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スプリントって?

本日も臨床BATONにお越しいただきありがとうございます。
6月18日(14日目)を担当します西田です。よろしくお願いします。


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~自己紹介~

はじめまして。作業療法士をしています西田といいます。仲間内では普段着が白と黒の服ばかりをきているからか、『にパンダ』などと呼ばれています。急性期、回復期、生活期(訪問)、終末期のリハビリに携わり、現在は急性期と手の外科に関わっています。手の外科の中では腱の移行術後や変形指に対して、装具療法を行うことがあり、スプリントを用いて治療を行う機会があります。今回は、作業療法士として、スプリントと関わる機会があり、世の中にもっとスプリントの良さを伝えられたらと思い、ブログに書くことにしました。

お伝えしたいこと
 スプリントって作るのに時間はかかるけど、作ることができれば患者様が生活しやすくなる装具です。

・スプリントって?
スプリントって聞くと、何となく手に付ける装具のこと?って感じがしますが、実は手だけじゃなく、体幹や足部にも使用できます。ただ、その話をすると今回の手の外科で使用するスプリントの話からそれてしまう為、割愛させていただきます。

・なぜスプリントが必要なのか?
スプリントは装具の中の一つであり、それを使用することによって、患者様の手の変形を矯正や予防したり、術後早期療法として腱滑走を行わせたり、麻痺している筋の代用として利用したり、筋力トレーニングとしても利用でできると思います。使用目的によって、可塑性のある素材を用いたり、柔らかい布のような素材を用いたり、必要に応じて、ゴムやコイルのような物を素材に付着させて、可動性を出したりと様々な形があります。

・どんな種類があるのか?
市販品やオーダーメイドで作るものがあります。
例えば、橈骨遠位端骨折の術後に医師が義肢装具士に依頼し、市販品を購入し、固定部の強化を図るケースがあります。しかし、市販品では形や大きさ、補いたい機能などが足りない場合などにオーダーメイドの物を作成します。
市販のスプリントと違って、オーダーメイドで作成する為、どんな目的でつけるのか?どのような機能を重視するのか?といったことが重要になると思います。まあ、人によっては見た目や色を重視してほしいと話す人もいるようですが。。。

・どのような目的で装着することがあるのか?
装着する目的は様々だと思います。拘縮の矯正や良肢位を保つために装着する場合や動きを補助する物であったりと多種多様です。下にはどのような目的で使用されるかを簡単に表にまとめてみました。

図4

・どのような素材があるのか?
可塑性のあるプラスチック製ものやラバー系素材のものなどがあります。プラスチック製の素材は様々な厚さや穴があいている物があり、目的にそって素材を使い分けます。ほんの一部ですが、下の写真のようなものです。

図5

オーダーメイドで作る為、制作するのにすごく時間がかかります(自分が未熟な為だと思いますが)。準備~採型~修正と単位内で終わることが難しい状態です。そこで、自分の場合は単位内で終わる部分だけを行い、業務の合間をぬって修正を加えています。また、(患者様には申し訳ないのですが、)時間調整を行い、昼食あと1番にリハビリ室で採型→モールディングまでを行い、業務後の時間を使って、修正とベルクロなどの設置を行い、夕食前に再度リハビリ室に来てもらい、装着→修正を行っています。

・スプリントの作り方って?
(ご存じの方は***まで読み飛ばしていただけたらと思います。)
①素材の選定
様々な素材がある為、どのような素材を用いるのか検討します
②道具の準備
素材は熱で変形させるため、温めるための道具とそれを切るためのハサミが必要です。
③採型
必要な部位の手の形を型紙に取ります。そのあと、素材を型紙に沿って切っていきます。
④モールディング
熱を加えて軟化させた素材を手に当て、形をとっていきます
⑤修正
不要な部分をカットし、スプリントを手に固定する為のベルクロなどを取り付けます。

大まかな流れですが、上記のような形になると思います。

***

当院では医師から、「こんな機能を持たせたものを作ってほしい」と依頼が作業療法部門にあります。依頼を受けたスタッフは医師と相談し、形や機能を決定したのち、介入を行います。例えば、腱移行術後の患者様であると、アウトリガースプリントなどを提示し、機能や形を決定した後、患者様の部屋を訪問し、リハビリ開始と同時に装具療法を行うことを伝えます。作成後は状況に応じて、医師と相談し、変えていく状態です。
1例ですが、

