に
ここ最近営業や私の前職場のケアマネージャー主催の事例検討会やケア会議などの参加させていただき、他職種やケアマネージャーの前で発言する機会を多く頂いていました。
その中で私は参加されていたケアマネージャーにこう言われました。
「貴田さんの発言や考え方ってセラピストっぽく無いですね」
これはとても良いイメージとして言っていただいたみたいです。
その方にとってのリハビリ専門職のイメージって
「その病気にはこの治療やリハビリが効果あります」
みたいな自分の得意分野の情報しか話をしない。しかも機能や能力的な自立の話ばかりとのイメージ、今までの経験だったみたいです。
でも地域において重要なことのひとつは、「身体の自立」だけでは無く、その対象者の「心の自立」なのです。
そのため、その対象者の病気や悪いところに目を向けるばかりでは無く、その対象者の「人となり」や「今までの人生、価値観」などを踏まえ、「患者」ではなく「地域に住まう人」としてどうより良く人生を全う出来るかを考えていくことが大切だと思っています。
(その中で、本人の意向とリハビリの必要性が合致したときには最大限のリハビリを提供出来るよう自己研鑽をして知識、技術、経験を磨いておくことは間違いなく必須です。集客も大切ですが、リハビリ、サービスの質が高いということは当たり前に重要ですから)
ということで、必要な場面、必要な相手に必要な情報、技術を提示することが出来る能力がリハビリにおいても、他職種連携においても、まさしく営業においても重要なことなのでは無いかなと経験して感じました。
今回は営業初心者の私の感想文に最後まで付き合っていただき、誠にありがとうございました。
なにか皆様の臨床の中での対象者との関わりや他職種との関わりなどに転用して頂ければ幸いです。
そして、まだまだ伝えきれていない事も多くあるので、興味がある方は、ぜひ地域リハを面白くするコミュニティのFacebookプライベートグループへの参加をご検討下さい。
では、次回は駿太さんが、「半側空間無視の評価」というテーマにて投稿予定となっています。
自己中心座標や物体中心座標など聞いたことがあるかもしれませんが、その辺の理解を深めることが出来ると思います。今回も楽しみですね。
では、臨床BATONどうぞ!
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