2図

この患者様は伸筋腱移行術後の患者様であり、腱縫合部が脆弱である為、手関節を背屈かつ手指も伸展位で保つ必要がありました。しかし、伸展位で固定した状態で放置すると癒着リスクがある為、手関節を背屈状態で腱滑走訓練が実施できるような写真のようなアウトリガースプリントを作成しました。腱縫合部の強度の問題から、1週間毎に医師の指示が変わり(例えば、MP関節に少しかぶるように作成しましたが、翌週には手掌皮線上でカットし、しっかりとMPが出るように修正するというように、作り直していました。

スプリントを作成して、感じたのは型通りに作ることもあるけど、欲しい機能と形を決めることで、工作みたいかもしれませんが、既製品と違い発想次第でどのような形でも作ることが大きなメリットではないかと思います。例えば、上記の症例であると、掌側・背側に分けたため、掌屈を妨げるように支持していた固定力は低下してしまうけれど、上下に分けることで夜間は掌側のみの固定をし、手関節を背屈位で保持することで腱断裂を予防することができるといったメリットがあると思います。
また、上記の症例からは日中、アウトリガースプリントを着用し、夜間はシーネへまき直しという形をとっていましたが、まき直しをするスタッフで固定力が違い、違和感があることや、季節が初夏であったため、シーネが蒸れて熱い、自宅へ帰った時に自己でまき直しができないといった話をされました。
そこで、上の写真にあるようにアウトリガースプリントとしては固定力が低下するかもで知れませんが、上下に分ける形にし、夜間は掌側のみの固定として、ネオプレーンゴムで固定するといった工夫を行いました。当たり前の事をしただけかもしれませんが、患者様からは「夜間眠りやすくなった。着脱が簡易で過ごしやすい。」といった話を聞くことができました。
医師からの指示でスプリントを作成しましたが、必要な機能を持たせるだけでなく、より患者様に寄り添った創意工夫を行うことで、ただ作るだけでなく、作った後も患者様の要望に合わせて使っていただける工夫ができることを学びました。
この症例を通して、そんな寄り添える体験をさせていただきました。

また、スプリントは素材にもよるのですが、熱で軟化する可塑性素材である為、装具としての利用だけでなく、スプーンに巻き付けて使用したり、箸を持ちやすいようにスプリント材で補助したりと、さまざまな使い方ができるのではないかと思います。
(ただし、素材自体が安くはないため、無用に使用できるわけではないと思いますが。。。)

さて、ここまで、スプリントの話を書いてきましたが、注意しなければいけないことがいくつかあると思います。
①対象者がスプリントを理解できない
②対象者の拒否している
③スプリント装着で、二次障害(褥瘡の発生や裂傷)が予測される
①や②はもちろん、装着すべきかどうか以前の問題であると思うのですが、③の二次障害については緩衝材を用いることで皮膚への刺激を軽減したり、ヒートガンで形を少しずつ変えることなどが必要ではないかと思います。

・まとめ
●スプリントは手に付ける装具の一つであり、様々な機能を持っている
●市販品とオーダーメイドの物がある
●参考書などに載っている形通りだけでなく、目的別に機能を付加することで、患者様ひとりひとりの手の機能をより使いやすくすることができる。

・おまけ
新型コロナウィルス(COVID-19)が流行っています。医師、看護師の皆様お疲れ様です。
先日まで外出禁止状態が続いていて、みんなストレスフルな状態。休日も自宅で過ごすことが増え、コロナ離婚といった言葉が流行るほどです。なんだか最近、ギスギスしている気がします。
スタッフルームや訓練室といった場所の換気が大切といわれていますが、スタッフ間の換気も大切ですね(ただ、どうすれば入れ替わるのか知りませんが。。。)
やはり、密にならないようにするのがいいかもしれませんね。

最後に、つたない内容だったかと思いますが、ここまで読んでくださりありがとうございました。

15日目に臨床BATONを繋ぐのは脳外臨床研究会脳基礎セミナースタッフの吉田さんです!『セラピストに気にかけて欲しい車椅子調整と工夫~現場で行っている車椅子調整の工夫とは~』です。訪問リハビリに携わった際、自分にも車いすの調整ができたら…と、感じることが多々ありました。次回の話に大変興味があり、楽しみにしています。

では、吉田先生、臨床BATONをよろしくお願いします。

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